源泉徴収というと、給料や報酬の支払で減額することをイメージされる方が多いと思いますが、海外取引についても、源泉徴収が必要な場合があります。
日本から海外に払う場合と海外から日本に入金される場合に源泉徴収が発生します。源泉徴収は、その後の税金申告にも影響する面倒な会計業務です。
この記事では、海外取引の源泉徴収について、わかりやすく解説しています。
もちろん、日本から海外への支払取引すべてが源泉徴収の対象になるとは限りません。
海外の取引先(送金先)に、日本で何らかの所得(国内源泉所得)が発生している場合に、源泉徴収が必要となります。
海外の取引先(送金先)に「日本の税金」が発生するため、海外に支払う時点で、日本国内の支払側に源泉徴収を義務付けています。
源泉徴収した金額は、源泉徴収した企業が、源泉所得税として国に納付することになります。
代表的な取引例は下記のとおりです。
・ロイヤリティの支払
・コンサルティング料支払(日本国内で役務提供が行われる場合)
・不動産賃料支払(国内での不動産賃貸の場合)
・配当や借入利子支払
海外に支払う時の源泉徴収について実務上注意しなければならないことは次の通りです。
取引先によっては、日本との取引によって源泉徴収されることを理解しない場合もあります。支払いを受ける相手方にとっては、実際に送金される金額が源泉税分だけ契約金額より少なくなります。源泉徴収の要否についてきちんと説明していないと、トラブルが生じる可能性があります。
税務調査で、海外への支払いで源泉徴収漏れが指摘されるケースは大変多いです。経理実務上、源泉徴収をすべきかどうかの判断がとても難しいということが原因の一つです。
税務調査などで源泉徴収漏れの指摘を受けると、ペナルティーも含めて追徴されてしまいます。実質的に純粋なコスト増となりますので注意が必要です。
源泉徴収を行った場合、相手先から納税証明書の発行を依頼されることがあります。納税証明書は、その相手先が、相手国で税金の申告をする時に、日本で源泉徴収された税額について税額控除を受けるために使用されます。
相手先の税務申告上重要な書類となりますので、依頼があった場合には、源泉徴収税額を納めた税務署に証明をしてもらうことが必要となります。
日本から海外に支払う時に源泉徴収するように、海外の取引先から日本に対して支払う時も源泉徴収されるケースがあります。
基本的に海外に送金する場合の考え方と同じです。日本の取引先(送金先)に、海外で何らかの所得(海外での源泉所得)が発生している場合に、海外の取引先は、その国の税法に従って、源泉徴収が必要となります。
日本から海外に支払う場合は「日本の税金」を源泉徴収する、海外から送金される場合は、「現地の税金が源泉される」と理解するとわかりやすいです。
代表的な取引例は下記のとおりです。海外に送金する場合と基本的には同じです。
・ロイヤリティの支払
・コンサルティング料支払(日本国内で役務提供が行われる場合)
・不動産賃料支払(国内での不動産賃貸の場合)
・配当や借入利子支払
源泉徴収税率は、各国の税法により、異なります。ただし、相手国によっては、租税条約で、源泉徴収税率の上限税率が決められています。
租税条約は国内法に優先して適用されますので、租税条約がある場合は、租税条約の上限税率が適用されます。例えば、ロイヤリティの支払いの限度税率は上限10%と定められています。
例えば、ロイヤリティの場合、海外での取引であっても、日本に入金がありますので、日本の企業は売上計上しています。法人税の課税対象となります。
海外からのロイヤリティ入金の場合、海外で外国税が源泉徴収され、さらに日本でも法人税が課税される「国際間での二重課税」の状態となります。
「国際間の二重課税」の状態を解消するため、日本の法人税上は、外国税額控除という制度を設けています。
外国税額控除は二重課税を調整するために設けられており、外国で納めた税金をその年の法人税から差し引ける制度です。外国税額控除の対象となる場合には、一定の計算式で計算された控除限度額の範囲内で、日本の法人税から控除することができます。
海外取引の源泉徴収は、経理部門にとって厄介な業務です。支払う場合も受け取る場合も源泉徴収を意識しなければいけません。源泉徴収の対象となるかどうかの判断は契約書や請求書等です。海外取引の場合多くが英文ですが、英語が苦手だと細かな文意まで理解することはとても苦痛な作業です。
しかし、グローバルでの事業が加速する中、益々重要な業務となっていますので、正面から取り組む姿勢が求められます。