正社員として採用することを前提に設けられる「試用期間」。求人票を見ていると、試用期間ではなく、いったん契約社員のような有期雇用契約を結び、問題がなければ採用といった段階を踏む企業が見られますが問題はないのでしょうか?本記事では、試用期間としての有期雇用の活用について会社のスタンスを解説します。
そもそも試用期間について、きちんと理解できていないという方は下記のコラムで概要を説明しています。
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有期雇用は期間を区切って採用している雇用形態で、契約社員やアルバイト・パートなどが該当します。
期間を区切って雇用されているので、契約終了日までに延長の手続きを行わない限りは、最終日を持って雇用関係が終了します。
例えば、1年契約の契約社員であれば、1年ごとに契約を締結しなおす必要があり、再契約がない場合は、その会社での勤務は終了です。
試用期間はあくまで無期雇用を前提とし、適性がないと判断した場合には本採用を拒否できる解約権がついた「解約権留保付労働契約」と考えられていますが、その実行は正社員の解雇と同じくらいハードルが高いものです。
そこで、契約終了で雇い止めができる有期雇用を試用期間として使う企業が時折見受けられます。最初の半年は契約社員で、その後は正社員登用もありといった形です。
この方式にはメリットが2つあります。
確かに、はじめの労働契約が有期雇用であれば、採用された人も正社員としての無期雇用に対する期待度も低いので、その人の能力が要件に満たない場合は辞めてもらいやすいというのが大きなメリットです。
しかし実際の裁判例で、有期雇用を試用期間として明らかに同じものとして活用している場合に有期雇用として認められず、通常の解雇と同じ扱いでとみなされたケースもあります。
有期雇用を行う場合は、契約書などにその旨を明記し、正社員としての採用とは別物として取り扱う必要があるでしょう。
有期雇用期間が2ヶ月以内の場合、会社にとっては悩ましい社会保険の適用が除外になります。つまりその分の人件費が節約されるというわけです。
しかしこれも有期雇用を試用期間として使っていることが明らかな場合は、採用時からの適用を求められることがあります。
企業側から見ると、最初の試用期間の間は有期雇用として契約したほうがメリットが大きいように思えます。しかし有期雇用を試用期間とした場合にもデメリットがあります。
能力のある人は、最初から正社員募集のところに行ってしまうために、結果的に優秀な人を雇えないという問題です。
また、有期雇用の間にこちらが働き続けて欲しいと思ったとしても、すぐに辞めてしまいやすいという傾向もあります。
試用期間として有期労働契約を用いる場合は、有期労働契約を結ぶにあたって、契約書にて契約期間の満了に伴う労働契約の終了について明記しておく必要があります。
というのは、形式として有期契約を締結していたとしても、それが労働者の適性を見るための試用期間として使っている場合においては、会社側が「有期雇用だ」と主張しても、試用期間としてみなされ、契約満了に伴う労働契約の終了を不当解雇とされるおそれがあるからです。実際に最高裁での判例も出ています。(神戸弘陵学園事件最三小判平2・6・5)
有期雇用は期間を区切った雇用であるぶん、その期間が満了するまでは雇っておく必要があり、契約期間の途中の解除が困難です。
これは、あらかじめ正社員で雇用するための試用期間で適用される、労働基準法 第16条の正社員の解雇の要件よりもさらに重大なものでないと認められないとされています。
例えば、試用期間半年を有期雇用で契約した場合、試用期間として採用していれば、適性や勤務態度などに問題がある場合、30日前の解雇通知で解雇が可能ですが、有期雇用にしていた場合は半年雇い続けなければなりません。
以上、試用期間としての有期雇用の活用について、解説しました。試用期間と有期雇用の関係については、あらかじめ会社側のスタンスを理解したうえで、きちんと自分でも求人票を確認しましょう。