売上割戻引当金(うりあげわりもどしひきあてきん)というのは、あまり聞きなれない勘定科目かもしれません。今回は勘定科目の意味合いと、何のために設定するのかについて、詳しくご紹介していきます。売上割戻引当金を設定することでのメリットも知っておくといいでしょう。
「売上割戻」とは、売上が一定数以上多く売上が合った場合や早く売り切った場合などに、一律で売上を値引きしたり、報奨金、奨励金などを支払ったりするものです。売上から後になって現金を返すのが「売上割戻」です。
簿記には「売上割戻」という勘定科目があります。その場で売上を値引く「売上値引」とは異なって、後になって「割戻」をするのが特徴です。
そして、「売上割戻引当金」とは、その時に備えて引当金を設定するための勘定科目です。
例えば、当期に売り上げた商品の売上から、次の期に「売上割戻」が発生することがあります。当期中に計上するために「売上割戻引当金」という勘定科目を使います。
あらかじめ「引当金」を設定しておく考え方です。
もし、売上割戻引当金を勘定科目として作っていない場合には、売上からそのまま引く形の仕訳になるでしょう。売上値引や返品の時と同じ仕訳になります。
売上割戻引当金を設定していなければ当期は処理を何もせずに、翌期にお金を返す段階になって初めて売上から差し引く仕訳になります。
しかし、事前に売上割戻引当金として計上することで、未払い金扱いにしておくのが決算時に大きく異なってきます。その違いを知っておくといいでしょう。
売上割戻引当金を設定するにあたっては、引当金の考え方についてしっかり把握しておくことが大切です。
引当金を適用して仕訳をする場合には要件があり、下記のような要件があります。
これらの要件を満たしていれば、引当金として処理をすることが可能です。売上割戻引当金の場合には、売上が一律で多く売れた場合や早く売れた場合に最終的に割戻をする可能性が高い場合、要件を満たしています。
そして合理的に割戻金額がいくらになるかがわかる場合に、売上割戻引当金を設定することができます。
契約書や覚書で売上割戻を払うという契約を結んでいれば、どのくらいの金額の引当金が必要なのかもわかるでしょう。
売上割戻引当金を使うことで、仕訳は少し面倒になると感じることもあるでしょう。なぜ売上割戻引当金を使うのか、そのメリットについても詳しく触れます。
売上割戻引当金は、未払い金となるということでご紹介しましたが、貸借対照表の負債の部に計上します。決算時にしっかり当期の未払い金、負債として貸借対照表に計上します。
そして損益計算書においては、「売上割戻引当金繰入」と計上することで、売上からの直接控除を当期に行うことになります。
会計上、引当金として事前に当期で処理しておくことで、当期の売上をしっかり把握する有効な手段となりえます。
ただし、税務上は「売上割戻引当金繰入」を勘定科目として計上することは、認められていません。従って税金の申告書ではこの分の加算調整が必要ですので、税金対策とはならないことも覚えておいてください。
売上割戻引当金ですが、売上に関係する金額となり、売上金額が実質下がってしまいますが、原価率の計算には入れないようにするのが考え方です。売り上げた後に値切られた、報奨金をあげたという風に考え、原価率の計算には入れないようにするのが通常です。
今回は売上割戻引当金についてご紹介しました。きちんと引当金を事前に設定しておくことで、売上のきちんとした把握ができます。
少し面倒ですが、引当金として仕訳をすることで、決算時にも正確な売上把握を行うことができますので、利用してみるとおすすめです。