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賞与に関する所得税、社会保険、引当金等の計算方法を解説します

公認会計士 大国光大
賞与に関する所得税、社会保険、引当金等の計算方法を解説します

サラリーマンにとって、賞与は働くうえでの楽しみの一つでしょう。しかし、人事総務部門にとっては色々な計算をしなければならず、逆に憂鬱な時期かもしれません。
賞与計算をする上で憂鬱にならなくても良いように、今回は賞与にまつわる項目の計算方法を解説します。

賞与の計算の順番

賞与は、総額から様々な控除項目を計算した後に従業員に支給する金額が決まります。よって、順番を間違えてしまうと最初からやり直しとなってしまい、大変非効率となってしまいます。

賞与の総額については、正直どのような計算でも問題ありません。業績が上がっているので前期より増額させる、一律給与月額の2か月分とする、査定の上で個別に決める、等なんでも良いです。この総額が決まって初めて次の計算に移れます。

賞与総額が決まったら、次に社会保険の計算となります。社会保険の計算が終わってから、最後に所得税の計算をして支給金額が決まります

賞与の社会保険の計算方法

通常、給与に係る社会保険の計算は、給与の等級に合わせた標準報酬月額を用いて行います。しかし、賞与の場合は支払う賞与に合わせて「標準賞与額」に合わせた社会保険料を計算します。

ちなみに、賞与の総額が150万円を超えた場合には150万円が支払われたとみなされて厚生年金が計算されます。よって、給与総額が多い従業員の場合は、なるべく賞与に寄せて支払ったほうが会社も個人も有利に働くと言えるでしょう。

ちなみに、例としては見たことがありませんが、1か月のうちに2回賞与を支払った場合にはその「合計額」が150万円まで厚生年金がかかることとなるため、「1支給額」ではないことに注意しましょう。

手続としても、賞与を支払った場合は速やかに年金事務所に賞与支払届を提出しなければなりませんので、忘れずに行いましょう。
また、退職者に対して賞与を支払う場合、退職月に支払われた賞与については社会保険を控除する必要がない為注意が必要となります。

賞与に係る所得税の計算方法

社会保険が計算されたら次は源泉所得税を計算します。
賞与支給総額から社会保険の個人負担分を差し引いた金額をまず求めます。その金額と、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて所得税の金額を割り出します。

この時、甲欄での徴収なのか、乙欄の徴収なのかで金額が異なりますので注意しましょう。また、扶養家族が多ければ多いほど税率も低くなるため、通常の給与計算と同じように間違えないようにしましょう。

賞与の率や扶養親族の数についてはソフトを導入していれば間違えることはないのですが、気をつけなければならないのは経費節約のために昔からのソフトを使っている場合、料率が最新のものにアップデートされていない可能性があります。会計ソフトもそうですが、給与については間違えてしまったら従業員から不信感を買うこととなるため注意が必要です。

賞与引当金の計算方法

ここで一歩踏み込んで賞与引当金についてもお話します。
従業員が1,2名等の企業では賞与引当金を計上することはほとんどないと思いますが、従業員が数十人以上で賞与を払う予定がある企業はできるだけ計上することをお勧めします。

賞与引当金とは、賞与を支払う見込みがある場合に、勤務期間に応じて積み立てられた額を言います。例えば、4月から9月まで勤務した人に対して12月に賞与を支払う場合、12月に支払い予定の賞与額を4月から9月にかけて次のような仕訳をします。

(借)賞与引当金繰入額 (貸)賞与引当金

また、実際に賞与を支払った12月では賞与引当金を取り崩す仕訳をします。

このような処理をしないと、この例では12月に一度に費用が計上されてしまい、12月の決算で赤字を計上する恐れがあります。しかし、12月に賞与が支払えるのは、あくまでもその前段階で従業員が頑張ったからだと言えるので、通常の給与と同じタイミングで賞与引当金を月次で積んでいく作業が必要となります。

ただし、賞与引当金は税務上損金算入できないため、中小企業では税務申告が煩雑になるという理由で計上しない場合も多いです。費用対効果を考えて賞与引当金を計上するかどうかを考える必要があります。

決算賞与は損金に算入できる?

例えば3月決算の会社で、年間の利益がたくさん出たため従業員に賞与で還元をしたいと考えたとします。しかし、賞与が損金算入できるのは原則として支払った年度となるため、3月の決算の状況を見て4月に決算賞与を払っていては翌期の損金となってしまいます。
ですが、次の要件を満たす場合はその期の損金に算入できることがあります。

・全ての従業員に個別にその支給額を決算日までに通知をしていること
・通知をした金額を通知した全ての従業員に対し決算日の翌日から1か月以内に支払っていること
・その支給額について決算賞与決定の決算日までに損金算入していること(通常は未払費用等を計上しておきます)
特に支払いの事実は振込をしておけば問題ありませんが、現金で支給する場合は必ず日付入りの領収証を従業員からもらっておくようにしましょう。

まとめ

賞与の支給額の計算は、社会保険料、源泉所得税の順番に行うことを解説しました。この点が理解出来たら、ぜひとも賞与引当金を計上したり、決算賞与を考えたりすることで、上手に賞与を利用していきましょう。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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