親会社と子会社の間で行われる取引、あるいは子会社同士の間の取引など、いわゆる関係会社間取引は、その他の第三者との間でされる取引と比較して、取引価格を比較的自由に設定できます。そのため、不当に税金を操作できないような規制が存在します。今回は、グループ間取引を行う際の注意点について解説していきます。
いわゆる100%グループ内の法人には、平成22年度の税制改正からグループ法人税制が適用されることになりました。100%グループ内の法人とは、完全支配関係のある法人であり、同一の者が法人の発行済株式等の全部を直接もしくは間接に保有する関係として政令で定める関係、または同一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係を言います。
出典:完全支配関係と連結完全支配関係の意義|国税庁HP
グループ法人税制は、完全支配の関係にある法人同士を一体としてとらえて課税を行うという考え方によっています。ですので、資本金の大小に関係なく、すべての法人に対して強制的に適用されます。
以下、グループ法人税制のポイントを挙げていきます。
完全支配関係にある法人間の一定の資産の譲渡について、その譲渡した事業年度の所得の金額の計算上、譲渡損益を繰り延べることになりました。その対象となる資産は、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含む)、有価証券、金銭債権および繰延資産であり、売買目的有価証券および譲渡直前の帳簿価額1,000万円未満の資産は除かれます。
なお、この繰り延べた譲渡損益は、当該譲渡損益調整資産を譲り受けた当該他の内国法人において当該譲渡損益調整資産の譲渡、償却等の一定の事由が生じた場合には、当該譲渡損益調整資産を譲渡した法人においてその計上を行うこととなります。
内国法人が当該法人との間に完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金については、その全額を損金不算入とすることになりました。それと同時に、当該他の内国法人が受けた受贈益についてはその全額を益金不算入とされます。
内国法人が行う現物分配のうち、被現物分配法人がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人のみであるものを適格現物分配とし、適格現物分配による資産の移転をした場合は、当該適格現物分配の直前の帳簿価額による譲渡をしたものとする制度が創設されました。
この場合において、被現物分配法人の資産の取得価額は当該帳簿価額に相当する金額とされ、また、被現物分配法人が適格現物分配により資産の移転を受けたことにより生ずる収益の額は、各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入せず、当該帳簿価額に相当する金額を利益積立金額に加算することとされます。
出典:資本に関係する取引等に関する改正
完全子法人株式等に係る受取配当金等について益金不算入制度を適用する場合には、負債利子控除を適用せず、受取配当等の額の100%が益金不算入になります。
以上、グループ法人税が適用される場合のポイントを挙げてきましたが、それ以外の親子関係を始めとするグループ間取引について、注意点を見ていきましょう。
まず、100%グループ内以外の、グループ間取引(以下、関係会社間とします)の資産の譲渡取引はどうでしょうか。親子会社間での資産の譲渡取引は、時価よりも著しく低い価格で譲渡した場合に、売却する側には時価と取引価格の差額を寄附金、一方の買い取る側には、時価と取引価格の差を受贈益として認定する必要があります。寄附金には損金算入限度額があるため、一部が損金不算入になります。
続いて、関係会社間の資金貸借取引についてですが、親子会社間では無利息で資金貸借を行う場合はよくあると思います。しかし、こちらも不当な税金逃れを防ぐために、関係会社間の資産の譲渡取引同様、貸付側は第三者間の利率に基づき計算した利息分の寄附金認定、借入側は受贈益として認定されることが多いです。
また、寄附金には損金算入限度額があるため、一部が損金不算入になります。ただし、債務超過の子会社を救済するために無利息で貸付けるといった場合等、経済的利益を供与する側から見て、再建支援等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることが明らかであれば、その再建支援等を行うことに相当な理由があると認められますので、寄附金の認定がされません。また、子会社等の倒産を回避するためにやむを得ず行うもので、あくまで合理的な再建計画に基づく場合も同様です。
今回は、グループ間取引を行う際の注意点について解説してきました。近年の企業ガバナンスを重視する流れから、今後も新しい税制が順次整備されることが予想されますので、日頃から最新の情報を確認しておくことが大事だと思います。