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低額譲渡とは?所得税など税金がかかる?

公認会計士 大国光大
低額譲渡とは?所得税など税金がかかる?

低額譲渡をすると所得税がかかることがあるのはご存知でしょうか。しかし、買い手や売り手が法人であったり個人であったりするとその扱いが異なります。
そこで、今回は低額譲渡とは、低額譲渡をすると所得税などの税金がかかるのかを解説します。

低額譲渡とは

低額譲渡とは、通常の売買価格よりも低い金額で財産を譲渡することを言います。ここで、通常の売買価格というのはどういう価格かが議論となりますが、一言で言えば時価となります。ここでいう時価というのは、土地で言えば近隣の売買価格や路線価、固定資産税評価額等の金額から導かれた価格を言います。
この時価というものがくせ者で、例えば土地であれば売買価格はその土地の使い方によって大幅に変わりますし、路線価や固定資産税評価額は時価を適正に表さないこともあるため、結局のところ相対取引である以上は個別具体的な事情も考えて計算されます。最も無難なのは相続税評価額に基づいた売買であればよほど否認されることはないでしょうが、つまらないことで低額譲渡とみなされないように税理士等に確認した上で売買価格を決定することが重要となります。

個人から個人へ低額譲渡した場合

まず、個人から個人へ低額譲渡した場合を検討します。
売手は売却価額と取得価額の差額について所得税がかかります。これは低額譲渡とは関係なく、単純に譲渡所得について税金が発生するケースと同じです。
ちなみに、売却価額と適正な時価に差額があったとしても、贈与したとみなされるだけで売手には追加で税金はかかりません。
一方で、買い手の場合は適正な時価と取得価額との差額は贈与を受けたとみなされて贈与税がかかります。贈与税は時価と取得原価との差額について税率をかけることによって計算されます。
ここで、個人と個人の売買においての時価というのは最初に路線価などから導かれるとお話しましたが、路線価そのものを使うわけではありません。路線価は時価の0.8倍程度と言われているので、0.8で割り返す作業などが必要となります。
ただし、平成19年の東京地裁判決において著しく低いかどうかの判断は、社会通念に従って著しいかどうかを判定するとされており、路線価(時価の約80%)は著しく低い割合とは見られていないため、路線価を用いた算定は時価の算定に使えそうだということが言えます。

個人から法人へ低額譲渡した場合

次に、個人から法人へ低額譲渡した場合を検討します。
主に、法人成りや役員からの売渡などによって発生する形態となります。個人から法人へ譲渡した場合、まず実際の売買価額が適正時価の1/2未満であるかどうかで計算方法が異なります。
実際の売買価額が適正時価の1/2未満である場合は、適正時価と取得価額との差額に所得税がかかります。一方で、実際の売買価額が適正時価の1/2以上である場合は実際の売買価額と取得原価との差額に所得税率を掛けて所得税が計算されます。時価と実際の売買価額との差額は贈与したとみなされるため、特に個人に追加で課税されることはありません。
一方で、買い手側の法人は適正時価の1/2未満かどうかは関係なく、適正時価と実際売買価額との差額に法人税がかかります。これは、適正時価と実際の売買価額との差額は贈与を受けたとみなされて、法人税法上贈与を受けたとみなされるためです。

法人から個人へ低額譲渡した場合

続いて、法人から個人へ低額譲渡した場合を見ていきます。
法人が個人へ低額譲渡した場合、売り手の法人では、適正時価と取得価額との差額について法人税がかかります。これは、法人が時価で売却をしたにもかかわらず、個人からは実際の売却価額分しか金銭を受領しなかったとみなして処理されるためです。よって、適正時価と実際の売却価額の差額は寄付とされることとなります。
一方で、法人から低額譲渡された個人については、適正時価と実際売買価額との差額について一時所得または給与所得とされ、課税されます。法人と関係ない個人が譲渡された場合は一時所得として課税され、法人の従業員が低額譲渡された場合は差額について給与とみなされ、給与所得となります。

法人から法人へ低額譲渡した場合

最後に、法人から法人へ低額譲渡した場合を考えます。
法人から法人へ低額譲渡した場合の、譲渡した側については適正時価と取得価額との差額について法人税がかかります。これは、適正価額で買い手に売却して、適正時価と実際の売買価額との差額を寄付したと同じように考えます。
反対に、買い手側の法人については、適正時価と実際の売買価額との差額について法人税がかかります。これは、先ほどの反対で、買い手側の法人が差額について寄付を受けたとみなすためです。

まとめ

低額譲渡をすると、財産を売却した側、購入した側について税金が追加でかかることがあります。よって、特に不動産を売買する際にはその価格の根拠をしっかりと残しておくことが必要となります。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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