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M&Aにおけるコーポレート・ファイナンスの意味を解説

HUPRO 編集部
M&Aにおけるコーポレート・ファイナンスの意味を解説

コーポレート・ファイナンスという言葉が実際には何を指しているのか、曖昧にしか理解していない方も多いのではないでしょうか。
今回は「コーポレート・ファイナンス」における3つの意味を紹介し、M&Aの文脈ではどのような意味で使われるのか、ノンリコース・ファイナンスとの対比について解説していきます。

コーポレート・ファイナンスにおける3つの意味

「コーポレート・ファイナンス」という言葉はよく使われる反面、複数の意味をもった概念でもあり、意識して理解しないと混同してしまいがちです。

1.広義の意味:企業における金融取引

コーポレート・ファイナンス(広義)は、1)どのような投資を行うか(投資理論)、2)投資のための資金をどのように調達するか(調達手法)、3)運用益をどのように配分するか(配当政策)、についての意思決定や業務全般を指します。

2.狭義の意味:企業の信用力をベースとした資金調達

コーポレート・ファイナンス(狭義)は、企業が自らの信用力をもとに資金を調達することです。この意味で使われるコーポレート・ファイナンスには、次の2つの方法が含まれます。

・デット・ファイナンス(有利子負債をもとにした資金調達)
・エクイティ・ファイナンス(株式発行をもとにした資金調達)

有利子負債による調達方法は、銀行からの借入と社債との2つに分けられます。銀行からの借入は、企業と投資家との間に銀行が介在していることから「間接金融」、社債と株式発行は介在者がいないため「直接金融」と呼ばれます。

3.最も狭義の意味:デット・ファイナンスの一種

2の文脈でコーポレート・ファイナンスが使われる場合は、有利子負債と株式発行による資金調達のどちらも含みますが、さらに狭い意味では、M&Aでの資金調達などの文脈において、デット・ファイナンスの方法のひとつという意味で使われることがあります。

その場合は、有利子負債による調達方法というジャンルのなかで、次のように対比して説明されることが多いです。

・コーポレート・ファイナンス
・ノンリコース・ファイナンス

M&Aにおけるコーポレート・ファイナンスとは

M&Aにおける資金調達の文脈でのコーポレート・ファイナンスは有利子負債による資金調達方法のひとつであり、買い手企業の総資産(信用力)をもとに資金を調達する方法です。

伝統ある方法であり、債権者にとっては企業の総資産を債務保証にできるメリットがあります。しかし、企業資産の調査が難しく時間がかかる、簿外債務や偶発債務などのリスクがある、複数の債権者が存在するなどのデメリットも存在します。

ノンリコース・ファイナンスとの比較

M&Aにおけるこのようなデメリットを避けられるよう発展した方法がノンリコース・ファイナンスです。特定の資産やプロジェクトから生まれる利益(キャッシュフロー)をもとに資金を調達します。M&Aにおいては、M&Aのために設立されたSPC(特別目的会社)や売り手企業の信用力をもとに資金を調達する方法のことです。
M&Aの主体は、事業会社などのストラテジック・バイヤー(戦略的投資家)と、投資ファンドなどのフィナンシャル・バイヤー(金融的投資家)とに分けられます。

前者は、M&Aによっていかに2社間のシナジーを生み出させるかに着目するため、コーポレート・ファイナンスを選択するのが一般的です。
これに対して後者は、買収する会社がどれだけキャッシュフローを生み出すかに着目します。売り手企業のキャッシュフローからどれだけ返済資金を得られるかを算出し、それを元手に資金を調達するため、ノンリコース・ファイナンスを選択します。
このように、売り手企業のキャッシュフローや総資産、または借入金などを元手に行う買収方法がLBO(レバレッジ・バイアウト)です。レバレッジは梃子(テコ)のことで、テコの原理のように少ない資金で大きな成果を出そうとする方法を指します。

ノンリコース・ファイナンスのひとつに、プロジェクト単体から発生するキャッシュフローをもとに資金を調達する「プロジェクト・ファイナンス」があります。
これらノンリコース・ファイナンスにおけるメリットは借り手側にとっては大規模な資金調達ができる点と、特定の事業ないし資産だけを責任財産とできるので、返済が滞ってもそれ以上の返済責務を負わない点です。

まとめ

コーポレート・ファイナンスには、1)企業における金融取引、2)有利子負債・株式発行など企業の信用力をベースとした資金調達、3)デッド・ファイナンスの一種、といった3つの意味があります。
M&Aの文脈においては3番目の狭い意味で使われ、ノンリコース・ファイナンスと対比して語られることが多いです。前者における、資産調査に時間がかかるなどのデメリットを回避する意味で発展したのが後者であり、それぞれの特徴の違いを押さえておきましょう。

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