個人の印鑑に実印と認印があるように、法人や団体の印鑑にも種類があります。その代表的なものが「実印」と「角印」です。二つの印鑑は、法人の印鑑という意味では同じ用途に使えます。しかし実際の運用においてそれぞれの印鑑には、使用用途をはじめ異なる役割を持たせている法人や団体がほとんどです。
本記事では、法人の印鑑の種類と違いについて詳しく解説します。
まずは「実印」について基本的な情報を見ていきましょう。
法人の設立時には、あらかじめその印鑑を登記しなくてはならないと「商業登記法」によって、定められています。この時に法務局への登記をおこなう印鑑が「実印」です。
登記の申請書に押印すべき者(会社の場合は代表取締役等,法人の場合は理事等)は,あらかじめその印鑑を登記所に提出しなければならないとされています(商業登記法第20条第1項)
法務局に登録した印鑑は印鑑登録証明を取ることができ、契約書などに押印するとともに印鑑登録証明を添付することで、法的な拘束力を持つことになります。
なお、実印は、代表者印・丸印とも呼ばれることがありますが、いずれも同じものです。
実印は別名「丸印」と呼ばれることもあり、一般的には丸い形をしています。
「代表取締役印」「取締役印」「理事長印」など、代表の方の役職を示す記載が中央にあり、その周りを会社や組織名が囲むように記載されるデザインが一般的です。
商業登記法によって、実印のサイズは以下のように規定されています。
登記所に提出する印鑑の大きさは,辺の長さが1センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが3センチメートルの正方形に収まらないものであってはならないとされており(商業登記規則第9条第3項),また,印鑑は照合に適するものでなければならない(同規則第9条第4項)とされています。
実印はあらゆる事に使うことが可能です。しかし、個人でも実印を使う時は重要なことに限られるように、法人においても、実印を押印するのは代表が決定するような重要な手続きや契約をおこなう時のみというのが一般的です。
実印を押印した際には、押印した印鑑が本物であることを示すために、印鑑証明書を添付します。
日常的に使う、請求書や領収書などに押印する印は、後述する角印で対応することが多くです。また、契約書であっても役職の権限に応じて「職印」を用いる場合もあります。
法人や団体の規模が大きい場合は、代表者印ではなく、支店や課長や部長などの役職の印を用い、職務権限に応じて契約を取り交わすことも可能です。このような印鑑を「役職印」もしくは「職印」と呼びます。
なお、弁護士や税理士などの士業に携わる方が、職務で使用する印鑑も「職印」と呼ばれますが、ここで解説している職印は、別のものです。
レイアウトは実印とほぼ同じであることが多く、部長や課長など役職を示す記載が中央にあり、その周りを会社や組織名が囲むように記載されるデザインとなっています。職印は、登記されているものではありませんが、部署の実印といった扱いです。
職印は、契約書などでは「法人・団体名+役職名+役職者名」を記載した横に「法人・団体名+役職名」の印鑑として押印します。
契約書に押印を求められる場合は、事前にどの役職印を使うかを確認しておきましょう。
それでは、次に「角印」について見ていきましょう。
角印も法人の印鑑ではありますが、実印・職印と異なるのは形だけではありません。
実印や職印が「法人・団体名+役職名」の印鑑で、役職を示す記載が中央にあり、その周りを会社や組織名が囲むように記載されるデザインとなっているのに対し、角印は「法人・団体名」のみであるか、あるいは「法人・団体名」+「之印」という表記になっています。
名前の通り四角い形をしていることから「角印」と呼ばれており、社名などに対して確認の意味で押印するというのがその用途です。
ここまで見てきた内容で、実印と角印の違いについてまとめてみました。
ここでは実印=代表者印=丸印として記載しています。
実印としても用いられることの多い丸印と角印では、実はその形と印影以外に差はありません。
法人登記の際に印鑑登録をした印鑑が「実印」となりますが、印鑑登録は、代表者の役職の記載を必ずしも求めるものではありません。そのため、規定を満たすサイズであれば、丸印ではなく角印を登記して実印として使用することも可能です。
しかし、そうしている法人はあまり多くありません。それはなぜでしょうか?
日本の商慣習上、丸印=実印 角印=認印 という使い分けをしていることはすでに述べました。
また、法人名の印鑑というのはその辺で販売していませんので、基本的には個別オーダーになるため、それなりの金額がかかります。
1本だけの方が安くできるし、運用も簡単になるので、どちらか1本で済ませたいと思われるかもしれません。
しかし、実印という重要な印章を、人目に触れる書類にポンポン押印していると、それだけ偽造リスクが高まります。
もともと印鑑をなぜ使うかというと、本人確認のためです。
実印と角印を分けて運用することで、普段から表に出ている角印の印影を偽造されたとしても、印鑑登記されていない場合はその会社のものであると証明することができません。そのため、契約書の偽造リスクを下げることができます。
そのため、重要な実印は普段使わずに、角印を認印として運用する法人が多いのです。
法人や団体の印鑑は、押印された文書が正当であることを示す重要な証拠ともなります。
そのため、印鑑については自由に使えるようにするのではなく、規定を設け、適切に運用するようにしましょう。
運用の一例
・印鑑は耐火金庫など、鍵のかかる場所に保管
・契約金額・内容などによって、どの役職まで対応できるかという職務権限を明確に
・印鑑を押印する場合の手順についても規定
・押印履歴を管理
法人の印鑑の種類と違いについて紹介しました。
現在でも印鑑の文化が残り、ビジネスの最前線で使用されています。しかし今回のコロナウイルスによって印鑑の文化も変化しそうです。今後このような重要書類に使用される印鑑がどのように変化するか目が離せませんね。
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