士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

資本準備金を配当することはできる?注意点は?

HUPRO 編集部
資本準備金を配当することはできる?注意点は?

一般的に会社の株主への配当は、剰余金を原資として行われます。配当とは、会社が得た利益を、株主へ支払うものだからです。では、資本準備金を配当の原資にすることはできるのでしょうか?またその場合の注意点は何でしょうか?今回は、資本準備金を配当したい場合の方法について、解説していきます。

資本準備金とは?

まず、資本準備金について説明します。資本準備金は、会社法で以下のように定義されています。

資本金の払込み又は給付に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができる。資本金の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。
(会社法第445条第2項3項)

つまり、設立時に資本金として1,000万円を調達できた場合、実際に資本金として計上するのは500万円にして、残り500万円を資本準備金として残すことができるのです。これは、資本金を減らそうとする場合には、登記変更の手続きと、原則株主総会の特別決議が必要となり、迅速な実行が難しいからです。

また、すべてを資本金にするのではなく半分を資本準備金にすることで、資本金の額を抑えることができます。このことによって得られる特典がいくつかあります。例えば、資本金が800万円以下であれば、法人税の軽減税率が適用されます。

資本準備金を配当することはできるのか?

では、資本準備金を減額し、配当の原資に回すことはできるのでしょうか?結論から言えば、剰余金に移すことで、配当が可能です。

資本金や資本準備金は、あくまで株主から得た資金であるため、それをそのまま配当に回すことは禁じられています。そのため、資本準備金を減少させるには、原則的に以下の手続きをして、剰余金に移転することが必要です。手続きの一つは準備金の減少に係る株主総会の決議、そしてもう一つは債権者保護手続きです。

資本準備金を配当のため減少させる際の手続きとは?

まず、準備金を減少するための株主総会ですが、次の事項を株主総会の普通決議によって決定します。

1.減少する準備金の額
2.減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額
3.準備金の額の減少の効力発生日
(会社法第448条1項)

ただし、下記の場合には、株主総会は必要ではなく、取締役の決定(取締役会設置会社は取締役会の決議)によって決定することができます。

準備金の減少と募集株式の発行を同時にする場合において、準備金の減少の効力発生日後の準備金の額が、当該効力発生日前の準備金の額を下回らない場合
(会社法第448条3項)

次に、債権者保護手続きについて説明します。債権者保護手続きは、下記の事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告する方法によって行います

1.準備金の額の減少の内容
2.最新の貸借対照表又はその要旨が掲載されている場所
3.債権者が一定の期間内(1ヶ月以上)に異議を述べることができる旨
(会社法第449条2項)

資本準備金を配当のために剰余金に移転する場合は、登記は不要となります。資本準備金は資本金のように登記の必要な科目ではないからです。このような理由からも、資本金をそのまま配当のために減資するよりは、資本準備金から剰余金に移転して配当するほうが、迅速に手続きを進められるというメリットがあります。

資本準備金を配当のため減少させる際の手続きとは?

資本準備金から振り替えた剰余金を配当するには?

続いて、剰余金を配当するには、株主総会の普通決議によって次の事項を定める必要があります。

1.配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額
2.株主に対する配当財産の割当てに関する事項
3.当該剰余金の配当がその効力を生ずる日
(会社法第454条1項)

ただし、取締役会設置会社の場合、下記の2つの場合には、株主総会は不要になります。

1.年に1回の中間配当
2.取締役の任期1年、会計監査人設置、監査役会設置と他の条件を満たしている株式会社

まず1.についてですが、

取締役会設置会社は、1事業年度の途中において1回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当をすることができる旨を定款で定めることができます。
(会社法第454条5項)

これを中間配当といいます。
また、2.については、

次の条件を全て満たす株式会社は、剰余金の配当につき取締役会が定めることができます。
(会社法第459条1項)

1.取締役の任期が1年(以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日まで)である
2.会計監査人を設置している
3.監査役会を設置している
4.定款に「剰余金の配当につき取締役会で定めることができる」旨の記載がある
5.会社計算規則第155条の要件を全て満たしている

この場合は、年に何回でも配当することが可能です。ただし、資本準備金から資金を移転して配当する場合は、頻繁にある場合とは言えないかもしれません。

まとめ

今回は、資本準備金の配当に関する手続きについて解説してきました。一度剰余金に移転することで、配当が可能になるということを踏まえて、必要な手続きを欠かさないようにしましょう。

士業・管理部門に特化!専門エージェントにキャリアについてご相談を希望の方はこちら:最速転職HUPRO無料AI転職診断
空き時間にスマホで自分にあった求人を探したい方はこちら:最速転職HUPRO
まずは LINE@ でキャリアや求人について簡単なご相談を希望の方はこちら:LINE@最速転職サポート窓口

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:コラム・学び

おすすめの記事