労働者の健康と安全を守るため、企業が労働者に定期的に健康診断することは労働安全衛生法によって義務化されています。労務担当者としては、対象の従業員に漏れなく健康診断を受けてもらわなくてはなりません。本記事では、健康診断の対象者と検査内容について解説します。
「労働安全衛生法」では、事業者は労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければならないこと、そして労働者も、健康診断を受ける義務があることが定められています。
出典:厚生労働省リーフレット:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~
まずは就職・転職の際に受診する健康診断の他に、年に1度の健康診断を受けることが一般的です。また、労働安全衛生規則によって定められた業務に従事する労働者などは、もっと短い頻度や配置替えの際に健康診断を受ける必要があります。
年に1度という時期はいつとは決められていませんが、できれば毎年同時期に受けてもらうほうが、業務計画を立てやすく、管理もしやすいです。労務管理担当者で所定の時期を定めておきましょう。
前項で、「一般健康診断」の対象となる労働者の欄には「常時雇用する労働者」とありましたが、それではパートタイマーの場合はどうなるのでしょうか?
厚生労働省の通達(平成19年10月1日基発第1001016号通達)によると、短時間勤務者が一般健康診断の対象となるのは、次の①と②のいずれの要件をも満たす場合としています。
①期間の定めのない契約により使用される者であること
なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年(※)以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年(※)以上使用されている者。
※特定業務従事者健診<安衛則第45条の健康診断>の対象となる業種は6ヶ月安衛則第45条の健康診断>
②その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること
パートタイマーであっても、週の労働時間が正社員の3/4以上ある場合です。例えば1日8時間で週に40時間の所定労働時間が正社員の労働時間であれば、30時間以上働いているパートタイマーが該当します。週5日として6時間ですね。
しかし、①を満たす労働者については、3/4ではなく、1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施するのが望ましいとされています。
派遣社員の一般健康診断は、派遣先ではなく派遣元で行います。派遣先で行うのは、有害業務従事労働者についての健康診断のみです。
労働安全衛生法等で事業者に義務付けられている健康診断の費用は、法により義務付けられているものです。そのため、健康診断の費用は企業負担となります。
法で定められた範囲を超える人間ドックなどについては、原則的に受診者の負担です。なかには福利厚生で補助を出していたりする企業もあります。
また、受診にかかる時間は、業務遂行と直接かかわりがあるものではありませんので、その時間の賃金をどうするかは労使協議によって定めることになりますが、円滑な業務遂行を考えた場合は、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう。
平成30年4月から、健康診断における血液検査の一部と尿検査の診断項目の取り扱いが一部変更になっています。
診断項目 | ※診断項目自体に変更はありません。 |
1 | 既往歴及び業務歴の調査 |
2 | 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 |
3 | 身長(★)、体重、腹囲(★)、視力及び聴力の検査 |
4 | 胸部エックス線検査(★)及び喀痰検査(★) |
5 | 血圧の測定 |
6 | 貧血検査(血色素量及び赤血球数)(★) |
7 | 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)(★) |
8 | 血中脂質検査( LDLコレステロール、 HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(★) |
9 | 血糖検査(★) |
10 | 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) |
11 | 心電図検査(★) |
出典:「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の診断項目の取扱いが一部変更になります(平成30年4月から適用)」厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 リーフレット
変更された内容は、より実際の健康状態をはかるのに適していると言われる検査方法です。
LDLコレステロールは一般的に悪玉コレステロールと言われるものですが、動脈硬化の原因になるとされているもので、より精度の高い方法で行われるべきだと指示されました。
また、血糖検査についてはHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は過去1~2ヶ月前の血糖値を反映しますので、当日の食事や運動など短期間の血糖値の影響を受けません。そのため、糖尿病であるかどうかを判断するには、HbA1cだけでなく、空腹時血糖値の値も総合的にみて診断する必要があります。また、血清クレアチニンは腎機能の異常を判断するための指標の一つです。
冒頭で、健康診断は実施と受診の義務があると述べました。労働安全衛生法第120条では、違反の際には、「50万円以下の罰金に処する」と罰則も定められています
健康診断の実施については、会社で集団健診を実施するほか、会社指定の病院で受診させたり、従業員各自に健康診断を受診させてその結果を提出させたりするなどの方法があり、いずれでも上記の項目を満たすように検査を受けていれば大丈夫です。
しかし、労働者側が健康診断を受診拒否することは、会社の業務活動の妨げになります。特に健康診断の重要性を従業員側が自覚していないために通常業務を優先したり、逆に健康状態に問題があるのを知られたくないなどして、検査に行かなかったりということも良く問題です。
こうしたことにならないよう、健康診断については、就業規則に盛り込み、定期的に啓発をおこなうなどして、受診徹底をはかりましょう。