販売費及び一般管理費、通称販管費が多い企業は利益をなかなか出すことができません。また、原価との違いは簡単なようで意外と難しいものです。そこで今回は販管費と原価の違いと削減方法について解説します。
まず、販管費というのは、正式名称を販売費及び一般管理費といいます。販売費というのは物品を販売する際に発生する費用で、広告宣伝費や出荷する際の運賃等を言います。一般的に売上が増加すればするほど増加する費用となります。
一方で一般管理費というのは企業が存続するために必要な費用を言います。事務所の地代家賃や電話などの通信費等が代表例です。
営業利益は売上高から売上原価、販管費を差し引いて求められる利益を言います。よって、販管費が減少すればするほど営業利益は増加するので、利益を増加させたい場合はこの販管費を減少させることも手段の一つとなります。
では販管費と原価の区別はどうつけるのでしょうか。例えば人件費は販管費とするか原価とするか迷うところでしょう。
製造業を例にとると、製造部門の人件費は製造原価に、経理や営業などの製造に携わらない人件費は販管費にします。どちらともいえないような部門がある場合は、適当な割合で割り振ったり、どちらか一方に寄せてしまったり、会社によって扱いは様々です。
間違えやすいものとしては、運送費となります。こちらから製品を発送するための運送費は販管費に計上されますが、材料を仕入れるための運送費については原価に計上します。
仕訳の段階でそれぞれに分けておくことが大事ですが、もしも分けずに計上してしまっている場合は半分ずつ割り振ったり仮定をおいて割合で振り分けたりします。
では販管費を削減すると言ってもどのようにするのでしょうか。
まず、販管費を管理可能費と管理不能費にわけます。例えば広告宣伝費は広告を出さなければ減少できますので管理可能費です。一方で正社員の人件費はなかなか解雇ができないので管理不能費に分類します。
その上で、管理可能費のうち削減できるものについて削減した場合の費用削減効果とそれに伴う収益の低下を検証します。効果がみられると思った項目については随時削減をしていくこととなります。
ここで注意しなければならないのが費用を削減したからと言って将来的に利益が出るとは限らないことです。例えば広告宣伝費は削減することで1年間の利益は増大するかもしれませんが、売上高が徐々に減少して結果として損失が拡大してしまうかもしれません。
また、管理不能費と思っている項目でも時には管理可能費になることがあります。例えば事務所の地代家賃は管理不能費に分類されることが多いですが、意外と家賃の交渉をすることで下げられることもあります。
大家さんは高い家賃を設定していたいのも事実ですが、なるべく空室にならないように契約をしておきたいものです。よって、長く居る代わりに家賃を下げる交渉をすると意外と通る場合もあるので、ダメもとでも話してみるのも一つでしょう。
販管費の多くは固定費となるので、できるだけ圧縮しておけば利益体質となります。しかし、先ほどお話した通りあまり縮小しすぎてもかえって利益が低下することもあるのでバランスが必要です。
利益を出すために販管費を削減するのも一つですが、販管費を賄うために利益を出し続けるというのも一つの考え方です。
例えばソフトウェア制作会社であれば、売上はソフトウェア開発と継続した保守が主なものになります。ソフトウェア開発は期間が長い上にいつ売上計上できるかが未知数のこともありますが、保守については基本的に毎月発生します。
仮に、販管費と原価の合計額を上回る保守契約をしている場合は全くソフトウェア開発を行わなくても理論的に保守料だけで利益が計上できるはずです。こうすれば無理に販管費を下げなくても利益体質になると言えます。
ですので、このような継続して利益が出る保守契約をなるべく多く契約をしてソフトウェア開発については契約できればその分利益が上乗せできるでしょう。
販管費で頭を悩ませることの一つに来期の予算があります。まず、販管費のベースの予算は前期の実績をそのままスライドさせます。その上で、①売上に連動して発生する費用②売上に連動しないもののうち削減可能な費用③売上に連動しないもののうち、削減不可能な日用に分けます。
まず、売上に連動して発生する費用は、前期の売上との割合を計算して、当期の売上予算と掛け合わせて求めます。また、削減可能な費用については先ほどお話した通り削減目標から予算を作ります。削減不可能な費用については基本的にそのままとしますが、これも削減できるかどうかを考えて少しでも減らすことを前提として予算を組みます。
販管費は営業利益を増加させるためにとても大事な項目であると言えます。
販管費を吸収できる利益体質を作るとともに、そのような企業を目指した予算組みをしていくことが大切でしょう。