企業の取引がグローバル化していることから様々な事業を会社ごとに任せるため子会社を設立している会社が増えてきています。上場企業にはグループ企業全体の業績をひとつにまとめて報告することを義務付けており、その際に用いるのが連結決算になります。今回は、連結決算の内容と連結決算特有の内部取引、内部利益の相殺消去について公認会計士が徹底解説します。
連結決算とは、親会社と子会社から構成される企業集団を一つのグループとして、法人格が違う会社が個々に作成している財務諸表を合算して、グループ全体の財務諸表として作成する決算のことを指します。その時に作成される財務諸表のことを連結財務諸表と言います。また、連結決算を組む場合に次の点に留意が必要です。
連結会計年度は、通常の決算と同様で1年間と定められています。その中で連結決算日について、親会社の決算日が連結決算日となります。実務的には子会社の決算日と親会社の決算日を同じにするケースが多いと思います。
連結財務諸表を作成する場合には、同一環境下で行われた同一の性質の取引等については、親会社と子会社が採用する会計方針を原則として統一しなければなりません。ただし、合理的な理由がある場合や、当該採用の不一致について重要性が乏しい場合には、不一致のままで認められます。実務的には合わせるケースが多いかと思います。
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連結決算を行う子会社の範囲については次の2つの基準にて判定を行います。
持株基準とは、子会社の議決権を過半数所有する企業について連結の範囲に加えるものを指します。
子会社の議決権が過半数を所有していなくても、財務や経営の方針を実質的に支配していれば、連結の範囲に含めるというものです。例えば、役員の過半数について構成している場合などが考えられます。
なお、上記の2つの基準を満たしたとしても、連結子会社として連結決算の範囲に含めない場合があります。それは以下の要因になります。
・支配が一時的であると認められる企業
・連結することにより利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれのある企業
・重要性の乏しい小規模企業
大きく分けると、2つの工程になります。
連結決算については、各子会社が作成した財務諸表について合算します。
合算した財務諸表のうち、内部取引、内部利益の相殺消去を行います。
このうち、内部取引と内部利益の相殺消去について詳しく解説していきたいと思います。
連結財務諸表は、各子会社の財務諸表を合算することで作成しますが、最初の合算時点では親会社と子会社との取引、子会社同士の取引は各子会社の財務諸表に記録されたものがすべて合算されます。しかし、連結財務諸表上は、親会社と各子会社は1つのグループ単位として財務諸表を作成するため、連結グループ内での取引はすべて消去する必要があります。ここではよく出てくる内部取引及び内部利益の相殺処理について紹介いたします。なお、説明上子会社については持株比率100%を想定させていただきます。
親会社の子会社に対する投資(親会社側で子会社株式として計上)と子会社の資本(子会社側で資本金及び資本剰余金で計上)としているものについては、連結グループ内では、内部取引に過ぎないため、相殺する必要があります。仕訳上は、親会社が計上している子会社株式と子会社側の資本金及び資本剰余金を相殺消去することになります。
親会社が子会社に商品を販売した場合や子会社が親会社に販売した場合など、内部で売買を行った場合にはすべてを相殺する必要があります。この場合には売上高と売上原価を相殺する処理を行います。
商品売買を行った場合には、販売した側には売掛金(債権)が計上されており、仕入れを行った場合には買掛金(債務)が計上されております。前述の商品売買の相殺消去と同様にこの売掛金と買掛金についても相殺することになります。なお、このときに、債権側で貸倒引当金を計上している場合には、債権が消去されますので、同じタイミングで貸倒引当金の繰入も取り消すことになります。
連結グループ内で商品の売買を行う場合には、利益を付して行うことが多いと思います。例えば、親会社が子会社に利益を付して商品を販売した場合には、子会社が仕入商品を連結グループ外に販売した時に親会社が付した利益が実現したと言えます。しかし、子会社が親会社から仕入れたものを外部に販売することができずに在庫として残っていた場合には、親会社が付した利益は実現したとは言えません。この利益については、連結財務諸表を作成する上では未実現であるため、消去する必要があります。
連結決算については、グループ企業の決算をまとめ連結財務諸表を作成するために行う決算と紹介させて頂きました。上場企業では連結対象の子会社の数が数千社にのぼる企業もありますので、連結決算の実務ではグループ会社との資料のやりとりや、各企業との取引の把握などがとても大変な作業になります。今後は上場企業の有価証券報告書などで、連結対象の子会社の数などに注目してみるのもいいかもしれませんね。