勘定科目の定義は実務をこなす上で非常に重要な概念です。現在簿記を勉強中の方や会計事務所で働き始めて理解し直したい方向けに説明していきます。
今回は、勘定科目の定義に関する基本的なルールについて解説します。
売掛金や買掛金、売上高や仕入高といった決算書に表示される項目のことを、勘定科目と呼びます。
中小企業の会計の場合、「どのような取引があったときに、どの勘定科目を使うか?」のルールは実はそれほど厳密なものではありません。
法律上のルールとして決まっているのは、あくまでも「税金を正しく計算すること」ですので、売上と経費がもれなく計上されていて税金が正しく計算できているのであれば、どの勘定科目を使うか?はそれぞれの企業の裁量に任されている部分が多いのです。
例えば、得意先を訪問するために自動車を使い、ガソリンスタンドで給油したとします。
その際の支出を経費として処理することは絶対に必要ですが、支出内容を「旅費交通費」で処理するか、「燃料費」で処理するか、はたまた「車両費」で処理するかについては、支出を行った企業が自由に決められるということですね。
ただし、営んでいる事業の規模や業種によっては、あらかじめ定められた会計基準・開示書類に合わせて科目を定義することが求められるケースはあります(建設業など、独自の会計基準がある業種)
判断に迷った際は、税理士その他の専門家に相談するようにしましょう。
勘定科目の定義や区分で、特に重要なポイントは以下の3点です。
・経営管理上の状況把握がしやすい区分にすること。
・外部への説明としてわかりやすい、一般的に広く使用されている勘定科目を使用すること
・勘定科目の定義や区分は一覧(定義書・会計要領・マニュアル)にしておき、継続的に同じルールで勘定科目を使用し、期間比較などに活用する。
どの取引にどの勘定科目を使うか?については比較的柔軟に決めることができますが、いったん決めた勘定科目をそのつど変えてしまうと、一定期間中の損益と、別の期間の損益を正しく比較することが不可能になってしまいます。
どのような取引が生じたときに、どの勘定科目で処理するのかをあらかじめルールとして決めておき、個別の取引についてそのルールを継続的に適用していくことが大切です。
以下では、判断に迷いやすい勘定科目の定義について解説するとともに、実務上のポイントを解説します。
接待交際費は「得意先等との会食やゴルフなどの接待、供応、慰安、贈答品などの費用」を支払ったときに使う勘定科目です。
決算書上は特に大きな問題はありませんが、法人税の計算を行う際には、接待交際費として処理した項目のうち、いくらまでを法人税計算上の損金として処理するか?については注意が必要です。
法人税の計算上、原則として接待交際費は損金として処理することが認められていないからです(ただし、中小企業の場合は一定額までは損金参入が可能です)
例外的な項目として、飲食を伴う接待に関しては、1回の支出が1人あたり5000円までであれば、大企業・中小企業ともに全額損金として認められます。
そのため、社外との飲食等の接待交際費は1人あたり5000円までの場合は「会議費」として処理し、接待交際費の勘定科目とは区分するのが通例となっています。
ただし、飲食を伴う場合であっても、その目的が打合せであったり、議事録などの記録が残っていたりして、それにかかった費用が一般的な常識の範囲内であれば「会議費」として処理できます。
また、従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のための一般的範囲内の費用は「福利厚生費」として区分します。
逆に、社内の人員のみの飲食代であっても、その目的が会議や一般的な慰安の範疇でない場合には「接待交際費」とします。
資本金が1億円超の会社の場合、原則として交際費等の金額は損金として処理することができません。
ただし、そのうち上記の飲食等の接待交際費に該当し、定められた項目を記録しているものであれば、その飲食等の接待交際費の50%を損金として計算することが可能です。
(資本金の額が5億円以上の会社の100%子会社は、大企業と同じ算出方法で限度額を計算します)
