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監査報告書の文例や意味について解説

公認会計士 大国光大
監査報告書の文例や意味について解説

企業は1年間監査を受けると監査報告書を監査人から受領することとなります。ではこの監査報告書、作る側に回ったとしたらどのように作成したらよいのでしょうか。今回は、監査報告書の文例やそれぞれの意味について説明します。

監査報告書の文例

監査報告書を一から作る人はいません。どんな監査報告書も元ネタがあります。
監査報告書の文例については、日本公認会計士協会が「監査報告書の文例」というものを出しているので、それを参考にしながら作っていきます。
参考:監査・保証実務委員会実務指針第85号「監査報告書の文例」の改正について/日本公認会計士協会

ちなみに、2020年3月期より監査報告書の書き方そのものが変わっています。この改正は定期的に行われる為、最新の記載例を常にアップデートしておく必要があります。

タイトルや宛名

まず、監査報告書のタイトルは「独立監査人の監査報告書」となります。これは、企業の内部の人が作ったのではなく、独立した第三者が作った監査報告書ということを意味しています。

また、基本的に取締役会宛となります。これは、取締役が作成した財務諸表に対して監査報告書を提出するためです。ただ、会社法の計算書類の監査報告書を作成する際には、監査役宛の監査報告書を別途作ることがあります。

この他、監査した人の所属法人、肩書、署名押印が必要となります。ただ、電子媒体に載せる場合には署名押印は難しいので、パソコンで名前を書いて「印」の字を横に書いておき、署名捺印されたものについては会社が別途保存ということが多いです。

また、監査報告書日付は監査業務が終了した日以降となっています。これは、監査報告書を提出した日以降の出来事については監査していないという意味も込めているので、意外と重要な意味を持っています。

監査意見の文例

2020年3月期より、監査報告書の冒頭に監査意見を記載することとなりました。これは、最も大事なことは最初に言うという外国文化を日本にも取り入れた結果となっています。

監査意見では、いつの年度の財務諸表を監査したか、どのような種類の財務諸表を監査したかをまず記載します。連結財務諸表であるか、個別財務諸表であるか、キャッシュフロー計算書を含んでいるかどうか等です。

最後に、財務諸表は全体として適正であったか、不適正であったか、意見を差し控えるか等が記載されますが、基本的には全体として適正という結論が記載されることがほとんどです。

監査意見の根拠の文例

監査意見の根拠として、どんな監査の基準に従って監査をしたか、独立性は保たれているか、監査証拠を十分に入手したかを記載します。
これは、闇雲に監査報告書を出しているわけではなく、適法に監査が終了していることを表しています

監査上の主要な検討事項の文例

この内容は2020年3月期より早期適用、2021年3月期より強制適用される事項となります。
これは、諸外国では先行して実施されているKAM(Key Audit Matters)とも言われ、日本語では長文式監査報告書とも言われます。

今まではどんな会社でもほぼ同じような監査報告書が並んでいたのですが、監査人がどんな項目にリスクがあると判断し、どのような監査手続をしたかが不明確であったため、投資家保護を目的として導入された事項となります。
文例自体はまだあまり豊富ではないので、これから実務が進んだときにまとまってくる項目であると言えるでしょう。

財務諸表に対する経営者、監査役、監査人の責任の文例

財務諸表に対する経営者、監査役、監査人の責任の文例

これは二重責任の原則と言って、財務諸表作成の責任は経営者にあること、経営者の職務執行に関する監督責任は監査役にあること、財務諸表の監査に関する責任は監査人にあるが、細かい虚偽表示までは責任を負えないことを示しています。

この文言は、万が一財務諸表に重要な間違いがあったとしてもまずは会社が責任を取り、監査人は監査の責任のみ追うということを明言しています。

これは、粉飾決算があった時に「監査人は何しているんだ!」というバッシングがあるかもしれませんが、そもそも財務諸表の作成責任は会社にあるので、まずは会社を批判してから監査人の責任を考えましょうというものになります。
最初から監査人の責任ばかり追及されたら誰だって監査したくなくなりますよね。

利害関係の文例

最後に、会社グループと監査人には特別な利害関係がないということを記載します。
当たり前の話なのですが、重要なことですし、投資家からしても利害関係のない人の監査報告書ということを再認識できるため、あえて記載するようになっています。

その他の文例

その他、監査人が強調したい事項があれば追加で文言が記載されます。
例えば期末日以降監査報告書作成までに会社に火災が起きたり、重要な取引先が倒産するなどの事項があったりした場合、会社は財務諸表に注記を行います。
この注記について注意喚起したい時などに「強調事項」として同じ文言を監査人が記載することとなります。

まとめ

監査報告書の文例は、まず全部コピーしてから自社に合うように内容を変えていくようにしていきましょう。年度によって監査報告書に記載すべき文言は変わってくるため、常に最新の監査報告書の文例に基づいて記載することと、前年の監査報告書がある場合は違いがないかどうかをチェックして、別の担当者にもう一度チェックしてもらうようにしましょう。

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この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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