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就業規則にない試用期間の延長はできない!モデル就業規則から解説します

HUPRO 編集部
就業規則にない試用期間の延長はできない!モデル就業規則から解説します

試用期間とは、企業が人材を採用した後にもうける「お試し期間」です。
この期間中に研修や仕事を通じて、新入社員の能力や適性、勤務態度などを見極めます。「お試し」といっても、もちろん給与は支払われ、社会保険も雇用保険も適用されますし、時間外勤務があったら手当も支給されます。

会社側としても、新入社員の適性について試用期間中に見極めを行いたいのはもちろんですが、どうしても試用期間での判断が難しい場合もあります。しかし就業規則に試用期間の延長について定めがない場合、労働契約上で試用期間の延長を行った場合、トラブルにつながりやすいという実態があります。本記事では、試用期間の延長と就業規則に定めるべき内容について解説します。

そもそも試用期間について、きちんと理解できていないという方は下記のコラムで概要を説明しています。
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試用期間と本採用の違い

試用期間が本採用と違うのは、使用者の解約権が留保された労働契約(解約権留保付労働契約)というところです。
しかし、入社から2週間を超えると、通常の解雇と同じように30日前に解雇を予告するか、30日分の解雇予告手当を支払わなければならないとされています。
つまり、制度上は本採用と何ら変わるところがないのですが、解雇に対するハードルが低いのが試用期間の特徴であるといえます。

試用期間の長さは3ヶ月が多い

試用期間の長さは、1ヶ月~6ヶ月程度が一般的で、およそ1年以内が上限と考えられています。だいたい3ヶ月くらいに設定する企業が多いようです。

試用期間の長さは、就業規則や雇用契約などに「試用期間を延長する場合がある」などの定めがあり、延長の理由に合理性がある場合であれば、延長することは可能です。しかし、会社側が好きなようにその期間を設定できるわけではありません。

試用期間について定めるのは就業規則

試用期間の長さは法律では決められていませんが。会社ごとに定めた就業規則がベースとなります。
仮に、就業規則には試用期間が3ヶ月と明言してあったら、それ以上の試用期間を定めることは難しいでしょう。というのも、両者の合意があったとしても労働契約法12条により、従業員にとって、不利な条件は無効となり、有利な条件が基準になると定められているからです。

例)以下のように内容が異なる場合は、試用期間が短い方が優先されます
就業規則:試用期間3ヶ月
雇用契約:試用期間6ヶ月

試用期間を延長したいケースに備えて就業規則を変更しておこう

試用期間の延長をおこないたい場合は、就業規則をあらかじめ変更しておくことが不可欠です。

厚生労働省モデル就業規則の落とし穴

例えば、最もよく使われるであろう厚労省のモデル就業規則について「試用期間」の部分を見てみましょう。

(試用期間)
第6条 労働者として新たに採用した者については、採用した日から_か月間を試用 期間とする。
2 前項について、会社が特に認めたときは、使用期間を短縮し、又は設けないことがある。
3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第51条第2項に定める手続によって行う。
4 試用期間は、勤続年数に通算する。出典:厚生労働省 モデル就業規則 平成31年 3月版

上記より
・採用した日から_か月間を試用期間とする。
という定めがあり、
・会社が特に認めたときは、使用期間を短縮し、又は設けないことがある。
という文言があるだけです。

「じゃあ試用期間で辞めてもらうのは大丈夫では?」と思うかもしれませんが、3項にある
・入社後14日を経過した者については、第51条第2項に定める手続によって行う。
というところを見てみましょう。

(解雇) 第51条
(中略)
2 前項の規定により労働者を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告をする。予告しないときは、平均賃金の30日分以上の手当を解雇予告手当として支払う。ただし、予告の日数については、解雇予告手当を支払った日数だけ短縮することができる。 (後略)出典:厚生労働省 モデル就業規則 平成31年 3月版

試用期間でも14日を過ぎたら、通常の解雇と同様30日前に予告が必要となる旨が定められています。

つまり、これをそのまま使った場合は、
・試用期間の延長はできない
・解雇は14日以内にするか、試用期間が仮に3ヶ月だとしたら2ヶ月終了時に解雇予告が必要
となります。
試用期間終了時の解雇宣告は「不当解雇」となるおそれがあるのです。

試用期間の延長を就業規則に盛り込むには

試用期間を延長する規程を盛り込む場合は、その後のトラブルを避けるために、具体的な期間と、本採用の基準を明記しておく必要があります。

延長の場合は以下のように具体的な内容を記載しておくのが良いでしょう。

・試用期間中に本採用とすることの判断ができないときは、前項の期間を最長3カ月間延長することがある。

就業規則の作成・変更については社会保険労務士に相談しよう

就業規則を変更する場合は、従業員の過半数の代表者に意見を聞いたことを証明するための意見書を添付したうえで労働基準監督署長への届け出が必要です。

また、そのほかにも社内で既に労働協約として締結しているものがあればそれが優先されます。つまり、後で使用者側に取って不備があったからといって、おいそれと簡単に変えられません。

そのため、就業規則を作成する際、試用期間を新たに設けたり、期限の延長などの変更したいことがある場合は、あらかじめ社会保険労務士に相談することをおすすめします。

この記事を書いたライター

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