経理の仕事をはじめるにあたり、家計簿などとは異なる「複式簿記」を行うにあたって、まず第一の壁が「仕訳」ではないでしょうか。本記事では経理業務の基本である「仕訳」について、「借方」「貸方」などの概念や、勘定科目についてなどを詳しく説明します。
経理上における取引を、取引を簿記の5要素「資産」、「負債」、「純資産」、「費用」、「収益」にあてはめ、勘定科目(かんじょうかもく)を使って帳簿に記録することを「仕訳」といいます。仕訳は好きに行っていいというわけではなく、定められたルールがあり、そのルールに従って記録していくことが必要です。
最初は戸惑いがあるかもしれませんが、仕訳業務を行うにしたがってそのルールが身についていき、「経理のカン」ともいえるものが養われていきます。
簿記上の取引において、すべての勘定は「借方」と「貸方」に分けられます。仕訳は、全ての取引を「借方」と「貸方」に分解し、「借方」は左側、「貸方」は右側に分けて記録します。
この時、必ず「借方」と「貸方」の両方にそれぞれの勘定科目が入り、「借方」と「貸方」の金額は必ず一致するというルールがあります。これを貸借平均の原則といいます。
簿記の5要素は以下のように「借方」と「貸方」に記録されますが、かなりざっくり言うと、手持ちのお金が増える場合は左の「借方」、減る場合は右の「貸方」がプラスになるというルールです。
資産 | 増えたら「借方」、減ったら「貸方」 |
負債 | 増えたら「貸方」、減ったら「借方」 |
純資産 | 増えたら「貸方」、減ったら「借方」 |
収益 | 増えたら「貸方」、減ったら「借方」 |
費用 | 増えたら「借方」、減ったら「貸方」 |
例えば、業務上必要なボールペンを買ったとします。ボールペンは、業務に使う「費用」なので、「借方」はボールペン代を支払った分減少し、「貸方」はボールペン代分増加します。
仕訳業務において、「借方」と「貸方」に記録する際に必要なのが「勘定科目」です。
勘定科目とは、収益と費用を記録するために定めた分類項目で、勘定科目を当てはめていくことで、誰でも同じように仕訳ができるようになっています。
「現金」や「売上高」「消耗品費」など、一般的に広く使われている勘定科目もありますが、実は、その名称は法律などで明確に定まっているわけではありません。
例えば「旅費交通費」を「交通費」としたり「燃料費」としたりなど、その組織のルールや、会計ソフトによって勘定科目というのは異なります。
そのため、転職して以前働いていたところでの経理知識を生かそうとしても、「勘定科目名が同じ=内容まで同じ」とは限らない場合もあります。自分の所属組織では、どの勘定科目を使うのが一般的なのか、他の会計担当者に確認し、ルールを把握するところから始めましょう。
もし、新たに勘定科目を制定する必要がある場合は、まずは、青色申告決算書に記載されている勘定科目など、一般的に広く使われている勘定科目を使用するほか、当てはまらないものは、見たらすぐわかるような勘定科目名をつけ、以降はずっと同じものを使用するようにしましょう。
良く使われる一般的な勘定科目は、以下のようなものがあります。
資産 | 現金、預金、売掛金、建物、受取手形、立替金、未収金など |
負債 | 買掛金、未払金、預り金、借入金、支払手形など |
純資産 | 資本金(元入金)、資本準備金、利益準備金など |
費用 | 商品仕入高、減価償却費、給与、広告宣伝費、旅費交通費、消耗品費など |
収益 | 売上高、受取手数料、受取配当金、雑収入など |
勘定科目は一覧にしておき、必要な時には参照できるようにしておくとよいでしょう。
仕訳業務とは、生じた取引の要素を「借方」と「貸方」で左右に分類し、「勘定科目」と金額の内容を「仕訳帳」に書き記すことです。
仕訳帳は経理業務において、なくてはならない帳簿の1つてあり、仕訳帳をもとに、勘定項目ごとに転記した帳簿である「総勘定元帳」が作成されます。
しかし、現在は会計ソフトが開発されているため、取引内容の記入に仕訳帳を使う機会はほとんどなく、仕訳帳の代わりに、「伝票」を用いて仕訳するのが一般的です。伝票を起こすことにより、自動的に仕訳帳が作成され、さらに仕訳帳から総勘定元帳も作成できます。昔は手で転記していたものが自動化されているのです。
仕訳伝票には具体的に以下の3つが用いられます。
会計ソフトが発達したとはいえ、その大元は手入力であることに違いはなく、もともとの入力を間違えると、すべてが連動しているため数字が狂ってしまいます。
簿記では、日々の「取引→仕訳→転記」という流れを着実にこなすことが重要です。日々正確に処理をこなしていくことが求められます。こつこつと仕事を積み上げていく人にとっては、とてもやりがいのある仕事といえます。
みなさんの中には、仕訳なんていうことをしなくても、初めから勘定記入をしてしまえばいいのではないのかと考える人もいるでしょう。けれど、複雑な取引であればあるほど、仕訳をしなければ記入漏れや記入ミスが起こりやすくなります。そのため、勘定記入をする前に仕訳をし、ひと目で取引内容がわかるようにまとめておく必要があるのです。
簿記の知識を得るうえで、仕訳はとても重要なものです。仕訳には、左側の借方と右側の貸方があり、それぞれの合計をした金額は、必ず同じ金額になるという特徴があります。最初は難しそうに見える仕訳も、ポイントをつかめば処理できるようになってきますので、安心してください。
そして、仕訳に慣れるには、実際の取引内容を見るほか、勘定科目や仕訳ルールを覚えていくことがとても重要になります。複雑な勘定記入を正確にまとめる際に必要となる仕訳ですので、少しずつ慣れて使いこなせるようになっていきましょう。