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就業規則の作成を社会保険労務士に依頼する際のポイント

HUPRO 編集部
就業規則の作成を社会保険労務士に依頼する際のポイント

就業規則は適正な労務管理のために重要なルールブックであるため、社会保険労務士などの専門家に作成を依頼するケースが多くあります。社会保険労務士などの外注先は何を基準に選べばよいのでしょうか。今回は就業規則を作成する効果や外注先を選ぶポイントについて解説していきます。

就業規則がもたらす効果

就業規則とは会社のルールや従業員の権利・義務を明文化したものです。常時10人以上の従業員を雇用する使用者に作成、届出の義務があります(労働基準法第89条)。しかし単に「義務があるから作成する」というのではなく、労使が就業規則の内容を正しく理解し、順守することで会社の発展に寄与するものと思っておくべきでしょう。

就業規則を作成することで次の効果があります。

・労使トラブルを防ぐ
・問題社員がでたときに適切に対応できる
・適正な労務管理ができる
・労働環境が整備され、従業員の満足度につながる
・経営理念を従業員へ伝えられる

就業規則の作成は専門家に依頼するべきなのか

就業規則を自社で作成するのか、専門家に依頼するのか迷っている方もいるでしょう。結論からいえば、自社で作成することは可能ですが専門家に依頼するのが望ましくあります。

自社で作成する場合、外注するときにかかる費用が不要です。また自社や業界の事情に詳しい人が作成することで、実情にあった内容を構築することができます。一方で、法定要件を満たさない、不要な項目を入れてしまい意図せず法的に縛られることになるなど、相応のリスクがあります。

次の質問に回答してみましょう。

・経営者自身や自社の従業員が最新法令を熟知していますか?
・自社で発生し得る労使トラブルを予想できますか?
・適当に作成した場合でも後で簡単には変更できないことを理解していますか?

これらの質問に「はい」と答えられない場合、まずは勉強から始めなければなりません。勉強をしたからといってボタンひとつで作成できるものではないため、作成の時間も必要です。ここまでの時間、従業員の人件費が発生しています。経営者自身が作成する場合も、本来であれば会社が利益をだすための活動ができていたのに、勉強中や作成中はストップしてしまいます。

このように自社で作成するのは非効率で、結局はコストもかかっているうえに、専門家が作成したものに比べて精度が低くなるでしょう。専門家に依頼することで、経営者や従業員は本業に専念でき、実際には余計なコストを抑えられます。正しい知識にもとづく内容なので法令違反となることもありません。

就業規則作成の専門家は社会保険労務士か弁護士

就業規則を作成する専門家といえば真っ先に思い浮かぶのが社労士(社会保険労務士)です。社労士は労働・社会保険諸法令に精通した労務管理のプロなので、まずは依頼を検討するべきといえるでしょう。

法律全般の専門家という点では弁護士にも依頼が可能です。弁護士の場合は訴訟の代理人となれるため、労使トラブルが発生し、訴訟に発展したケースにまで対応できるという利点があります。ただし弁護士は社労士と比べて取り扱える法令の範囲が幅広い分、労働問題を扱っている弁護士かどうかを確認する必要があります。

社会保険労務士を選ぶポイント

一般的には就業規則の作成を社労士に依頼するケースが多くなりますので、ここでは社労士を選ぶ主なポイントを説明します。

実績やノウハウがある

医者に担当科があり、弁護士に得意領域があるように、どの分野に詳しいのかは社労士によって異なります。中には「障害年金に特化した社労士」のように、特定の分野を中心に活動している社労士もいますので、社労士なら誰でもよいわけではありません。労働問題や就業規則作成の実績がある社労士事務所・社労士法人に依頼するのが懸命な選択です。

業界に精通している

就業規則は業界ごとに内容が大きく異なります。たとえば小売や飲食業界は多数のパート・アルバイトを抱えているため、正社員用の就業規則とは別に詳細なものを作成しなくてはなりません。医療・介護業界は職種が多く、勤務時間も不規則なので規定が複雑になるでしょう。

自社が所属する業界に精通している社労士であれば、法定要件を満たすのはもちろん、業界内で発生し得るトラブルを予測し、未然に防止するための項目を漏れなく盛り込むことができます。

社会保険労務士を選ぶポイント

経営者との相性

「きちんとした就業規則を作成してもらいたい」という希望があるのなら、社労士と何回も打ち合わせをおこない、自社の実情や経営者の理念等を反映したものを作成してもらう必要があります。そのため経営者と社労士との相性や、しっかり話を聞いてくれる社労士かどうかなども重要になるでしょう。

社会保険労務士に依頼した場合の費用相場

「就業規則の作成にいくらでもかけられる」という会社は多くないはずなので、費用面も気になるところです。社労士に依頼した場合、5万円程度から100万円かかるケースまであります。平均的には15万円~20万円といったところでしょう。

これだけ金額に幅がある理由のひとつは、サービス内容が異なることにあります。たとえば「5万円で就業規則をゼロから作り、人事コンサルティングまでしてほしい」というのは難しい話です。5万円程度であれば、ひな形をもとに自社で作成したものを社労士がチェックだけする、社労士がアドバイスをして自社で作成するといったケースが一般的です。反対に100万円レベルになると、就業規則の作成はもちろん、コンサルティング的な意味合いも強くなります。

もちろん会社の実情によっても費用が変動します。従業員の規模や雇用形態の種類、就業規則に求めるものなどは、会社によって違うからです。たとえば多数の職種や雇用形態の従業員がいる会社の場合、勤務時間帯や給与の計算方法等も複雑化するでしょうから、記載項目や注意事項が多くなります。当然、就業規則の作成にかかる費用も高くなるというわけです。

社労士と複数回にわたり打ち合わせをし、自社の実情にあったオリジナルの就業規則をゼロから作る場合には、少なくとも15万円~30万円はかかると思っておいたほうがよいでしょう。

まとめ

就業規則は単に法律で作成が義務づけられているという理由にとどまらず、適正な労務管理の観点から大変重要なものです。労働環境を整備し、労使トラブルを防ぐ就業規則を作成するには、社会保険労務士などの専門家に依頼するのが望ましくあります。労働問題の取り扱い実績やノウハウがあり、業界に詳しい社労士の中から探すとよいでしょう。

この記事を書いたライター

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