一般的に、企業が出資や買収などによって他の企業を取得したときには決算締めにおいて連結決算も行われています。上場企業においては連結決算を行っているのが通常ですが、非上場企業においては行っていない会社も少なからず存在しています。今回は、非上場企業において連結決算の適用要否について解説していきます。
連結決算とは、主となる会社(親会社といいます)と親会社が支配を獲得している会社(子会社)や親会社が重要な影響力を行使できる会社(関連会社といいます)を含む、親会社を中心とした全体を一つの組織体として財務諸表・計算書類を作成するために行う決算作業のことを言います。
ここでいう財務諸表は連結財務諸表であり、計算書類は連結計算書類といいます。実務上では親会社の決算を締めた後に、連結決算を行うのが一般的です。連結決算では各子会社から必要な情報を収集する必要があるので、提出フォーマットの整備や収集期限などコントロールすることが重要となります。
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上場会社と非上場会社との違いについて説明していきます。簡単に言えば上場会社の裏返しが非上場会社ですので、上場会社について説明していきます。上場会社とは東京証券取引所に株式公開している会社のことをいいます。一般的な方は証券会社の証券口座を開設して東京証券取引所に上場している株式を購入しています。非上場会社はその逆で東京証券取引所にて株式公開をしていないということです。
連結決算について、法令で義務付けられる会社とそうでない会社がありますのでここで詳しく見ていきます。連結決算が法令で義務付けられる会社は、金融商品取引法が適用される会社です。金融商品取引法が根拠となっている内閣府例・連結財務諸表規則において連結財務諸表を作成する義務があることを規定しておりますので連結決算を行う必要があるといえます。
一方で金融商品取引法が適用されない会社においては、会社法に即して計算書類を作成します。会社法においては会計監査人設置会社、いわゆる監査法人の会計監査を受けている会社においては、連結決算を行って連結計算書類を作成することができるとされており、法令で求められていません(会社法444条)。しかしながら会社法444条3項において金融商品取引法の規定で有価証券報告書を提出しなければならない会社においては連結決算を行う必要がありますのでこの点、気を付けてください。
ここでは決算実務における決算スケジュールについて解説していきます。上記で説明した通り、連結決算を行わなければならない会社は金融商品取引法適用会社です。金融商品取引法適用会社は、有価証券報告書及び四半期報告書の開示が求められており、提出期限も明確に定められています。具体的には有価証券報告書は事業年度終了後から3か月以内とされており、四半期報告書は四半期終了後45日以内に提出することが義務付けられています。そのため期限内に有価証券報告書及び四半期報告書の開示ができるよう、決算スケジュールを設定する必要があります。
一方で金融商品取引法が適用されていない会社においては基本的に会社法の下で計算書類を作成することとなりますが、会社法において計算書類の作成・開示期限等は設けられていないことから、決算スケジュールについて比較的柔軟に計画することができます。計算書類の開示は主要株主や金融機関に向けて開示されるものであることから、提出日について協議したうえで確定し、それに基づいて決算スケジュールを計画していきます。実務上では、近年決算早期化のニーズが高まっていることからも金融商品取引法を適用していることを前提として決算スケジュールを計画している会社が増えてきています。
この記事では、連結決算とはなにか、上場企業と非上場企業の違いを踏まえたうえで連結決算の適用要否について説明していきました。連結決算の要否については、その会社が金融商品取引法適用会社であるかどうかが判断基準となりますのでその視点で連結決算の要否について検討していくといいでしょう。
金融商品取引法が適用されていない会社であってもよほど小規模であったり、連結決算を実施しなくとも親会社単体の計算書類に影響がない場合を除いては、実務上では連結決算を行っている会社が多数です。しかしながらそのような会社は実務上、多くありません。個人的には、連結決算を行い、企業集団全体としての計算書類を適切に作成できる決算体制の基盤を固めることをお勧めします。ゆくゆくは上場することも視野に入れている会社であればなおのことです。連結決算を行う上での費用対効果の面からも検討してみてください。
連結決算については他にもコラムを多数掲載していますので、ぜひご覧ください。
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