「寄附金」の定義は、金銭・物品、その他の経済的利益の贈与や無償の供与になります。
一般的に寄附金・拠出金・見舞金などと呼ばれるものは「寄附金」です。
例えば、社会事業団体・政治団体に対する拠金や、神社の祭礼等の寄贈金が該当します。法人が支出した寄附金は、一定額までであれば損金算入が可能なこともあります。
また、個人が寄附金を支出したときは、確定申告を行うことで寄附金控除を受けられることもあります。
実務上のポイントとしては、一見「寄附金」の名義であっても、その実態が交際費等・広告宣伝費・福利厚生費にあたるものは寄附金から除かれるという点です。支出したお金に対して何らかの経済的な見返りがあるかどうか?によって判断を行うのが適切でしょう。
「地代家賃」の定義は、土地や建物などにかかる賃借料のことです。
具体的には年間契約や1ヶ月単位で借りている事務所・駐車場代などが該当します。
また、これらを借りた際に、貸主にお礼として支払う礼金も「地代家賃」として処理します。
(礼金が20万円以上の場合は長期前払費用とし、期末時に当期に該当し償却した金額を「地代家賃」に振り替える必要があります)
実務上のポイントとしては、似たような費用をその実態に応じて分類することです。たとえば、時間単位で借りている駐車場の代金なら「旅費交通費」として処理をします。
その他、機械や設備などのリース料は「賃借料」に区分し、時間・1日単位で借りている貸スペース等の利用料は目的に応じて「会議費」「研修費」「採用費」「広告宣伝費」「販売促進費」などに分類します。
また、社内懇親会等が目的であれば「福利厚生費」などの科目へ分類します。
ソフトウェアは固定資産の無形固定資産の1つとして定義づけられ、何らかの処理を行うコンピュータ・プログラムや関連文書などを指します。
ただし、外部から購入した場合、開発して販売する場合、自社利用する場合の3つで会計処理の扱いに違いがあることに注意が必要です。
ソフトウェアの購入金額により扱いが異なります。
購入金額が10万円以上であれば「ソフトウェア」として資産計上した上で減価償却していかなくてはなりませんが、10万円未満のものは「消耗品費」として一括で経費処理することが可能です。
この購入金額は、ソフトウェア購入代とそれに付随する費用(導入時の設定作業費や自社仕様にするための修正費用など)を合わせた額です。
また、ソフトウェアのライセンス契約の費用は、10万円未満の場合や使用料が1年以内であれば「消耗品費」などで処理し、保守にかかる費用は「維持管理費」や「保守修繕費」とします。
開発したソフトウェアを自社内で利用する場合であれば、ソフトウェアを開発・研究・製作した際の原材料や人件費、その他経費や付随費用を合わせて「ソフトウェア」として資産処理します。
製作等のために要した上記のような費用の合計額が少ない場合には「研究開発費」などとして扱います。
一方、販売目的でソフトウェアを開発した場合、製品マスター(販売可能な状態のソフトウェア)が完成するまでにかかった費用は「研究開発費」として処理します。製品マスターの完成後に、改良や強化をした費用は「ソフトウェア」として処理します。
「租税公課」とは、簡単にいえば税金のことです。
ただし、企業が所属している業界団体の年会費などもこの勘定科目で処理することがあります。
実務上、注意が必要なのは、法人税や所得税などの税金はこの租税効果として処理できないことです。
法人税・住民税及び事業税(均等割)は、「法人税、住民税及び事業税」という科目で処理する必要があります。
また、各種加算税及び各種加算金、延滞税及び延滞金については、会計上は租税効果として経費処理しても問題はありませんが、法人税の計算上は損金参入することができないので注意しておきましょう。
今回は、勘定科目の定義に関する基本的なルールを解説しました。
勘定科目についてのルールは、経理スタッフが会計処理を行っていく上でもっとも基本的なルールと言えます。
実務上のポイントを押さえて正しく運用していきましょう。
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