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赤字だから法人税は発生しない!ってホント?法人税の仕組み

税理士 井上幹康
赤字だから法人税は発生しない!ってホント?法人税の仕組み

法人税は、企業のもうけ(利益)に対して課税される税金です。なので「赤字なら法人税は発生しない」と思い込んでいる方が多いですが、一概に赤字だからといって法人税は発生しないとは言い切れません。今回は、赤字でも法人税が発生する仕組みや赤字でも発生する法人税以外の税金を簡単にご紹介します。

法人税の計算方法の概要

まず、法人税の計算方法について知らなければ、赤字でも法人生が発生する仕組みを理解できませんので、簡単にご紹介います。

<法人税の計算方法>
①損益計算書(PL)の当期純利益に、一定の項目を加算・減算し、課税所得を求める。
  当期純利益又は当該純損失(PL) +加算項目 ▲減算項目 = 課税所得
②①で求めた課税所得に法人税率を乗じる。
  課税所得 × 法人税率 = 法人税額

実際には、もっと複雑な計算過程を経て課税所得や法人税額が算出されるのですが、ここでは法人税の計算方法の概要を知っていただくために①②の2つのステップのみで簡単にご紹介しました。

法人税の計算方法で特に強調したいのは、上記①の過程で一定の項目を加算・減算している部分です。この調整が入ることで、損益計算書(PL)の当期純利益と法人税率を乗じる基となる課税所得とのズレが生じます。

赤字の場合の法人税

それでは、上記の法人税の計算方法の概要を踏まえて、赤字の場合の法人税の計算についてみていこうと思いますが、説明の便宜上、同じ赤字でも、毎期経常的に赤字体質の会社の場合黒字体質の会社が当期たまたま赤字になった場合**で分けて解説していきます。

毎期経常的に赤字体質の会社の場合

まず、毎期経常的に赤字体質の会社の場合、法人税法上の繰越欠損金がかなりたまっている場合が多いと思われます。ここで繰越欠損金とは、上記法人税の計算方法①の結果がマイナスとなる場合におけるそのマイナス金額をいい、その後10年間にわたって利益から減算できるものです。

したがって、毎期経常的に赤字体質の会社の場合、上記法人税の計算方法①は以下のようになり、加算項目がよほど大きくない限り、課税所得がプラスになる可能性は低く、結果、法人税が発生する可能性は低いと思われます。もちろん、あくまでも可能性が低いというだけであり、100%法人税が発生しないとは言い切れません。

当期純損失(マイナス)+加算項目 ▲減算項目(繰越欠損金あり)= 課税所得

黒字体質の会社が当期たまたま赤字になった場合

次に、黒字体質の会社が当期たまたま赤字になった場合は、赤字体質の会社のように過去から繰り越してきた繰越欠損金がたくさんある可能性は低いと思われます。

したがって、黒字体質の会社が当期たまたま赤字になった場合、法人税の計算方法①は以下のようになり、減算項目に繰越欠損金がない分、加算項目によっては課税所得がプラスになり、法人税が発生する可能性もあり得ます。もちろん、あくまでも可能性の話であり、100%法人税が発生するとは言い切れません。

当期純損失(マイナス)+加算項目 ▲減算項目(繰越欠損金なし)= 課税所得

なお、加算項目の具体例としては以下のような項目があります。
・役員給与の損金不算入
・交際費の損金不算入
・寄付金の損金不算入
・固定資産の減価償却超過額、減損損失 等

これらは、損益計算書上は費用として計上されているものの、法人税法等に定める要件を満たさない場合や限度額をオーバーした場合、法人税の計算方法①において、その全てが費用として認められず、一部または全部を加算することとされているものです。

法人税法では、こうした加算項目の数の方が減算項目の数よりも多いので、加算項目の金額次第ではたとえ、損益計算書上で当期純損失(赤字)でも法人税が発生する場合があるというのがご理解いただけたのではないでしょうか。

赤字でも発生する法人税以外の税金

法人税以外にも会社が納める必要のある税金はたくさんあります。上記では赤字でも法人税が発生する可能性がある点について解説しましたが、最後に、赤字でも発生する法人税以外の税金について代表的なものを以下ご紹介します。

法人住民税の均等割

 法人住民税という税金は①法人税割と②均等割の2つから構成されているのですが、このうち①法人税割は法人税の額をベースに計算するものですので、赤字で法人税が発生しない場合は連動して発生しないのですが、②均等割は赤字でも必ず発生する税金になります。

均等割は、法人の店舗や事務所がある都道府県、市町村ごとに発生しますので、全国展開して各地に店舗や事務所を有する場合には、均等割だけでかなりの額になることも多いです。

また、休眠会社の場合、各自治体に申請すれば均等割が免除される場合もありますので、各自治体に問い合わせるのも一法でしょう。

法人事業税の付加価値割、資本割

資本金が1億円を超える法人の場合、法人税事業税は①所得割、②付加価値割、③資本割の3本構成となります。このうち、①所得割は、法人税の課税所得をベースに計算するものですので、課税所得がマイナスで法人税が発生しない場合には連動して発生しませんが、②付加価値割、③資本割は例えば赤字でも発生する可能性があります

消費税等

消費税等は、そもそも納付税額の計算方法が法人税の計算方法と全く異なります。

<消費税等の計算方法>
仮受消費税等 ▲仮払消費税等 = 納付税額(マイナスの場合は還付税額)

仮受消費税等は売上代金と併せてお客様から預かった消費税等をいい、仮払消費税等は、仕入や経費の支払代金と併せて取引先に支払った消費税等を言います。

計算式を見ての通り、会社の利益の要素は関係してきません。赤字ということは、経費や損失が大きいということだから、仮払消費税等が大きく、消費税等は発生しないのではないかと思われる方もいると思いますが、例えば、経費のなかでも、給与・賞与など、仮払消費税等がかからない経費もありますので、赤字でも納付税額が発生することは全然あり得ます

おわりに

上記の通り、法人税は赤字でも発生する場合がありますし、法人税以外の税金で赤字でも発生するものも多いです。赤字の場合、同時に資金繰りが悪化している場合も多いので、何の準備もなく急に支払う税金が発生するとその負担もかなり重くなってきます。なので、ぜひ「赤字だから税金はかからない」という思い込みは捨てて、各税金の計算方法の概要を学び、概算でもいいので赤字でも発生する税額を試算しておくことが重要です。

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この記事を書いたライター

大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。
カテゴリ:コラム・学び

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