「税務調査の連絡を受けたがどうすれば良いか」「追徴課税されると聞くがどの程度の確率なのか」など、税務調査に関する不安は少なくありません。手間・時間をかけて税務処理をしたのに、後から詳しく調べられることにネガティブな気持ちを抱くのは当然です。
今回は税務調査や追徴課税について、発生確率や対応策など分かりやすく解説していきます。いい加減な対応をしていると厳しいペナルティが課されるのでご注意ください。
税務調査とは税務署が税金の申告書などを確認しに来る手続のことを言います。一度税務調査が入ったことがある個人や企業の方々は、数年に一回は来るイメージを抱いている人が多いのではないでしょうか。
税務調査の結果、申告漏れなど申告書の誤りが見つかれば、追徴課税の発生可能性があります。そのため、税務調査に対してネガティブなイメージを持つ人がほとんどでしょう。
不定期に行われる税務調査ですが、実施されるのは9月~11月が多いのが実情です。というのも、9月~11月頃は比較的税務署が暇な時期だからです。
1月~3月 | 年末調整や確定申告の繁忙期 |
4月~6月 | 3月が会計年度末の企業が多い |
7月~8月 | 税務署の人事異動の時期 |
9月~11月 | 調査先の選定~税務調査のタイミング |
12月 | 年末年始に向けて忙しくなる |
任意調査・強制調査のいずれの方法でも、国税通則法にしたがって3~5年分の決算書類などがチェックされます。聞き取り内容と帳簿・証票類の内容が一致しなければ不信感をもたれるだけなので、かならず誠実に対応しましょう。
税務調査の結果は、大きく下記の3つに分類することができます。それぞれ詳しくみていきましょう。
1.申告是認
2.修正申告
3.更正処分
申告是認とは、確定申告の内容に誤りがなく提出した確定申告書が認められたという意味です。申告の修正が必要ないため、追徴課税は発生しません。
申告是認の通知を受けたときに、「きちんと確定申告書を作成して良かった」と心から思える瞬間ではないでしょうか。
修正申告とは、税務調査の結果、修正箇所がみつかり、確定申告書の提出者が自ら修正申告を行った場合のことを言います。
修正の分だけ税金の額が増加するため、修正申告の場合は追徴課税が課されることになります。
更正処分とは、修正申告と同様に修正箇所が見つかった場合の話です。修正申告との違いは、その修正を自らが行うのか、税務署が強制的に行うのかの違いです。
更正処分の場合、修正申告では発生しなかった延滞税などの加算税が課される可能性が高まります。
実際にどれだけの確率で追徴課税が発生するのかを紹介します。
実は、税務調査の結果、追徴課税が発生する確率はだいたい70~80%程度と言われています。そのため、「税務調査が10回行われたら7~8回は追徴課税を課される」ということです。かなり多いように感じるかもしれません。ただ、法人の場合には取引量が多いので、多少の指摘を受けるのは当然のことでしょう。
一方で、税務署の立場からすれば人件費をかけて税務調査を行ったのだから何もなしに帰ることは難しいという実情もあります。そのため、完璧な税務申告書を作成したとしても血眼になって一つひとつの取引を確認してくるかもしれません。
たとえば、税務調査に慣れている人は、「明らかなミスだが影響額の小さいものを税務申告書に入れておき、税務調査の際に税務署へお土産がわりに指摘させる」といった笑い話もあるほど。そのくらい、税務調査が入ったら何かしらの指摘が入ることが通常だと理解しておきましょう。
それでは、追徴課税の具体的な内容を紹介します。申告漏れ・申告忘れの場合には、不足分の税金を納める必要がありますが、不足分に加えて支払い義務が発生するのが、いわゆる追徴課税と称される「附帯税」です。
追徴課税として課される内容としては次の5種類があるので、それぞれについて解説します。
1.過少申告加算税
2.無申告加算税
3.不納付加算税
4.重加算税
5.延滞税
過少申告加算税とは、期限以内に提出した申告納税額が少なかった場合に課される加算税の一種です。本来納付すべき金額と実際の納付額の差額について、10%に相当する金額が過少申告加算税として支払い義務を課されます(なお、追加で支払う税金が50万円を超える場合には、15%で算出される点にご注意ください)。
