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同族会社とは?定義とメリット・デメリット、税制規定を解説

HUPRO 編集部
同族会社とは?定義とメリット・デメリット、税制規定を解説

同族会社とは?わかりやすく解説します

日本の会社の97%は同族会社。家族経営を行っているイメージがありますが、経営陣が他人同士でも同族会社と扱われることがあります。今回は同族会社の概要や、メリット・デメリット、税制面での注意点について見ていきましょう。

同族会社とは何か?

同族会社とは、わかりやすく言うと株主等の上位3人もしくはグループが経営権を握っている会社です。同族会社以外の会社は、非同族会社と分類されます。

家族経営=同族会社ではない

創業家一族が経営を支配するファミリービジネス、家族経営の会社も同族会社になるケースもありますが、法人税法においては「同族会社」は「同族経営」と必ずしもイコールではありません。例えば、経営権を持っている3人が、企業のオーナーとその友人、さらには他人であっても、要件を満たせば「同族会社」となります。

もう少し細かく見てみましょう。法人税法上の同族会社は会社の株主の3名以下、そしてこれらと特殊な関係にある個人または法人が議決権の50%以上を保有している会社のことをさします。

「特殊な関係にある個人または法人」とは、以下の8つのケースです。

個人

1. 株主等と親族の関係である人(配偶者、三親等以内の姻族、六親等以内の血族)
2. 株主等との事実上の婚姻関係となる者
3. 株主等の使用人
4. 株主等から受ける金銭やその他の資産によって生計を立てている者
5. 2.から4.までに掲げる者の親族でその者と生計を一にする者

法人

6. 会社(投資法人を含む。)の株主等(その会社が自己の株式(投資口を含む。)又は出資を有する場合のその会社を除く。)の1人とその者の同族関係者が支配している他の会社
7. 6.の会社を判定の基礎に入れて判定した場合に、支配している他の会社
8. 6.及び7.の会社を判定の基礎に入れて同じく支配している他の会社
なお、経営するとは、発行済株式や50%超の出資を所有している他の会社のことを指す。

特定の関係性にある個人、あるいは法人に会社の経営権が集中しているような状態を「同族会社」と言っているのですね。

特定同族会社とは

特定同族会社とは、同族会社のうち、1株主グループによる持株割合等が50%を超えている会社。 同族会社よりさらに支配力が強そうですね。

ただし、資本金1億円以下の会社については、資本金5 億円以上の会社の100%子会社や、 保険業法に規定する相互会社などを除き、要件を満たしても特定同族会社には該当しないこととされています。つまり、中小企業はこの要件を満たしていても特定同族会社にはなりません。

日本は同族会社・特定同族会社だらけ!

国税庁が毎年度行っている出典:「会社標本調査」
によると、単体ベースで日本企業の96.4%は同族会社、0.2%が特定同族会社。非同族会社の割合は3.5%しかありません。
連結ベースでも62.4%が同族会社、6.3%が特定同族会社となっています。非同族会社は31.3%です。同族会社じゃない企業を探す方が難しいくらいです。

同族会社のメリット

同族会社が多いのには理由があります。まずはメリットから見てみましょう。

意思決定がスムーズ

同族会社は、3名以下の人または法人が会社の経営権を握っています。
そのため、トップダウンで意思決定が早くなる点が最大のメリットです。「多くの人の意見を聞く」こと自体は素晴らしいですが、みなが納得する経営方針というのはありえません。調整に時間がかかってしまうと競合他社に抜かれてしまうこともあります。会社の経営改革には、迅速な意思決定が欠かせません。

株主の声に左右されない経営ができる

株式が分散していると、市場で買い占めた投資家により、敵対的買収が行われる可能性があります。同族会社の場合は、株式買収によって経営権が奪われるリスクは少ないです。また、より多くの利益を求める株主の声に左右されず、長期の計画に基づいた経営を進められます。

後継者育成がスムーズ

事業承継において、後継者の育成はもっとも重要な課題です。同族会社の場合は、あらかじめ「次期社長は長男」といった道筋を決めておけば、社長交代時のトラブルを回避できます。当人にも、次期社長候補の経営者としての教育とキャリア形成を行うことが可能です。

資産を増やせる

経営陣だけのメリットですが、会社が拡大するに従って、経営者へのリターンが大きくなります。また、IPOで莫大な財産を得られることが多いです。結果、経営陣の資産を増やせます。

