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無対価合併とは?現役会計士が徹底解説

公認会計士 大国光大
無対価合併とは?現役会計士が徹底解説

ここ最近企業のM&Aが活発になっています。これは、後継者不足によるものや、規模を大きくしてお互い競争力をつけようとするものなど、様々です。
この中でも合併の方法は様々ですが、今回は無対価合併について公認会計士が解説します。

無対価合併とは

合併とは、2つ以上の企業が1つになり、合併された企業の一部が消滅することを言います。通常合併の際には消滅企業の株主に対して合併先の企業の株式や金銭を交付することとなります。

しかし、無対価合併では、そのような対価が全く交付されない組織再編となります。株式を交付すると通常は資本金の増加が考えられますが、特段そのような行為がない為資本金が増加しません。

無対価合併では資本金が増加しないため、株式の割当比率を決める手間が無く、スムーズに合併することができます。この割当比率を決定するためには各社の財産の時価情報を算出する等、相当な手間がかかるため、比率を算出しなくても良いというのはとても簡便的な方法であると言えます。

現在の会社法は以前商法と呼ばれており、このような無対価合併は法律上存在しなかったのですが、会社法が施行されてから会社法749条に明言されるようになってから実務でも幅広く使われることとなりました。

無対価合併にはどんなものがある?

では無対価合併にはどのようなものがあるのでしょうか。
まず、親会社が100%子会社を吸収合併した場合が挙げられます。親会社が100%子会社の株式を保有している為、合併をしても対価の交付先が親会社自身となってしまうため、金銭の交付を行うことができません。よって、自動的に無対価合併となってしまいます。

連結財務諸表上は100%子会社を吸収合併しただけなので、企業集団全体の構図は変わることがない為連結財務諸表においても影響はありません。

次に、100%子会社同士で合併した際も無対価合併となります。親会社がA社とB社を支配している状態で、A社とB社が合併をしてもB社の株式がA社株式となるだけなので、特に新たに株式を交付したり金銭を交付したりする必要がないです。

これ以外にも、債務超過の企業を吸収合併した場合にも無対価合併となります。債務超過の企業の株価はつかないため、合併をしたとしても交付できる金銭や株式が無くなります。ただし、会計上債務超過になっている企業でも時価評価をした場合に債務超過ではなくなるような会社の場合は対価を交付する可能性があるため注意が必要です。

無対価合併にはどんなものがある?

親会社が100%子会社を吸収合併した場合の会計処理

では、親会社が100%子会社を吸収合併した場合の会計処理について解説します。まず、親会社は子会社株式について原則として取得時の価額を帳簿価額とし続けます。一方で100%子会社においては利益を計上していくにつれて純資産が増加していきます。

よって、合併をした際に子会社の資産と負債については帳簿価額を引き継ぐこととなりますが、親会社の保有している株式と子会社の純資産との間に差額が生じます。このような差額は今まで子会社が獲得してきた利益と言えるため、差額を抱合せ株式消滅差損益として損益計算書に計上します。よって、資本金の増加はありません。

次に、100%子会社同士が合併をした場合の会計処理について解説します。100%子会社同士の合併においても基本的に親会社との合併と同じような考え方となります。しかし、吸収する側の子会社としては他の子会社に対して投資をしていたわけではないので損益を計上することはありません

よって、資本項目を増減させることとなるのですが、対価を交付していない以上、資本金を増やすことができません。よって、他の子会社の株式資本を原則的に引き継いだうえで消滅する会社の資本金と資本準備金はその他資本剰余金として、利益準備金はその他利益剰余金として引き継ぐこととなります。

無対価合併の税制適格要件

無対価合併は比較的簡単な合併になることが多いというお話をしました。しかし、合併先の時価を調べるとなると結局のところ他の合併と同じように調査が煩雑となります。

しかし、これから紹介する税制適格合併が適用できる場合は、合併される法人の資産と負債をそのまま引き継げるため、煩雑さから回避できます。では、無対価合併の税制適格要件はどのようなものがあるのでしょうか。

・合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
・一の者が被合併法人および合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
・合併法人およびその合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
・被合併法人およびその被合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係

これらの4つの条件のうちどれかに当てはまる必要があります。難しいことは考えないようにすると、100%子会社であったりグループ内での合併であったりすれば税制適格要件を満たしており、合併される会社の資産と負債をそのまま引き継ぐこととなります。

まとめ

無対価合併は発行済株式数を増加させることなく簡便に合併できることをお伝えしました。ただし、せっかく無対価合併をするのであれば、税制適格要件を満たしてスムーズに合併を行えるとなお良いと考えます。

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この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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