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実務に役立つ!減損会計の概要とその対象資産と対象外資産

税理士 井上幹康2020.05.23
減損会計の適用

「固定資産の減損に係る会計基準」は上場企業であれば必ず適用しなければならない会計基準です。非上場の中小企業でも「中小会計指針」で決算書を作成している場合には減損会計の適用が求められます。今回は、そんな減損会計について、その概要を簡単に紹介したうえで、その対象資産と対象外資産についてもご紹介します。

減損会計の概要(適用フロー)

まず、固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合において、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理であると「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」で解説されています。

ただし、これだけではやや抽象的なので、実際に実務において減損会計を適用するにあたっては「固定資産の減損に係る会計基準」で規定されている以下のフローに沿って適用していくことになります。なお、今回は、適用フローの詳細な解説をしていると相当のボリュームになりますのであくまでも適用フローの概要紹介にとどめます。

<上場企業における減損会計基準の適用フロー>

1, 資産のグループピング
2, 減損の兆候の把握(兆候がなければ減損処理は不要)
3, 減損損失を認識するかどうかの判定(帳簿価格<割引前将来CFの場合は減損処理不要)
4, 減損損失の測定
5, 減損損失を損益計算書の特別損失に計上

上記は上場企業が減損会計を適用する場合のフローですが、非上場の中小企業が減損会計を適用する場合のフローは以下の通り「中小会計指針」の36項に規定されています。

<非上場の中小企業における減損会計の適用フロー>

減損損失の認識及びその額の算定に当たっては、減損会計基準の適用による技術的困難性等を勘案し、本指針では、資産の使用状況に大幅な変更があった場合に、減損の可能性について検討することとする。

具体的には、固定資産としての機能を有していても次の①②のいずれかに該当し、かつ、時価が著しく下落している場合には減損損失を認識する。
① 将来使用の見込みが客観的にないこと(資産が相当期間遊休状態にあれば、通常、将来使用の見込みがないことと判断される。)
② 固定資産の用途を転用したが採算が見込めないこと
なお、固定資産の減損損失累計額は、減価償却累計額に準じて表示する。

上場企業の適用フローと非上場の中小企業の適用フローとを見比べていただくとわかると思いますが、非上場の中小企業の減損会計の方が適用フローがかなりシンプルになっています。これは、どうしても中小企業の方が上場企業に比べて経理レベルが低いことから上場企業と同じフローで減損会計を適用するのが技術的に困難である点が考慮され、シンプルな設計になっています。

減損会計の概要

減損会計の適用対象資産と対象外資産

適用対象資産

減損会計の適用対象資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」で以下の通り規定されています。

本基準は、固定資産を対象に適用する。
ただし、他の基準に減損処理に関する定めがある資産、例えば、「金融商品に係る会計基準」における金融資産や「税効果会計に係る会計基準」における繰延税金資産については、対象資産から除くこととする。

すなわち、減損会計の適用対象資産は固定資産です。

固定資産はさらに有形固定資産(土地、建物、機械装置、建設仮勘定等)、無形固定資産(のれん、借地権等)、投資その他の資産(投資不動産等)に分類されますが、これらが原則的な減損会計の適用対象資産になります。

また、やや細かい話にはなりますが、所有権移転外ファイナンス・リース取引のうち、借手側が当該ファイナンス・リース取引により使用しているリース資産を通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行っている場合、貸借対照表上、固定資産に計上されていないリース資産も対象に含まれることとされています(減損会計基準 注解(注12)及び第60項参照)。

適用対象外資産

上記の減損会計基準の規定では、ただし書きの部分で「他の基準に減損処理に関する定めがある資産」は適用対象から除く旨が規定されています。

「他の基準に減損処理に関する定めがある資産」の具体例としては以下のようなものが挙げられます。これらは、それぞれ他の会計基準において「減損処理」に類似した会計処理が規定されていますので、「固定資産の減損に係る会計基準」ではなく、そちらの会計処理で対応してくださいとの趣旨です。

1, 「金融商品に関する会計基準」における金融資産
2, 「税効果会計に係る会計基準」における繰延税金資産
3, 「研究開発費等に係る会計基準」において無形固定資産として計上されている市場販売目的のソフトウェア
4, 「退職給付に係る会計基準」における前払年金費用

また、繰延資産は、貸借対照表上、固定資産に分類されていないため、減損会計の適用対象とはならないと考えられますが、支出の効果が期待されなくなった場合には、一時的に償却されることとなります(財務諸表等規則ガイドライン95の22参照)。

なお、非上場の中小企業が適用する「中小会計指針」では、固定資産の減損処理の対象資産と対象外資産について上記「固定資産の減損に係る会計基準」のような細かい規定はされていませんが、基本的には、「固定資産の減損に係る会計基準」の取扱いと同じと考えられます。

まとめ

減損会計の場合、上場企業と非上場企業で会計方法にいくつか違うがあること、また対象資産、対象外資産それぞれが具体的に表す意味を確認しました。減損会計について躓いた際に、この記事を参考にすることで実務に役立てれば幸いです。

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カテゴリ:コラム・学び

この記事を書いたライター

税理士 井上幹康
大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。

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