士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

減資とは?資本金を減資するメリット・デメリットなど詳しく解説!

HUPRO 編集部
減資とは?資本金を減資するメリット・デメリットなど詳しく解説!

会社を設立する際によく相談があるのは「資本金はいくらにしたら良いですか?」というものです。また、会社経営を行っていくうえで資金が必要となり増資をした後にやはり減資したいと考える時もあります。
そこで、今回は資本金を減資するメリットとは?適正な資本金額はいくらかという点について解説します。

資本金とは

まず、資本金とは株主が会社に出資をした金額を言います。ただし、株主が会社に出資した金額のうち、資本準備金等に振り替えられる分もありますので、正確には株主が会社に出資をした金額の一部と言えます。

以前は株式会社を設立するのに資本金は1,000万円以上と決められていましたが、現在はそのような制限はない為、極端な話1円でも会社は設立することができます。しかし、設立費用だけで数十万は必要となるため、1円での会社設立をしたとしても追加で会社に貸付をしなければならないため、あまり現実的ではないかもしれません。

資本金の減資とは

資本金は設立以降ずっと同じ金額でなければならないかというと、そうではありません。株主から追加で出資を受けた場合資本金は増えますし、逆に株主に出資を返還する時などは資本金を減らすことがあります。それぞれについて、増資、減資と呼びます。
では、このうち、資本金の減資とはどのようなものがあるのでしょうか。

有償減資

減資のうち、まずご紹介するのが有償減資です。
資本金を取り崩し、そこから生じる資本剰余金から株主に配当をすることを言います。通常の配当は利益剰余金から行われますが、有償減資では資本金を財源として株主に配当を行うため、株主からすれば出資の払い戻しと同じ意味を持ちます。

無償減資

この他に、無償減資という言葉があります
有償ではなく「無償」ということなので、株主に金銭を支払うことなく資本金を減らすこととなります
。具体的には、会社の経営状態が悪化して債務超過(欠損)が発生した時に資本金でその穴埋めをするという行為となります。この時、特段金銭のやり取りをするわけではなく帳簿上のやり取りとなります。

【有償減資】、【無償減資】共に資本金の額を減らすということは会社にとって重要事項ですので、株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)が必要となります。

減資を行う手順については下記のコラムで詳しく紹介しています。

無償減資

資本金を減資するメリット

では、資本金を減資するメリットにはどのようなものがあるでしょうか。

税金が安くなる

減資を行うことで、節税をすることが出来ます。法人税の計算においては算出される法人税額を少なくするための様々な特例があります。この特例は一定の資本金以下の会社を対象としています。よって節税のための方法として減資が採用されます。
具体的には下記の資本金額に該当をした場合に、それぞれの特例が適用をすることが出来ます。

資本金を1億円以下にする場合

資本金1億円以上の場合は大企業、1億円以下の場合は中小企業に該当をし、優遇税制は大企業に比べ中小企業の方が数多く適用をすることが出来ます。

①法人税の軽減税率を適用することが出来る
普通法人の法人税率は、資本金1億円超の会社の場合は23.20%、1億円以下の会社の場合は800万円までの課税所得については15%、800万円を超える課税所得については23.20%が適用をされます。

②中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を適用することが出来る
資本金1億円以下の中小企業は、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を適用することが出来ます。
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例とは、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得した場合に、全額を損金に算入することが出来るというものです。

③欠損金の繰越還付を適用することが出来る
資本金1億円以下の中小企業は、欠損金の繰戻還付を適用することが出来ます。
欠損金の繰戻還付とは、青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合において、欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻して法人税額の還付を請求することが出来るというものです。

④法人事業税の軽減税率を適用することが出来る
普通法人の法人事業税率は、東京都においては資本金1億円超の会社の場合は400万円までの課税所得については3.75%、400万円を超え800万円までの課税所得については5.665%、800万円を超える課税所得については7.48%が適用をされます。1億円以下の会社の場合は400万円までの課税所得については3.5%、400万円を超え800万円までの課税所得については5.3%、800万円を超える課税所得については7.0%が適用をされます。

⑤法人住民税の軽減税率を適用することが出来る
普通法人の法人住民税率は、東京都23区においては資本金1億円超の会社の場合は10.4%、1億円以下の会社の場合は7.0%が適用をされます。
出典:東京都主税局

資本金を3,000万円以下にする場合

①中小企業投資促進税制の税額控除を適用することが出来る
中小企業投資促進税制の税額控除とは、新品の機械及び装置等のうち特定経営力向上設備等に該当するものの取得等をして、これを国内にあるその中小企業者等の営む指定事業の用に供した場合には、取得価額の7%又は10%相当額の税額控除が認めらるというものです。

