「固定資産の減損に係る会計基準」は上場企業であれば必ず適用しなければならない会計基準です。非上場の中小企業でも「中小会計指針」で決算書を作成している場合には減損会計の適用が求められます。今回は、そんな減損会計について、その概要を簡単に紹介したうえで、その対象資産と対象外資産についてもご紹介します。
まず、固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合において、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理であると「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」で解説されています。
ただし、これだけではやや抽象的なので、実際に実務において減損会計を適用するにあたっては「固定資産の減損に係る会計基準」で規定されている以下のフローに沿って適用していくことになります。なお、今回は、適用フローの詳細な解説をしていると相当のボリュームになりますのであくまでも適用フローの概要紹介にとどめます。
<上場企業における減損会計の適用フロー>
上記は上場企業が減損会計を適用する場合のフローですが、非上場の中小企業が減損会計を適用する場合のフローは以下の通り「中小会計指針」の36項に規定されています。
<非上場の中小企業における減損会計の適用フロー>
上場企業の適用フローと非上場の中小企業の適用フローとを見比べていただくとわかると思いますが、非上場の中小企業の減損会計の方が適用フローがかなりシンプルになっています。これは、どうしても中小企業の方が上場企業に比べて経理レベルが低いことから上場企業と同じフローで減損会計を適用するのが技術的に困難である点が考慮され、シンプルな設計になっています。
減損会計の適用対象資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」で以下の通り規定されています。
すなわち、減損会計の適用対象資産は固定資産です。
固定資産はさらに有形固定資産(土地、建物、機械装置、建設仮勘定等)、無形固定資産(のれん、借地権等)、投資その他の資産(投資不動産等)に分類されますが、これらが原則的な減損会計の適用対象資産になります。
また、やや細かい話にはなりますが、所有権移転外ファイナンス・リース取引のうち、借手側が当該ファイナンス・リース取引により使用しているリース資産を通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行っている場合、貸借対照表上、固定資産に計上されていないリース資産も対象に含まれることとされています(減損会計基準 注解(注12)及び第60項参照)。
上記の減損会計基準の規定では、ただし書きの部分で「他の基準に減損処理に関する定めがある資産」は適用対象から除く旨が規定されています。
「他の基準に減損処理に関する定めがある資産」の具体例としては以下のようなものが挙げられます。これらは、それぞれ他の会計基準において「減損処理」に類似した会計処理が規定されていますので、「固定資産の減損に係る会計基準」ではなく、そちらの会計処理で対応してくださいとの趣旨です。
1, 「金融商品に関する会計基準」における金融資産
2, 「税効果会計に係る会計基準」における繰延税金資産
3, 「研究開発費等に係る会計基準」において無形固定資産として計上されている市場販売目的のソフトウェア
4, 「退職給付に係る会計基準」における前払年金費用
また、繰延資産は、貸借対照表上、固定資産に分類されていないため、減損会計の適用対象とはならないと考えられますが、支出の効果が期待されなくなった場合には、一時的に償却されることとなります(財務諸表等規則ガイドライン95の22参照)。
なお、非上場の中小企業が適用する「中小会計指針」では、固定資産の減損処理の対象資産と対象外資産について上記「固定資産の減損に係る会計基準」のような細かい規定はされていませんが、基本的には、「固定資産の減損に係る会計基準」の取扱いと同じと考えられます。
減損会計の場合、上場企業と非上場企業で会計方法にいくつか違うがあること、また対象資産、対象外資産それぞれが具体的に表す意味を確認しました。減損会計について躓いた際に、この記事を参考にすることで実務に役立てれば幸いです。
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