
USCPA(米国公認会計士)と簿記1級のダブルライセンスにはどういったメリットがあるのでしょうか?また、資格としての難易度はどちらのほうが高いのでしょうか?
この記事ではUSCPAと簿記1級のダブルライセンスのメリットから、それぞれの難易度の違い、仕事内容の違いや資格を活かした転職などについて詳しく解説します。
USCPA(米国公認会計士)と簿記1級や簿記2級の難易度について、どちらのほうが難しいか断言するのは難しいです。
というのも、USCPAは英語で答えることの難しさ、簿記、特に1級は合格率の低さという難しさがあり、これらの難しさは性質が異なるからです。異なる性質の難しさを正確に比較するのは困難です。
以下では参考までに、
の観点でUSCPAと簿記1級・2級の難易度を比較していきます。
勉強時間の観点ではUSCPAの難易度が一番高く、次に簿記1級、その次に簿記2級となります。
USCPA(米国公認会計士)は1,000時間程度の勉強時間が必要と言われています。これは1年間で1日平均2.7時間の勉強が必要な計算です。
簿記については、簿記1級は初学者を前提とすると合計700時間程度と言われています。簿記2級は250~300時間程度と言われています。
なお、実際には簿記2級合格後に簿記1級を目指す人も多いです。その場合、簿記2級としての勉強時間250~300時間程度をマイナスして、400~450時間程度で簿記1級に合格できると考えられます。
以上より、勉強時間の観点ではUSCPAの難易度が一番高く、次に簿記1級、その次に簿記2級となります。
合格率の観点では、簿記1級(例年10%台)が一番難しく、次点で簿記2級(例年20%台)、さらにその次点でUSCPA(例年50%前後)となっています。
但し、以下で述べる通りUSCPA(米国公認会計士)は4科目の合格が必要であり、かつ科目合格制度があるため、単純な合格率比較が難しいというのが実情です。
USCPAの合格率は例年50%前後と言われます。但し、ここには大きな補足が必要です。
まずUSCPA試験の合格には、必須科目3科目と、選択科目の内1科目の合計4科目の合格が必要です。
USCPAの必須科目3科目は以下の通り。
続いて、選択科目は以下の3科目があります。ここから1科目合格する必要があります。
科目合格には18カ月(1年半)の有効期限があります。最初に合格した科目の有効期限内に残る3科目にも合格すれば、「USCPA試験合格」となります。
そして、科目ごとに毎年合格率が異なります。
2025年のUSCPA試験の合格率は以下の通りです(10月時点ではQ3まで公表)。
| 科目 | Q1 | Q2 | Q3 | Q4 | 累計 |
| FAR | 42% | 44% | 43% | 43% | |
| AUD | 44% | 49% | 50% | 48% | |
| REG | 62% | 64% | 66% | 64% | |
| BAR | 38% | 47% | 39% | 43% | |
| ISC | 61% | 72% | 67% | 68% | |
| TCP | 75% | 81% | 77% | 78% |
例年平均すると50%前後の合格率となっています。数値としては一見合格率が高く見えますが、これらの4科目の合格が必要であることから、数字以上の難易度感ではあると考えられます。
一発合格前提で考えると、50%^4で合格率は6%程度であると言えますが、上述の通り科目合格制度があるため、実際にはこの数字よりは低い難易度感であるとも考えられます。
簿記1級・2級統一試験の合格率は以下の通り。
簿記1級合格率(過去5回)
| 回 | 合格率 |
| 170(2025.6.8) | 14.0% |
| 168(2024.11.17) | 15.1% |
| 167(2024.6.9) | 10.5% |
| 165(2023.11.19) | 16.8% |
| 164(2023.6.11) | 12.5% |
簿記2級統一試験合格率(過去5回)
| 回 | 合格率 |
| 170(2025.6.8) | 22.2% |
| 169(2025.2.23) | 20.9% |
| 168(2024.11.17) | 28.8% |
| 167(2024.6.9) | 22.9% |
| 166(2024.2.25) | 15.5% |
なお、簿記2級に関しては年3回の統一試験とは別に、複数日の対象期間内にテストセンターで受験できるCBT方式もあります。
こちらは受験料さえ支払えば基本的に何度でも受験可能で、かつ即日に合否が提示されます。こちらに関しては正確な合格率は不明です。
以上も踏まえると、USCPA(米国公認会計士)と簿記1級や簿記2級の難易度について、どちらのほうが難しいか断言するのは難しいです。
勉強時間の観点ではUSCPAが最も難しいと考えられますが、一方で合格率の数字自体は簿記1級が低い、すなわち難易度が高いと考えられます。
また、USCPAは英語で答える必要があるという、簿記・会計の知識とは別の側面での難しさがあります。
USCPAと簿記1級のダブルライセンス、すなわち両方取得には、
という2つのメリットがあります。以下でそれぞれについて解説します。
USCPAと簿記1級のダブルライセンスのメリットとして、科目が似ているため勉強が活かせるという受験上のメリットを挙げられます。
簿記の試験と、USCPAのFAR (財務会計)科目は出題内容が非常に似ていると言われています。
以下はUSCPAのFARでの主な出題トピックです。
これらはいずれも、簿記1級の試験でも出題範囲となっています。すなわち、USCPAと簿記1級の、片方の勉強はもう片方の勉強にも活きると言えます。
こうした受験上のメリットは「まず試験に合格する」という視点で非常に重要であると言えます。