資本金を1,000万円以下にする場合

①新規法人設立後の2事業年度において消費税の納税の免除を受けることが出来る
新規法人は消費税の課税事業者に該当をするかの判断における基準期間が無いため、2事業年度は原則として消費税の納税の義務がありません。
新規法人の消費税については下記のコラムもご参照ください。

②法人住民税の均等割額が減額される
普通法人の法人住民税の均等割の額は、東京都の特別区のみに事業所がある場合は、資本金1,000万円超の会社の場合、従業員が50人以下では180,000円、従業員が50人超では200,000円とされています。資本金1,000万円以下の会社の場合、従業員が50人以下では70,000円、従業員が50人超では140,000円とされています。

累積赤字を補填することが出来る

減資を行うことで、累積赤字を補填することが出来ます。具体的には貸借対照表上の資本金の額の一部を繰越利益剰余金に振り替える処理を行うことで、資本金の残高を減らし、繰越利益剰余金の残高を増やすことです。

繰越利益剰余金は損益計算書から生じる毎期の黒字又は赤字の積み重ねにより構成されています。恒常的に赤字が発生している場合には、その貸借対照表に表示される繰越剰余金は大きくマイナスの額が表示されています。

株主等の投資家は、繰越利益剰余金が大きくマイナスである会社に対しては、利益から生じる株主への分配金が期待をすることが出来ないことから、投資対象として好印象を持ちません。

また銀行等の債権者は、繰越利益剰余金が大きくマイナスである会社に対しては、資金の弁済能力に期待をすることが出来ないことから、融資対象として好印象を持ちません。

このように繰越利益剰余金が大きくマイナスであることは、会社の貸借対照表上の経営指標としては悪い印象を与え、このマイナスを緩和させるための方法として減資が採用されます。減資をすることによって将来的な配当に備えることもできますし、すぐに配当をすることも場合によってはできるでしょう。

監査対象から外れる

現在の会社法では、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社は公認会計士の監査を受ける義務があります。
公認会計士の監査は年間数百万円から発生しますし、経理内容も今までと大きく変えなければならず、必要人員も増えます。
よって、無駄に資本金が5億円以上ある場合は減資をして会社法監査の対象から外れるようにする、ということも考えられます。

減資をするデメリット

では、減資をすることにデメリットはあるのでしょうか。

減資のための費用がかかる

減資をする際には、株主総会決議を経なければなりませんので、株主が大勢いる会社では招集するのにも一苦労でしょう。また、減資は会社の債権者にとって不利になることが多い為、1か月の公告を行う必要があります。官報にその旨載せるだけでも費用は掛かります。
また、減資をした場合は登記をする必要があるため、登記の費用も発生します。

会社の信用力が低下する恐れがある

これ以外にも、新規で会社間取引をする際に問題となることがあります。
現在では1円でも会社を設立することができるとお話した通り、資本金額にあまり意味はありません。しかし、現在でも会社と会社で新規の取引をする際には企業の情報欄に「資本金」を記載することが多くなっています。

これは、今でも資本金が大きければ大きいほど信用のある会社とみなされる可能性がある、ということです。会社の価値や業績の判断基準は、様々な面から捉えたものであるべきで、資本金の額に依存をしません。

しかし、一般的には資本金の額が大きい会社ほど、信用力が高いと考えられているため、それが低下する恐れがあります。

実態はさておき、資本金を極端に減らしてしまうと新規での会社取引が今までよりも若干しづらくなる可能性があるため注意が必要です。

税制メリットを受けつつ、信用低下リスクを減少させるためには

デメリットとして挙げられた減資による資本金の減少は、新取引の信用調査項目に入っていたり、特に財務情報が開示されていない未上場の企業の信用力の判断基準となったりしており、安易に行ってしまうとデメリットの方が大きくなってしまいます。

しかし、最近では資本金を記載する欄に(資本準備金を含む)という表記も見られるようになってきました。これらから考えて、例えば現在1億2千万円の資本金を1億円以下まで無償減資を行い、それらを資本準備金に振り替えたらどうでしょう。
信用調査項目に記載する額は変わりませんから、信用リスクの著しい低下にはならず、また資本金が1億円以下になるため納める税金の額が大幅に減少することになり大きな節税メリットをうけられます。

まとめ

資本金の減資は税務面、株主への配当面などでメリットがある反面、減資の費用や会社の信用についてデメリットがあることを解説しました。いくらメリットがあると思って何度も減資をしてしまうとそれだけで意外と費用がかさんでしまうので、会社の資本金の金額は設立時はもちろんですが、長期的に見て会社にとって最適な資本金を考えることが大切です。

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:コラム・学び
    タグ:

おすすめの記事