企業から内定をもらった場合に、その時点で労働契約は成立するのでしょうか。内定取り消しなどということもよく聞かれますが、内定取り消しが認められる基準についても知っておくといいでしょう。内定をもらっている状態とはどういう状態なのか、内定で労働契約は成立するのかについて詳しく解説します。
内定とは何かからまずご紹介します。内定は、会社が内定通知を出し、それに求職者が誓約書を書いて出すことによって内定が成立するものです。ただし、内定は、それぞれの会社で様々な形を取り、法律では明確なものがないのが特徴です。
それでも、内定通知書と契約書がセットであれば、内定の労働契約が成立したと法律上でも言われるようになっています。内定を受けた状態で、労働契約が成り立ったことになります。
内定は、「始期付解約権留保付労働契約」と言われ、「始期付」「解約権留保付」というのが特徴の労働契約です。その特徴について詳しくご紹介していきます。
まず、内定は「始期付」の労働契約です。「始期付」とは、労働契約がいつ始まるという期日をあらかじめ設定していることを言います。大学を卒業したらなどと期日が決まっているのが「始期付」の労働契約です。
内定の労働契約は「解約権留保付」というのも特徴です。「始期」までは、解約ができる権利を留保している労働契約です。
つまり、決められた「始期」まで、解約しないよう、内定取り消しということを留保している、差し控える労働契約と言えます。
それでもよく聞かれるのが内定取り消しという言葉です。内定取り消しは、労働契約上どう考えたらいいのでしょうか。内定取り消しは、「内定」という労働契約が結ばれた後の取り消しになりますので、契約上の「解雇」ということになります。
「内定取り消し」と言われたら、どう対応したらいいのかについても詳しくご紹介します。
労働契約が成立している内定を取り消した場合には、労働契約法や労働基準法などが適用されます。労働契約後の解雇に当たり、「労働契約法第16条の解雇権の濫用」が法律上適用されます。
客観的で合理的な理由や社会通念にのっとったものがない限りは、内定取り消しは無効とも言われています。それほど企業側としては慎重に行わなければならないものです。
そして、内定取り消しは、解雇と同じですので、解雇予告は30日前までには行う必要があり、早めに連絡することが大切です。
内定取り消しの客観的、合理的な理由、社会通念にのっとった理由については、いくつかの理由があります。
・採用時には予期できない身体的・精神的な変化で労働ができない場合
・履歴書や経歴に詐称などが判明した場合
・会社の経営悪化で緊急に採用が見直された場合(通常の解雇と同じように解雇規制はあり)
・解雇回避のために努力したが、人員整理などがどうしても必要な場合
・解雇をする人を選定する際に、内定取り消しが合理的な場合
このような理由の場合には内定取り消しも可能となります。何らかの合理性のある理由が内定取り消しには必要です。
そして、また合理的な理由で内定取り消しを行った場合も、解雇にあたりますので、求職者へのフォローもしっかりやっておくことが大切です。
それでは、求職者の内定辞退についてはどうなのでしょうか。内定の「契約書」を交わした後に辞退することはあまりいいことではありませんが、法的な拘束力はないと言われています。
契約書を交わして時点で、労働契約が成り立っていますので、辞退すると本来契約違反になりますが、それでも、内定者が辞退して2週間経てば民法上自然と解約が成立します。民法上、辞退が認められます。
ただし、それまでに会社が内定者のために様々な準備費用や研修費などを支払った場合には、賠償請求をすることもできます。内定辞退も慎重に行う必要があります。
内々定は、どうなのでしょうか。「採用内々定」は、まだ正式に内定が決定している状態ではありませんので、契約までには至っていません。ただ、会社とのやり取りなどによっては、労働契約が成立していると考えられることもあります。どんなやり取りをしたかによって意味合いが変わってきます。
内定は、「始期付解約権留保付労働契約」として、一つの労働契約であることをご紹介しました。会社側の非合理的な内定取り消しは解雇になりますし、内定者も辞退は厳密には契約違反になります。
内定はお互いに労働契約を結んだという状態ですので、慎重にとらえて対応すべきものだと言えます。