なお、簿記2級の出題範囲では、上記トピックの内、キャッシュフロー計算書および連結財務諸表に関しては基本的に学びません。それ以外の範囲については学ぶという意味で相乗効果はあると言えますが、類似性という観点では簿記1級のほうが上であると言えます。
USCPAと簿記1級のダブルライセンスのメリットとして、日米双方の会計基準に対応できる人材になることができるという点を挙げられます。
日商簿記試験では基本的に日本の会計基準(J-GAAP)を基にした内容を学びます。一方、USCPA(米国公認会計士)は、名前の通りアメリカの資格であることもあり、米国会計基準(US-GAAP)基にした内容を学びます。
そのため、日米双方の会計基準に対応できる人材として重宝されると考えられます。具体的には以下のようなケースが想定されます。
グローバル企業の連結決算担当:日本基準とIFRS・US-GAAPを併用する企業の連結決算業務で、海外子会社との調整や開示資料の作成を担う。
外資系コンサルティングファーム(会計アドバイザリー):海外会計基準の導入支援、M&A時のデューデリジェンス、IFRS・US-GAAP対応プロジェクトなどに携わる。
上場準備企業(IPO支援):海外投資家を意識してIFRSやUS-GAAPでの開示を検討する企業で、基準選定や体制構築に貢献。
海外赴任・駐在員ポジション:グローバル展開する企業で、現地法人の会計・財務責任者として、日本本社と現地会計基準の橋渡し役に。
こうした重要なポジションを狙うという観点において、USCPAと簿記1級のダブルライセンスは非常に活きるでしょう。
なお、こうしたポジションを独力で狙うのは現実問題として難しいです。というのも、こうしたポジションは非常に重要である一方、重要であるがゆえに「求人数」も少なくなりがちです。
そのため、そもそも会社側が有名な求人媒体などに求人票を掲載していないケースも多く、一般求職者がその求人の存在を見つけることができないということが往々にしてあります。
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初学者は基本的に簿記、特に簿記2級や簿記3級から取得を目指すべきであると考えられます。
まず大前提、簿記と会計は業務として異なります。簿記と会計は、簿記が「記録」する作業であるのに対し、会計は「報告・分析」する作業です。
そのため、まずどちらの業務を指向しているかを考えるのが重要。記録業務たる経理担当者としてキャリアを築いていきたい場合は簿記、報告・分析業務たる監査担当者としてキャリアを築いていきたい場合はuscpaを含む会計系の資格が良いと考えられます。
ただ、仮に自分のキャリアの指向性が監査だとして、取得を目指すのがuscpaが良いかは議論の余地があります。
というのも、USCPA、すなわち米国公認会計士は名前の通りアメリカにおける会計士の資格であるため、業務もアメリカの会計制度を前提とするものになるからです。日本で会計のキャリアを築きたい場合、素直に日本の公認会計士資格の取得を目指すのが賢明でしょう。
そのうえで、明確に簿記と会計どちらのキャリアを指向するか定まっていない場合は、簿記2級や、場合によっては簿記3級から目指すべきであると考えられます。
というのも簿記の学習範囲とUSCPAのFAR (財務会計)科目の学習範囲はその多くがかぶるからです。USCPAは合計4科目合格することで「有資格者」になれますが、簿記はその簿記試験の合格により「有資格者」になれます。
そのため、まずは簿記2級や、あるいはその内容も難しいと感じれば簿記3級を取得し、簿記有資格者になってからUSCPA資格の取得を目指すのが良いでしょう。
USCPA(米国公認会計士)と簿記の違いに関して、主に以下の論点でそれぞれ詳しく見ていきます。
USCPA(米国公認会計士)と簿記の業務内容に関してですが、大前提簿記と会計に業務としての違いがあります。
簿記と会計は、簿記が「記録」する作業であるのに対し、会計は「報告・分析」する作業です。
そのため、基本的には簿記を活かした仕事内容が主に経理であるのに対し、会計士資格を活かした仕事内容は主に会計監査となります。
簿記と会計は、簿記が「記録」する作業であるのに対し、会計は「報告・分析」する作業です。
そのため、基本的には簿記を活かした就職先としては、各企業の経理担当や、会計事務所(顧客の経理担当)などが挙げられます。
一方、USCPAを活かした就職先としては、日本での就職の場合、海外展開する大企業(米国向け会計監査業務)や世界展開する外資企業の日本支社(に日本での就職の場合、海外展開する大企業(米国向け会計監査業務)などが考えられます。
一方、海外就職も含めて考えると、米国の会計事務所(米国での会計監査)や、世界展開する日系企業(現地法人などの会計監査)などが挙げられます。
日商簿記試験(簿記1級など)は日本語での出題であるのに対し、USCPAは基本的に英語での出題となります。なお、受験は日本国内のテストセンターでも可能です。
USCPAと簿記1級のダブルライセンスを活かすならば以下のようなキャリアの選択肢が考えられます。
一方、こうしたポジションを個人の力だけで獲得するのは、実際のところかなり難しいのが現実です。
というのも、重要度の高い専門職ほど企業が慎重に採用を進める傾向にあり、求人数そのものが限られているためです。
その結果、企業が有名な転職サイトや一般求人媒体に求人を公開していないケースも少なくありません。つまり、通常の検索ではそもそも出会えない優良ポジションが多いということです。
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特に税務・会計分野でキャリアを築きたい方には、その分野に特化したエージェントの利用がおすすめです。
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