同族会社のデメリット

良いことばかりではありません。同族会社にはデメリットも多くあります。

経営を私物化し不祥事を招きやすい

同族会社は、経営陣が良識のある判断を行い、フェアな評価をしている場合は問題ありません。しかし、家族や身内で経営しているとどこかに綻びが出やすくなります。そうそう一族がみな優秀ということはないからです。

咎める人がいないので、会社のお金を生活費や遊興費に私的流用したり、お気に入りを要職に着けるなど、公私混同が起こることがあります。モラルハザードが起きやすいのです。

例えば、西武グループでは創業家の堤家がながらくグループの実権を握っていました。しかし有価証券報告書虚偽記載などの不祥事が発生。現在は、持株会社の西武ホールディングスが設立されています。
スルガ銀行も、創業者一家である岡野家による同族経営でしたが、2018年にシェアハウスの投資トラブルを起こし、多くの不適切融資の横行が表面化。金融庁より関係の清算を求められた岡野一族は役員を退陣し、株式も手放しています。

後継者問題が起きやすい

同族会社の場合、後継者は社長や役員の親族であることが多くなります。要職も関係者で占められていることが珍しくありません。

後継者が優秀な人材なら良いのですが、問題は、ふさわしい人材がいなかったり、後継者争いがおこったり、能力が足りない人が代表になってしまうことです。
適切な後継者ではない場合、会社の業績が落ち込むばかりでなく倒産の恐れもあります。

最近では、大塚家具の親子対立も記憶に新しいです。相続と事業承継が複雑に絡むため、相続問題により経営者一族が「争族」になりがちなのも、同族会社のデメリットといえるでしょう。

税制特例がある

同族会社は経営者と一部の人間が経営権を握ります。会社の私物化にも通じますが、節税と称した不正行為が行われやすいため、税法で特別規定が設けられています。
次の項で詳しく説明しましょう。

同族会社における3つの法人税法の特別規定とは?

同族会社は、非同族会社とは異なる法人税法の規定の適用を受けます。規定は3つあります。

行為または計算の否認

法人税法132条1項では、同族会社である納税者の行為または計算の否認規定を定めています。

同族会社は、主に経営者の身内によって支配されています。そのため、「節税」と称した租税回避が行われやすいです。
「租税回避」とは、通常ではありえない取引形態を採用し、法の穴を潜り抜けて税金から逃れることを指します。例えば「不動産管理料」と称して多額のお金を家族に支払ったり、土地を著しく低額で賃貸したりなどは租税回避行動です。

税法が想定していない形式なので「合法」ではあります。しかし同族会社による租税回避行動が著しい場合は、税務所長によって法人税の課税所得や法人税額が決定することが可能です。つまり、申告した内容に限らず、正常な行為または計算に引き直して法人税が更正されて課税されます。

参考:国税不服審判所 公表採決事例「同族会社の行為または計算の否認」

役員または使用人兼務役員の範囲の特例

同族会社では「みなし役員」は、職制上の地位や職務があったとしても使用人兼務役員になれません。

「みなし役員」とは、登記されていなくても以下の要件を満たす人は役員とみなされるという法人税法の決まりです。

・法人の使用人以外の者で、その法人の経営に携わっている者
・同族会社の使用人のなかで一定の所有割合を満たし、その会社の経営に携わっている者

非同族会社の場合、みなし役員に支払われた給与や賞与は、役員と同じ扱いとされます。

しかし、同族会社の場合はみなし役員でも使用人として扱います。したがって、みなし役員に支払った過大な報酬や賞与は必要経費になりません。

特定同族会社の留保金課税

特定同族会社では、各事業年度の留保金額が留保控除額を超える場合には、通常の法人税とは区別して課税するという規定です。これを「留保金課税」といいます。

利益を留保することによる過剰な租税回避を防止するために定められました。

参考:国税不服審判所 公表採決事例「同族会社の留保金課税」

まとめ

同族会社の定義とメリット・デメリットを解説しました。日本の企業は、96.4%も同族会社であるとは驚きですね。世界的に見ても高い数値です。ここでは、法人税法の同族会社は
必ずしも家族経営を指すとは限らない。上位3株主の持ち株比率をあわせて50 %を超える会社が同族会社の定義であること。同族会社にはメリットも大きい分デメリットもあり、不利な税制もあることを覚えておいてください。同族会社か特定同族会社という判定は、複雑な計算が絡みますので、税理士など専門家に相談しましょう。

この記事を書いたライター

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