資本金の額によって税金を納める金額は変化してしまいます。そのため経営においては資本金「等」の額も重要な役割を果たしてきます。今回はこの資本金等の額と、節税方法について解説します。
始めに、資本金と「資本金等」の違いを説明します。資本金とは皆さんもなじみがある通り、株主に払い込まれた金額のうち、登記された金額を言います。一方、資本金等とは、資本金に一定の金額を加減算した項目を言います。
加減算する項目は次の通りです。
・資本剰余金(払い込まれた金額のうち資本金にならなかった部分)
・過去、資本金から減少した部分
・資本金のうち、利益準備金や利益剰余金から組み入れた部分
・過去、資本の払い戻しを行った場合の減資した資本金額
・自己株式の取得金額(資本金から減算)
よって、貸借対照表の資本金と資本金等とは一致しません。難しい取引をしていないのであれば、資本等は、資本金と資本剰余金から自己株式を差し引いた金額となることが多いです。(過去に減資などしていない場合)
では、資本金等の額によってどんな税金が変化するのでしょうか。
まず、法人税としては寄附金の損金算入限度額が変化します。計算例は割愛しますが、資本金等の額が大きければ大きいほど損金に算入できる寄附金の額が増加します。また、みなし配当の計算にも資本金等の額は影響します。
また、事業税としては、外形標準課税の計算結果に影響をもたらします。外形標準課税は「資本金」が1億円超の会社が適用となりますが、そのうち資本割については資本金等の額に応じて税額が決定されます。
この他、住民税の均等割額については、資本金等の額と従業員数によって決定されます。資本金等の額が大きければ大きいほど均等割も大きくなります。
寄附金の損金算入額を除けば、基本的に資本金等の額が小さければ小さいほど節税になります。では、どのようにして資本金等の額を減らすことができるでしょうか。
最も間違えやすいのは「帳簿上減資をすればよいのでは」というものです。減資をしても貸借対照表上の資本金は減りますが、資本金等の額は変わりません。ただし、外形標準課税を提供するかどうかの判定は「資本金」が1億円超であるかどうかですので、減資によって資本金が1億円以下となるのであればそこだけはメリットもあります。
ポイントは、最もわかりやすい資本金等の有償減資を行うことです。これでは「あれ?さっき帳簿上減資をしても意味がないって言ったばかりでは?」と思われるかもしれません。
帳簿上減資をするのは「無償減資」と呼ばれるもので、特に税額計算に影響を与えません。しかし、有償減資、つまり減資の際に株主に金銭を与える場合などは法人税法上も減資とみなされ資本金等の額が減少します。
これに似た方法としては、自己株式の取得も含まれます。自己株式を取得することで資本金等の額が減少するので、有償減資のように様々な手続をしなくても済むため節税のために自己株式を取得する企業もたくさんあります。
非上場の株式を評価する手法の一つに、類似企業比準方式というものがあります。類似企業比準方式とは、会社の規模や業種から株価を算出する方式で、主に相続税の評価の際に使われる方法です。類似企業比準方式の計算の中には、1株当たりの資本金等の額を用いる場面があります。よって、資本金等の額によって株価が変化することとなります。
ここでよく問題となるのは、資本金等の額を上回る自己株式を取得してしまった結果、マイナスの資本金等の額となってしまった場合です。これは、例えば上場会社等で設立時よりも株価がとても上がってしまったことにより、払い込み時の金額よりも取得金額の方が大幅に上がってしまい、資本金等の額から自己株式を差し引くとマイナスとなってしまうことによります。
資本金等の額がマイナスになってしまうと計算式の途中では株価もマイナスとなってしまいますが、あとで資本金等の額をかける計算が出てくるため、マイナスとマイナスを掛け算することで結果としてプラスに戻ります。よって、マイナスが途中で出てきても気にせずに計算をすればよいこととなります。
ちなみに、別の株価算定方法である配当還元方式においても資本金等の額が計算上出てきます。実務上問題となるのが、外部の株主からは貸借対照表を見ても資本金等の額の正確な数値がわからないということです。この点、税務申告書についても株主には基本的に閲覧する権限があるため、申告書を見せてもらうか、会社の担当者に資本金等の額を教えてもらうことが必要となります。
資本金と、資本金等の額は概念が異なることを解説しました。特に外形標準課税制度適用の資本金1億円超と、資本割の資本金等の額の計算は混同しやすい為、計算上どちらを使うかというのは毎回確かめる癖をつけておきましょう。