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社会保険労務士に報酬基準はあるの?報酬決定方法と現在の相場を解説!

社会保険労務士 西岡秀泰
社会保険労務士の報酬基準

社会保険労務士の報酬基準は様々です。HPで比較すると一見同じような業務容なのに報酬基準は2倍以上も違っているケースもあります。今回は社会保険労務士の報酬基準の決め方と一般的な相場について解説します。

社会保険労務士の報酬基準とは

社会保険労務士の報酬基準とは、社会保険労務士法に定める業務に対する料金基準のことです。

社会保険労務士は事前に報酬基準を明示する義務がある

社会保険労務士規則第十二条の十では、社会保険労務士は業務が受任する際は、依頼者に対しあらかじめ「報酬額の算定の方法その他の報酬の基準」を明示するように定めています。

社会保険労務士のHPなどに料金表(または料金例)が掲載されていますが、実際に業務を受けるときは、契約書等を作成して業務内容とその報酬基準を記載することで標準報酬を依頼者に明示します。契約後のトラブルを避けるため、業務内容と報酬基準はできる限り具体的に記載することをおすすめします。

社会保険労務士の標準報酬の対象業務は?

社会保険労務士の標準報酬の対象業務は、社会保険労務士法第二条に定める次の業務です。

① 一号業務:労働社会保険諸法令に基づき行政機関等に提出する書類を作成・提出する仕事です。労働保険(労災・雇用保険)と社会保険(健康保険・厚生年金)の加入・脱退手続きなど。
② 二号業務:①以外の労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成です。就業規則や労使協定(三六協定など)の作成、労働者名簿や賃金台帳の帳簿の作成など。
③ 三号業務:労務管理や労働問題、社会保険に関して相談を受けたり指導する仕事です。
④ 紛争解決手続業務:個別労働関係紛争について紛争当事者を代理する仕事です。

上記のうち①、②は社会保険労務士の独占業務、④は特定社会保険労務士(紛争手続代理業務試験の合格が必要)のみが行える業務であるのに対し、③は社会保険労務士以外の人も業務可能です。

社会保険労務士の報酬基準の決め方

社会保険労務士の報酬基準の決め方は、
社会保険労務士が自由に決めることができます。

2003年以前の社会保険労務士の報酬基準

2003年に改正社会保険労務士法が施行されるまでは、都道府県ごとに社会保険労務士の報酬規程が定められていました。同じ都道府県の社会保険労務士は全員、同一の業務に対しては同一の報酬基準で受任していました。

現在も当時の報酬基準を参考に報酬を決めている社会保険労務士がたくさんいます。東京都が定めた報酬基準は下記の通りです。設立年月の古い社会保険労務士事務所ほど、この報酬基準に近い水準で報酬を決めているケースが多いようです。

2003年度の東京都の報酬基準① 【顧問報酬(※)】

(※)顧問報酬は、従業員の労働保険・社会保険の加入・脱退手続きや労務相談などを継続して受託するときの月額料金。

2003年度の東京都の報酬基準② 【給与計算】

・月額:20,000円
・5人以上は、1人増すごとに500円を加算。タイムカード集計は1人1,000円加算。

社会保険労務士法では報酬基準の決定ルールはない(2003年以降)

社会保険労務士法で報酬基準について定められているのは、事前に報酬基準を明示することと、報酬基準の対象となる業務のみです。つまり報酬基準をいくらにするかは法律上のルールはなく、社会保険労務士が自由に決めることができるのです。

報酬基準

月額料金とスポット料金

社会保険労務士の報酬基準(料金表)の多くは、業務内容によって「月額料金」「スポット料金」に分かれます。

月額料金 継続して業務を受託するときの1か月当たりの料金**で、前述の顧問報酬、給与計算などがあります。
スポット料金 就業規則作成、助成金の申請、会社設立時の労働保険・社会保険の新規適用など、単発で発生する業務を言い、1業務当たりの料金です。

従量課金制という考え方

最近、インターネットでの社会保険労務士広告で「初期費用0円、料金は使った分だけ」「従量課金制で無駄な経費を削減」などの文言を見かけます。一般的には月額・定額の顧問報酬や給与計算の報酬を、手続き人数(件数)×単価で計算することによって、実際の業務量に応じた料金体系とし、従量課金という表現でPRしています。

前述の通り、顧問報酬のほとんどは月単位の定額料金のため、従業員の入退社や労務相談がなければ利用者が支払った顧問報酬は無駄になったともいえます。

インターネットでの労務相談、労務手続き

インターネットを使って業務を受任する社会保険労務士も増えています。業務範囲は簡単な労務相談から助成金の申請アドバイスまで幅広く、報酬基準は大きな開きがあります。たとえば、1時間相当の労務相談の報酬が1,000円未満であったり1万円近くであったりしますが、全体としては低価格を売りにした募集が目立ちます。

社会保険労務士の報酬基準の相場は

社会保険労務士の報酬基準の相場は、統計、調査などがないため確かなところはわかりませんが、比較サイトなどの推計では前述の2003年度以前の東京都の報酬基準とほぼ同水準であるとのことです。

社会保険労務士の報酬基準は、実は低価格化

比較サイトなどの推計では報酬基準の相場は依然とあまり変わってないようですが、インターネット上の料金を調べると報酬基準は低価格化が進んでいます。前述のンターネットを使って業務を受任する場合などは、従来の半額以下の価格設定も数多くみられます。

社会保険労務士の報酬基準低下の理由は?

社会保険労務士の報酬基準低下の主な理由は、次の通りです.

顧客獲得競争が激しく低価格で顧客獲得

報酬基準低下の1つ目の理由は、顧客獲得競争が激しく低価格で顧客獲得する社会保険労務士が多いからです。すでに社会保険労務士を利用している顧客は、別の社会保険労務士事務所に乗り換えることは稀で報酬基準も高めで安定しています。反面、新規開業の社会保険労務士は新規の顧客獲得に苦労し低価格で勝負するケースも多くなります。

インターネットによるコストの低下

報酬基準低下の2つ目の理由は、インターネットによる業務コストの低下です。インターネットの普及で、顧客への訪問や電話、郵送などの手間を省いてインターネットのみで業務をすることが可能となり、業務コスト削減により標準報酬の引き下げが可能となりました。また労働・社会保険手続きの電子申請が進んでいることもコスト低下に寄与しています。

まとめ

社会保険労務士の報酬基準は、社会保険労務士が自由に決めることができます。報酬基準の相場は、新規顧客の獲得競争が激しく、またインターネットによって業務コストが下がったことで低価格が進んでいます。

新規に開業する社会保険労務士は、低価格で勝負する、価格以上にコスト低減できる業務スタイルを創り出す、コンサル業務などで付加価値を高めるなどによって、時間はかかりますが、自分なりの経営スタイルを確立して満足いく水準で報酬基準を決めてください。

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この記事を書いたライター

生命保険会社に25年勤務の後、西岡社会保険労務士事務所を開設。保有資格は社会保険労務士資格、ファイナンシャルプランナー2級、生損保各種販売資格。得意分野は人事・労務、金融全般、生命保険、公的年金。
カテゴリ:コラム・学び

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