最近、監査法人を変更する企業が増えつつあります。監査法人といっても何を行っているのかよくわかりませんよね。監査法人の仕事について紹介するとともに、監査法人を変更する理由を紹介しています。
監査法人とは、公認会計士法第34条の2の2第1項によって、公認会計士が共同して設立した法人のことを言います。企業から報酬を受け取って、財務書類の監査または証明を行っています。監査法人の設立には5名以上の公認会計士が必要です。
監査法人の業務には次の3つがあります。
監査証明業務は、監査法人の主力業務となっています。企業、公益法人、独立行政法人など様々な顧客に対し、法人が作成した財務書類が法的に適正であるかを審査し、独立した第三者の立場としてその適法性を担保宣言する業務です。
監査証明業務には「法定監査」と「任意監査」があります。
法定監査は監査法人の社員である公認会計士の独占業務です。独占業務とは、資格保持者でなければ行うことができない業務 のことをいいます。
非監査証明業務とは、監査証明業務以外の業務で、顧客が抱える経営課題を解決するアドバイスを行っています。
IPO(株式上場)、M&A支援、内部統制構築支援など様々な業務があります。
コンサルティング業務は、公認会計士法第2条第2項に基づき行っていることから、一般に「2項業務」と呼ばれています。
顧客に対する経営戦略作成支援、事業承継計画など経営計画策定支援、海外進出支援など非常に広い範囲で顧客への支援を行っています。大手監査法人では、ERPなどICTシステム構築支援を行っているところもあります。
監査法人の区分については主に下記の3つに分けられます。
日本の4大監査法人とは、グローバルでBIG4と呼ばれる会計事務所と提携している監査法人を言います。
EY新日本、あずさ、トーマツ、PwCあらたの4有限責任監査法人のことです。
大手監査法人の定義「上場企業100社以上を監査し、かつ常勤の監査業務従事者が1,000人以上の監査法人」に該当します。
準大手監査法人とは、公認会計士・監査審査会の定義「大手監査法人以外で、比較的多数の上場会社を被監査会社としている監査法人」のことです。
仰星、PwC京都、三優、東陽の4監査法人に太陽有限責任監査法人を加えた5法人が該当します。
監査法人は、すべて日本公認会計士協会に加入しています。2019年3月現在では、日本公認会計士協会に入会している監査法人は235法人になります。
公認会計士・監査審査会の平成30年版モニタリングレポートによると2018年6月期に監査事務所を変更した上場企業は116社あります。
監査法人の変更を監査法人の規模別別にみると、平成 30 年6月期では、大手監査
法人から準大手監査法人又は中小規模監査事務所へ変更している傾向が、前年の調査に比べより鮮明になっています。
監査法人を変更した116社を日本公認会計士協会がヒアリングなどにより調査した結果。監査法人を変更した理由は次の通りとなっています。
監査法人を変更することは、重要な経営判断となります。監査法人を変更することによるメリット・デメリットを十分理解して判断する必要があります。
監査業務は、顧客と監査チームとの共同作業。そのため、相性があります。相性が悪いと相手方に不満がたまりストレスとなります。監査法人の責任者に改善やチーム変更を申し入れても受け付けてもらえない場合、監査法人を変更する選択肢もありです。監査は、その企業の適正化を評価・担保する業務。
ストレスや不満を抱えたままでは後々思わぬ問題が発生する可能性があります。
監査法人が提供するサービスに対して価格が高すぎると感じる場合も監査法人を変更するポイントです。新たな監査法人候補と十分な交渉を行えば、現行より監査費用が抑えられる可能性があります。
監査法人を変更する手間は結構面倒です。新しい監査人候補者をいくつか探して、それぞれの提案を聞き、変更の判断を行う必要があります。時には、前の監査法人の巻き返しなどもあり、より選択に悩む可能性もあります。
新しい監査法人を決めるとどうしても引継ぎ業務が出てきます。前の監査法人は、書類などの整備・提供だけで十分な支援をしてくれるとは限りません。事業内容や監査に必要な情報の在処など新しい監査法人に理解してもらうのは大変です。経理部門や監査部門など現場担当者の負担が増えることは覚悟したほうが良いです。
監査法人の変更は、周囲から会社への評価に大きな影響をもたらす可能性があり、重要な意思決定となります。
特に報酬の面だけでの比較により監査法人を変更することは危険です。まずは、今の監査法人と充分会話し、不満に思うこと、改善してほしいことを相互理解することが大切です。