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所得割とは?どんな時に出てくる用語?

公認会計士 大国光大
所得割とは?どんな時に出てくる用語?

給与をもらっている人であれば一度は所得割という言葉を聞いたことがあるでしょう。しかし、実際に所得割って何?どうするとどれだけ税金が上がるの?という疑問についてはなかなかわからないことも多いでしょう。そこで、今回はそんなわかっているようでよく知らない所得割について現役公認会計士が解説していきます。

住民税で用いられる「所得割」

毎年6月になると給与をもらっている人は住民税決定通知書というものを受け取るでしょう。その明細をよく見てみると、「所得割」や「均等割」といったワードがあります。これらは住民税を決定するために用いられるものです。まずそれぞれの違いと計算方法について説明します。

所得割と均等割とは

住民税の計算は、前年度の6月~5月の間の所得税の源泉徴収票や確定申告書をもとに市役所で計算されます。住民税は都道府県民税と市区町村税の2つからなっています。その計算の基礎となるのが所得割額と均等割額です。

所得割

初めに均等割について、基本的にどんな人でもかかる税金ですが、収入があまりにも少ない人は免除されることもあります。税率は以下のようになっています。

均等割の基本税率

都道府県民税 1,500円
市区町村税 3,500円

合計 5,000円の定額
※自治体により、税額が異なる場合あり

所得割

一方、所得割というのは、その人の前年度の所得に応じて課される税金となります。対象となる所得は給与所得だけでなく、不動産所得等の他の所得も合算されます。前年の所得が多ければ多いほど住民税が高くなりますので、前年度の所得が高くて今年度の所得が低い場合は留意が必要となります。
税率は以下の通りです。

所得割の基本税率

都道府県民税 4%
市区町村税 6%

合計 所得の10%
※前年分の所得に対して課税
※自治体により、税額が異なる場合あり

法人住民税でも用いられる!

先ほどは個人の住民税に関する所得割を紹介しましたが、法人に対しても住民税の所得割が課されます。
法人住民税の計算方法は、いわゆる法人税に基づいて計算されます。法人所得税を課税標準として税率を掛け合わせることで所得割が計算されます。また、個人の住民税と同じように均等割が課されます。個人との違いは、法人の資本金の金額によって変わるというところです。資本金額が大きくなればなるほど均等割額が増えますし、小さければ小さいほど均等割額も減少します。

また、法人住民税の所得割で個人の住民税と異なるところは今年度の法人税額によって変わるというところです。個人の住民税は前年の所得金額に応じて決まっていましたが、法人住民税では当期の利益に応じて支払わねばならないので留意が必要です。

税率の計算方法は以下の通りです。

参考:東京都主税局 法人事業税・法人都民税

法人事業税にも所得割がある

法人には、法人税、住民税以外にも事業税を支払う義務があります。事業税は原則として所得割で構成されています。
法人税の別表4に記載されている所得金額に応じて所得割額が変化するため、所得割額と言われます。

参考:国税庁 別表四 「所得の金額の計算に関する明細書」

なお、資本金額が1億円を超える法人の場合は事業税については外形標準課税が適用されます。外形標準課税では、所得割以外にも付加価値割や資本割が付加されます。
付加価値割とは、報酬給与額、純支払利子および純支払賃借料並びに単年度損益の合計額に対して税額が決定されます。
また、資本割については、資本の額が大きければ大きいほど金額も増加します。
それでは所得割の計算はというと、外形標準課税適用外の法人と同じように所得金額に対して税率を掛け合わせて計算されます。しかし、外形標準課税適用外の法人よりも所得割に対する税率は低いものとされています。

税率の計算方法は以下の通りです。

参考:東京都主税局 法人事業税・法人都民税

このように事業税が規模の大小によって異なる理由は、大規模な法人であるにも関わらず万年赤字決算を提出する会社があまりにも多かったため、規模が大きければある程度の税額負担はできるであろうという国の政策によります。

所得割額の違いによって実効税率が異なる

先ほどお話しした通り、外形標準課税適用法人とそうではない法人とで事業税の所得割の税率が異なることをお話ししました。
ここで、法人の実効税率は法人の利益に対して乗じることで負担税額が計算されます。外形標準課税適用法人のほうが所得割は低いため、中小企業よりも大法人のほうが実効税率は低くなるという現象が起きます。

よって、保険料の支払いや保険金の受け取りの際に計算される節税効果なども中小企業のほうが恩恵を受けているようにとらえられます。しかし、実際は所得割以外の事業税は販売費及び一般管理費に振り替えられているためそれらを総合的に勘案して税負担額を計算しなければなりません。

所得割とふるさと納税の関係

ここまで所得割額の内容について解説しましたが、最近流行りのふるさと納税との関連性はどのようになっているのでしょうか。
よく、ふるさと納税をすると実質2,000円の負担で返礼品がもらえるといううたい文句で急速に普及していきました。では、どのような計算式でこのような仕組みになっているのでしょうか。

ふるさと納税をすると、各自治体に寄附をした金額に応じて所得税と個人住民税が減額される寄付金控除として取り扱われます。具体的には所得税にかかる分と、住民税にかかる分、住民税の特例分の三つに分解して考えられます。

まず、所得税に関して、寄付金から2,000円を控除して金額を所得税計算の所得から差し引かれます。よって、所得税法上ふるさと納税は税額控除ではなく所得控除として取り扱われます。この差し引かれた所得に対して税率がかけられます。

一方、住民税計算では寄付金から2,000円を差し引いた金額に10%を乗じた金額が税額控除されます。さらに、特例分として、所得割額の20%を限度に住民税が控除されます。これらの計算を総合すると、結局のところ寄付金額-2,000円分が何らかの税金が控除される計算となっています。

計算方法は以下の通りです。

参考:総務省 ふるさと納税ポータルサイト

まとめ

いかかでしたでしょうか。所得割とはなんなのか、住民税の計算方法やふるさと納税の仕組みを通してお伝えしてきましたが、実際に自分が納める税金に関する話ですので、理解しておくことは大切かもしれません。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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