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適格合併とは?メリットやデメリットはある?

HUPRO 編集部
適格合併とは?メリットやデメリットはある?

企業結合を行う際には、会計処理はもちろん、税制面でも注意すべき事項は多くあります。適格合併、あるいは非適格合併というワードは耳にする機会も多々あるものの、それらは具体的にどのような制度なのでしょうか?今回は、適格合併の制度とメリット、デメリットについて解説していきます。

適格合併を端的に説明すると?

適格合併とは、つまり合併のうち、合併時に法人税が課されない合併のことです。いわゆく税制適格条件といわれる一定の条件をクリアすれば適用されます。
そもそも合併とは、2つの会社が1つになることを言いますが、消滅会社から存続会社への資産等の移転は、税務上は原則として時価による資産等の譲渡として扱われます。しかし、適格合併が適用されれば、資産および負債を税務上の帳簿価額のまま引き継ぐことができます。つまり、資産および負債の移転にかかる譲渡損益が繰延べられることになります。
また、適格合併の場合、被合併法人で生じた未処理欠損金額は合併法人で生じた欠損金額とみなして、合併法人に引き継がれます。

適格合併が適用させる際の条件とは?

以下の条件のもので行われた合併の場合に、適格合併制度が適用されます。(法人税法2十二の八、令4の3①~④)

(1)まず、被合併法人と合併法人との間に完全支配関係(つまり持ち株割合100%)がある場合です。ただし、新設合併の場合には、ある被合併法人と他の被合併法人との間に完全支配関係がある場合となります。

(2)続いて、被合併法人と合併法人との間に支配関係がある場合の合併のうち、次の要件のどちらにも該当する場合です。
① 被合併法人の従業者のうち、概ね80%以上が合併法人の業務に従事することが見込まれていること
② 被合併法人の合併前に行う主要な事業が合併後に合併法人において引き続き行われることが見込まれていること
適格合併とは、あくまでM&Aのうち純粋に組織を分割、あるいは統合する場合に適用されるという趣旨になります。

(3)最後に、被合併法人と合併法人とが共同で事業を行うための合併で、次の要件の全てに該当する場合です。
① 被合併法人の主要な事業と合併法人のいずれかの事業とが、相互に関連性を有すること
② 関連するそれぞれの事業の売上金額、従業者数、被合併法人と合併法人のそれぞれの資本金の額若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと。または、被合併法人の特定役員のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかとが合併後に合併法人の特定役員となることが見込まれること
③ (2)の①及び②の要件
④ 合併により交付される合併法人又は合併親法人のうちいずれか一の法人の株式であって支配株主に交付されるもの(対価株式)の全部が支配株主により継続して保有されることが見込まれていること

こちらについても、今回のM&Aにより資産を移転する前後で、実質的な経済に変更がないと考えられる場合に、税制適格となるという趣旨に基づいています。つまり、あくまで組織再編の機動性を確保するための施策なので、組織再編の前後で全く異なる事業を行うとなると、その再編が税金対策のためなのではないかという懸念が生まれてしまうからです。
ただし、合併の直前に被合併法人の全てについて他の者との間に当該他の者による支配関係がない場合、または合併法人が資本若しくは出資を有しない法人である場合には、①から③までの要件に該当する場合で足ります。

適格合併のメリットとは?

上記で説明した通り、適格合併は繰越欠損金を引継ぐことができるので、その点は非常に良いメリットと言えます。つまり、被合併法人の繰越欠損金の有効活用を目的としているのであれば、適格合併を選択すべきです。
また、合併法人は被合併法人の資産および負債を簿価で引き継ぐことができるため、資産に多額の含み益がある場合に、課税の繰り延べができるという点がメリットになります。
企業グループ内の合併であれば、適格要件に適合する場合が多いので、このメリットを生かしやすいと言えます。

非適格合併のほうが望ましい場合もあるのか?

適格合併は上記のようなメリットがありますが、では非適格合併のほうが有利な場合もあるのでしょうか?
例えば、次のような場合には、非適格合併のほうがメリットがあると言えるのです。
まず、被合併法人に含み損を抱える資産があり、合併前事業年度では営業上利益がでそうな場合に、非適格合併であれば、被合併会社の資産の含み損と営業上の利益を相殺することができます。ただし、適格合併の場合であっても、合併法人と被合併法人の間に支配関係発生日から5年後の日まで、あるいは組織再編事業年度開始日から3年以内に当該含み損が実現した場合は、当該譲渡損の損金算入が制限されます。
そして、合併法人に多額の繰越欠損金、被合併法人は少額の繰越欠損金がある場合は、適格合併であっても、被合併法人の繰越欠損金を引継ぐには、一定の要件(みなし共同事業要件)を満たす必要があります。つまり、適格合併であれば、必ず欠損金を自動的に引継ぐことができるというわけではないのです。また、繰越欠損金の引継制限は、被合併法人だけではありません。合併法人の保有する繰越欠損金にも、実は利用制限が課せられている点に留意しなければなりません。

まとめ

今回は、適格合併の制度とメリット、そして意外な盲点について解説しました。状況によって、選択すべきかどうかを慎重に考慮する必要があると言えるでしょう。

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