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M&Aのエキスパートになるための資格とは?その必要性と難易度

HUPRO 編集部
M&Aのエキスパートになるための資格とは?その必要性と難易度

日本では、全企業のうち99.7%が中小企業だそうです。そして、最近では中小企業が、事業承継手段として、M&Aを活用するようになっています。このように、今まではその対象が大企業であったM&Aも多様化しています。この記事では、そのM&Aのエキスパートになるために有用な資格について分かり易く説明をして行きたいと思います。

M&Aのエキスパートには特別な資格は不要

日本では、最近M&Aのすそ野が広がっています。その要因として、今まではその対象の多くが大企業であったものが、中小企業が積極的にM&Aを活用するようになって来たことが挙げられます。その結果、最近ではM&Aを取り扱うコンサルティング会社も増えています。

では、M&Aの仕事をするのに、何か資格は必要なのでしょうか?
結論からいうと、特別な資格は必要ありません
しかしながら、M&Aを取り扱うには、多様なスキル専門知識を必要とします。
まずは、その対象企業を理解するスキルです。そして、その企業のM&Aを成功させるための課題を正確に把握する必要があります。最後に、その企業をM&Aをしようとする企業との交渉が上手く行くように、価格や条件などを調整するスキルも必要となります。

このように、M&Aには幾つかのフェーズがあり、そのフェーズごとに、必要とする専門知識が違うので、M&Aのすべてをフェーズに対応するスキルや専門知識は、実に多種多様です。そのため、M&Aのエキスパートと呼ばれている人達は、何かしらの資格を持っている人が多いわけです。その業務の幅が広いため、役に立つ資格も幅広いのが特徴です。

M&Aのエキスパートになるための国家資格とその難易度

M&Aのエキスパートであることを直接的に裏付けする国家資格は存在しません。 しかしながら、M&Aで必要とする専門知識やスキルを裏付ける国家資格はいくつかあります。いずれも難易度が高い資格であり、その取得には相当な勉強が必要になるものばかりです。
以下、説明をしていきたいと思います。

① 公認会計士

監査業務や株式公開準備サポートなどで、あらゆる角度から企業を分析している公認会計士は、M&Aのエキスパートに一番近い国家資格であると言えます。 従来の大型M&Aであれば、Due Diligence(以下、DDと省略)と呼ばれる企業を精査するプロセスは必須であり、その担い手は公認会計士や監査法人であるのが一般的だからです。このDDの経験者が、M&Aをメインに手掛けるコンサルティング会社に転職をして、M&Aに必要な他のスキルや専門知識も勉強して、エキスパートになっているケースが多いです。

② 税理士

公認会計士と同様に、税理士もまたDD業務を担うこともあります。M&Aの場合、その企業価値を見積る際に、税務的な専門知識が、監査や株式公開準備サポートよりも重要になります。なぜならば、M&Aのスキーム次第で、税務上の取扱いが変わり、M&Aの価格に大きく影響することがあるからです。その意味から、M&Aに関する税務は、専門性が高く難易度が高いです。税理士になってから更に勉強が必要になります。

③ 弁護士

M&Aは、その成立のため最終的に契約書が必要になります。M&Aを手掛ける会社は、その契約書の雛形を複数持っているのが一般的ですが、個別のケースに応じて契約書は修正されるのが一般的です。また、DDをする際に、特許権や商標権など法律で保護されて権利が重要になるケースが多く見られます。その場合には、DDに弁護士がメンバーとして参加したり、又は法務DDとして別にDDを行ったりすることもあります。この意味で、弁護士もM&Aのエキスパートに相応しい難易度の高い国家資格といえます。

④ 司法書士

M&Aが成立すると、必ず登記手続きが必要となります。そのM&Aのスキーム次第で、複数の登記手続きが必要となり、その段取りの判断に高度な法律知識を必要とすることもあります。従って、司法書士もM&Aのエキスパートになり得る国家資格であると言えると思います。しかしながら、実際には、司法書士として独立をして、M&Aのクロージングとなる登記手続きを集中的に勉強して専門性を高めて、その業務を請負う人が多いです。

