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法人設立すると節税できる可能性がある?法人設立のメリット・デメリット

HUPRO 編集部
法人設立すると節税できる可能性があるところとは?

個人事業主と法人では、税金のかかり方が大きく変わるところがあります。一般的に法人設立のほうが、個人事業主でいるよりも節税という観点からはメリットが多くなります。この記事では法人設立による節税について主に解説し、また、法人設立の判断基準やメリットとデメリットについてもわかりやすくご紹介します。

法人設立で可能になる節税

税額を計算するには、まず課税所得を求めます。
 課税所得=収入-経費-各種控除

次に、課税所得に税率をかけて税額を求めます。
 税額=課税所得×税率

この2つの式から、「課税所得が減るか(=経費や控除が増えるか)、または税率が低くなるかすると、節税になる」ということがおわかりいただけるでしょう。

さて、法人設立すると、以下のような点において節税できる可能性があります。

所得税

個人事業主では、収入から経費を差し引いたものが所得となります。この所得に対して、超過累進課税方式による税率がかかることになります。

一方、法人では、会社から役員報酬が支払われるという形になります。役員報酬では、収入から経費を差し引いて、さらに一定割合を給与所得控除として差し引くことができます。これにより、課税所得を減らして所得税を節税できることになります。

欠損金の繰越控除

ある事業年度において、欠損金(ひらたくいえば赤字)が生じたとします。この欠損金は、翌年度以降に繰り越して、翌年度以降の所得に対して控除することができます。

この繰越控除が可能な期間は、個人事業主では3年、法人では10年です。3年ですと欠損金を使い切れない可能性もありますが、10年もあれば使いきれる可能性が高いでしょう。

消費税

個人事業主でも法人でも、創業当初の2年間(2期間)は、原則として消費税が免税されます。しかし、課税売上高が年間で1,000万円を超えると、消費税の課税事業者となります。

ここで、個人事業主として消費税の課税事業者になるときに法人設立すれば、課税事業者になるタイミングを1年間から2年間は遅らせることができます。つまり、最長で4年間、消費税を免税されることが可能なのです。

ただし、法人設立第1期の半年間の売上と給与等の金額がともに1,000万円を超える場合や、資本金が1,000万円以上の場合などでは、消費税が免税となりませんので注意が必要です。

経費

個人事業主では事業と家計の区別が曖昧なため、全てが事業用の経費としては認められないケースが多いです。家事按分できるのがせいぜいでしょう。

しかし法人になると、経費は基本的に事業活動のために支出されたものとみなされます。このため、自宅(兼事務所)や自動車に関する支出や保険料などが、広く経費として認められるようになります。

家族への給与

個人事業主では、青色事業専従者として税務署へ届出をした場合以外では、原則として家族に対して給与を支払うことができません。

ところが法人ではそのような制限がありません。法人の事業に従事しているという実態があれば、その対価として相当と認められる範囲内で、家族に対して給与を支払うことができます。

家族に所得を分散することで、法人経営者本人と家族の合計での所得税や住民税などを節税することが可能になります。

退職金

個人事業主の場合、従業員に対する給与や賞与は、一定の条件を満たせば経費とすることができます。しかし、退職金は経費にはできません。

いっぽう法人の場合では、原則として従業員への退職金を損金として計上することが認められており、法人所得を減らすことができます。

法人設立で可能になる節税

法人設立するかどうかの判断基準

以上のように、個人事業主よりも法人のほうが、明らかに税に関するメリットが多いです。法人設立することによって節税できる場合が多いでしょう。

しかし、法人設立さえすれば必ず手元に残るお金が多くなるとはかぎりません。法人設立したほうがよいかどうかの判断基準は、事業による所得がどの程度なのかという点に主に着目する必要があります。

理由は、所得税と法人税の税率の違いです。

個人事業主のときにかかる所得税は、課税総所得金額に応じて最低5%から最高で45%までの超過累進税率が適用されます。一方、法人のときは、中小法人の場合、所得金額800万円までは15%、800万円を超える部分については23.2%となっています。

そのため、所得が少ないうちは個人事業主としての所得税のほうが少ないのですが、ある閾値を越えると、法人としての法人税のほうが少なくなるのです。

所得金額以外にもさまざまな要素があるために一概にはいえませんが、おおむね500万円を越えたあたりが法人設立を検討するタイミングとされています。

法人設立のメリットとデメリット

最後に、法人設立した場合のメリットとデメリットについて、それぞれ列挙することで簡単にご紹介します。

法人設立のメリット

法人設立では、節税面以外にも以下のようなメリットが考えられます。
・対外的な信用力が増して仕事を受注しやすくなる
・金融機関から融資されやすくなる
・人を雇いやすくなる
・決算日を自由に設定できる
・事業承継がしやすくなる
・個人資産が差し押さえを受けなくなる

法人設立のデメリット

法人設立にはデメリットもないわけではありません。法人設立を検討する際にはこれらのデメリットがあることもふまえて慎重に判断する必要があります。
・法人設立には費用や手間がかかる
・法人住民税の均等割を支払わなければいけなくなる
・健康保険と厚生年金保険への加入が義務づけられる
・会社運営や税務処理などの事務負担が増える
・会社のお金を自由に使えなくなる

まとめ

法人設立での節税についてみてきましたがいかがでしたでしょうか。

以下がまとめになります。
・法人設立すると節税面でのメリットが複数ある
・事業利益500万円ほどが法人設立検討のタイミング
・法人設立にはメリットもデメリットもある

法人設立するかどうかは、節税面以外にもさまざまな側面を含めて比較考量した上で慎重に判断する必要があります。

法人設立した場合の税額シミュレーションなどは、専門知識のある会計事務所や税理士の仕事になるでしょう。

この記事を書いたライター

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