なお、税務調査前に自主的に修正申告をすませておけば、修正申告加算税は課されません。
無申告加算税とは、申告期限までに確定申告を行わなかった場合に課されるペナルティのことです。税額の15%で計算されます。税務署の調査を受ける前に自主的に申告をすれば5%に軽減されますが、税額が50万円を超える場合には20%に上乗せされます。
不納付加算税とは、天引きした源泉徴収税を翌月10日までに納付しなかった場合に課されるペナルティです。税額の10%で計算されます。なお、税務調査前に自主的に納付すれば5%に軽減できます。
重加算税とは、加算税のなかでもっとも重いペナルティとして課されるものです。二重帳簿や書類の破棄・改ざん、売上げの計上漏れなど、悪質な不正事実がある場合を対象にしています。過少申告の場合には35%、無申告の場合には40%で計算されます。
延滞税とは、期限までに納付されなかった税金に対して、期限翌日から実際の納付日までの日数に応じて加算されるペナルティのこと。利息・遅延損害金の意味合いをもつものです。
延滞税の算定税率は、延滞期間が2ヵ月を超えるかどうかで、次のように区別されます。
・納付期限を2ヵ月経過するまで:原則年利率7.3%
・納付期限を2ヵ月以上経過してから:原則年利14.6%
(ただし、延滞税特例基準割合の関係から、令和2年12月31日以前の延滞税利率については期間によって別途基準割合が定められているので、税理士などの専門家にお問い合わせください。)
参照:「No.9205 延滞税について」国税庁HP
延滞税は滞納日数に応じて日々どんどん負担が重くなるので、できるだけすみやかに延滞状況を回復するのがポイントです。税務署担当者や顧問税理士などにご相談ください。
それでは税務調査の結果、追徴課税が発生してしまった場合、いつ支払えば良いのでしょうか。
税務署からの連絡により、期日までの現金一括納付が必要です。基本的には確定申告の際と同様の流れとなります。
ただし、一括で払うのが難しい場合には交渉によって分割払いなどに変更してくれる可能性もゼロではありません。担当者の判断によるものなので、真摯な対応で交渉に応じてください。
税務調査は急に実施が決定され、避けることはできません。ただ、通常のビジネスを行っていると、急な追徴課税の支払いは資金繰りに重要な悪影響となる場合もあります。当然ながら、支払いが難しいケースもあるでしょう。
しかし、追徴課税を払えないまま放置をしてしまうと、滞納処分によって財産などが差し押さえられる可能性もあります。強制執行手続きに進んでしまうと、今後の事業展開にも問題が生じかねないでしょう。
したがって、資金繰りが厳しい旨など、追徴課税を支払えない場合には、かならず税務署には連絡を入れておきましょう。
それでは、税務調査が入った結果、いろいろ指摘されてしまった事項は全て修正申告しなければならないのでしょうか。結論、そうではありません。税務署の指摘は絶対ではなく、きちんと根拠を確認し、条文ベースの判断に戻るようにしましょう。
例えば旅費交通費などを経営者への寄付と判定されてしまった場合、旅費交通費が経費に落ちず、経営者自身の所得税にも影響を及ぼします。また、一度そのような指摘を認めてしまうと次回以降、同様の取引を行った場合は寄付金として処理せざるを得ません。
そのため、ビジネス上どうしても必要な取引であれば、その旨をきちんと説明し主張するべきなのです。
税務調査に対してポジティブな気持ちを抱く人はいないはず。ですから、税務調査を避けるためには、普段から正確な税務申告を行うのが必須となります。
そして、日常的な税務申告を適正に行うためには、自分で税務にかんする知識を増やすこと・税理士などの専門家に相談しておくことがおすすめ。たとえば、税務調査が入る前に、税務署からの指摘を受けそうな論点を分析したうえで、質疑応答集などを考えておきましょう。
ビジネスは長期的に行うもの。事業が終了するまでは税務署との関係は続きます。したがって、追徴課税などが発生しないように、また、発生したとしても丁寧に対応することによって、税務署との良好な関係を築いておきましょう。