M&Aのエキスパートのための民間資格

一方で、民間資格では、幾つかのM&Aのエキスパートを裏付ける直接的な資格があります。これらの資格は、運営する団体が、多岐に渡るM&A業務に必要となる難易度が高い専門知識やスキルを前提に、明確な資格定義を設定しています。一部の資格は、前述した国家資格保有者であることを条件とするものもあります。しかしながら、資格が、M&Aの実務経験を裏付けるものなので、転職の際には資格を保持していることが有利です。以下、説明をしたいと思います、

① 事業承継・M&AエキスパートとM&Aシニアエキスパート

この2つの資格は、M&A仲介実績で定評がある㈱日本M&Aセンターと金融財政事情研究会が共同で企画運営しているものです。
「事業承継・M&Aエキスパート」は、受験資格に制約がありません。ですから、この資格を最初に取得して、その後、M&Aシニアエキスパート認定講座を受講して、修了すると「M&Aシニアエキスパート」の認定試験を受験出来ます。一定の成績を収めると、「M&Aシニアエキスパート」の資格を与えられます。シニアエキスパートの認定試験は、かなり難易度の高い専門知識と実務経験を必要とします。

「事業承継・M&Aエキスパート」は、試験に合格すれば誰でも取得することが出来ます。試験の内容は、M&Aに必要な税制、法制、会計など幅広い分野から出題されています。従って、勉強をして合格する資格というよりも、M&Aの実務をやっている人が、必要な専門知識が身に付いていることを証明する意味で取得する資格と言えます。
そして、その上位資格である「M&Aシニアエキスパート」は、「事業承継・M&Aエキスパート」の資格を持っている人の他、公認会計士や税理士等の国家資格を有する者、又は金融機関従事者なども受験資格を与えられています。この上位資格は難易度が高く、M&Aの実務経験もあり、専門知識も充分であることを証明する資格であると言えます。

② M&Aスペシャリスト資格

この資格は、一般社団法人日本経営管理協会 (JIMA)が運営管理を行っているM&A業務のスペシャリストを認定するものです。この資格の最大の特徴は、3年毎に、その更新手続きを行っていることです。M&Aスペシャリスト資格を取得すると、3年毎に、最近のM&A関連法制や税制などに関する資格「更新セミナーを受講しなければなりません。

M&Aの実務を行うのに必要な法制や税制はほぼ毎年何かしらの改訂がされています。従って、この「M&Aスペシャリスト資格」を保持しているということは、常に最新の専門知識に裏付けされたM&Aエキスパートであることを証明できます。この資格は、取得と維持の両方に相応の勉強を必要とする資格であると言えます。

③ 事業承継士

この資格は、弁護士、公認会計士、中小企業診断士などの資格を持っている人が、M&A分野の中で特に難しいと言われている事業承継に関する知識を持っていることを証明する民間資格です。事業承継士は、一般社団法人事業承継協会が運営管理をしており、定期的にセミナーなどを行い、時代の趨勢に応じて必要となる専門知識を常にアップデート出来る環境を整えています。事業承継士になるには、事業承継士資格取得講座を受講する必要があります。この講座を受講するためには、事業承継士になるのに相応しい実務経験と専門知識があることが要求されます。従って、この資格取得者は、事業承継に関する実務と専門知識を兼ね備えたエキスパートであり、相応の実務経験を要求されるので、資格取得はかなり難易度が高いと言えます。

まとめ

M&Aの業務は、多様な専門知識を必要とするだけではなく、そのフェーズにより異なったスキルを必要とするところが最大の特徴です。企業価値算定の段階では、その企業の経営幹部から正しい情報を引き出すコミュニケーションスキルが必要ですが、実際にBuyサイドとSellサイドの間に入った調整をする時には、落としどころを引き出す高度な駆け引きも必要となります。そして、何よりも、すべてのフェーズにおいて、正しい専門知識に基づき適切なアドバイスを提供することが必要になります。
従って、M&Aのエキスパートになるためには資格は必須ではないとはいえ、自ら磨いた実務経験や専門知識を証明できる民間資格はかなり有用であると言えます。そのため、この記事で説明をした民間資格は、どれもそれなりに難易度は高いと言えます。

また、M&Aに関わる業務は多岐に渡るので、特に資格がなくてもチェレンジすることは出来ますが、やはり、一定レベルの専門知識と類似性のある実務を経験していることが有利であることは間違いありません。
その意味では、何かしらの国家資格を持っている人の方が相対的に有利であることは事実です。特に、かなりのフェーズの業務の類似性がある公認会計士の資格は有利であると言えると思います。

この記事を書いたライター

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