損益分岐点については実務でも良く使いますが、実は簿記の試験でも良く出題されます。そこで今回は簿記の問題でよく見かけるような損益分岐点の計算について解説します。
損益分岐点は簿記の問題でよく見られる内容ですが、簿記2級で出題されることとなります。簿記2級には商業簿記と工業簿記がありますが、工業簿記で出題されます。
工業簿記は簡単な企業の原価管理や予算管理が出題され、その中で損益分岐点を計算させる問題が良く出ます。
損益分岐点の論点はCVP分析とも呼ばれ、Cost-Volume-Profit分析の略で、
《費用》・《生産量》・《利益分析》を指します。
では、なぜ簿記で損益分岐点を学ぶのでしょうか。
企業は大きくなればなるほど営業部門、製造部門、調達部門などに分かれます。営業部門ではいかに売上を伸ばすかを考え、製造部門はいかに効率よく製品を製造するかを考え、調達部門はいかに調達コストを下げるかを考えます。
しかし、製造部門や調達部門がいくらコスト削減をしたとしても営業部門が薄利多売をしていては利益も出ませんし、営業部門がいくら販売したとしても製造部門や調達部門がコスト削減をしなければ利益は出ません。
よって、それぞれの部門が連携して企業全体の利益を増大させなければならず、そのベンチマークとして損益分岐点分析が行われるのです。
損益分岐点を分析する、つまりCVP分析では企業の利益構造を知るのに使えます。
タイトルにある通り、売上数量が倍になれば利益は倍になるでしょうか。答えはノーです。次の例を見てみてください。
では次は数量を2倍にするのではなく単価を2倍にした場合はどのようになるでしょうか。先ほどの例を踏まえて計算します。
なんと、元々の利益1,000円と比べて利益は11倍の11,000円となりました。もちろん現実的には単価のみ2倍にすることは難しいですが、数量を倍に増やしても2,000円しか利益は増えませんでしたが、販売単価を2倍にすると利益は10,000円も増加しました。
このように、単純に売上高を2倍にするといっても単価を変えるか数量を変えるかで結果が大きく異なります。
では、先ほどの内容を損益分岐点の考え方で考察します。損益分岐点の計算式は次の通りとなります。
損益分岐点売上高=固定費÷売上利益率
ここで、単純に売上の数量を増やしても売上利益率は変化しませんので、損益分岐点売上高自体は変化しません。一方で販売単価を上げるということは売上利益率が上がることを意味しますので、損益分岐点売上高が下がります。
つまり、損益分岐点売上高を下げながら売上高を上げることとなるため、販売単価を上昇させることはとても利益体質に変える効果があるのです。
では、同じような例で変動費と固定費どちらを動かした方がより企業にとって効果的なのでしょうか。
このように、固定費を100円低下させただけでは利益は100円しか増加しませんが、1個当たりの変動費を100円低下させれば利益は1,000円増加することとなります。事業をしている上で固定費に目が向きがちですが、変動費を変化させることの方が結果的に利益増加につながりやすいということが分かったのではないでしょうか。
簿記では損益分岐点の問題が良く出てきます。今回お話したように、元々ある売上、変動費、固定費からどこかを変化させることで利益がどれだけ変化するかという問題はよく見かけます。これは実務でも良く使われる計算ですので、わからなくなったらこのように実際の問題に当てはめて素早く計算できるようにしておきましょう。
《関連記事》