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資本剰余金から配当をした場合の会計処理は?利益剰余金との違いを解説

公認会計士 大国光大
資本剰余金から配当をした場合の会計処理は?利益剰余金との違いを解説

企業が配当をする際には、通常利益剰余金から配当を行います。しかし、場合によっては資本剰余金から配当をすることがあります。
そこで、今回は資本剰余金から配当をした場合の会計処理について解説します。

配当の仕方

企業が配当をする場合、企業に十分な剰余金が存在しなければなりません。というのも、剰余金が枯渇しているのに配当をしてしまうと、債務超過の危険性があり、債権者に対して資金を返済できなくなってしまうためです。

よって、分配可能限度額の計算としては、最終事業年度末における剰余金の金額を最大値として配当を行うことができることとなっています。

また配当原資が「利益剰余金」か「資本剰余金」どちらであるかで税務上の取り扱いは変わります。

この剰余金の計算としては、その他利益剰余金とその他資本剰余金の合計で計算されます。ちなみに、その他利益剰余金とは主に過去からの利益の蓄積をいい、その他資本剰余金とは増資や減資等の資本取引によって発生した資本の余剰分や、自己株式の処分差額によって生じた金額を言います。

配当の仕方

利益剰余金から配当した場合の会計処理は?

資本剰余金から配当した場合の会計処理を説明する前に、一般的な利益剰余金から配当した場合の会計処理を紹介します。
利益剰余金から配当を行った場合、配当を行った企業は次のような仕訳をします。

借方 金額 貸方 金額
配当金(利益剰余金) ×××× 現金預金 ××××
預り金(源泉所得税) ××××

現金預金が減少するとともに、利益剰余金を減少させる仕訳をします。利益剰余金の減少については、株主資本等変動計算書にて行われます。また、配当金には所得税がかかりますので、源泉所得税を差し引いた分を株主に配当するとともに、配当を支払った翌月に税務署に源泉所得税を納めることとなります。

なお、十分に利益準備金が積み立てられていない場合は、同時に10分の1の金額を利益準備金として積み立てが必要となります。
また、配当金を受け取った企業は次のような仕訳をします。

借方 金額 貸方 金額
現金預金 ×××× 受取配当金 ××××
預り金(源泉所得税)法人税等(源泉所得税) ××××

配当金を受け取った企業は受取配当金を認識するとともに、受け取った現金との差額を源泉所得税として主に法人税等で処理をします。また、受取配当金はいくらか益金不算入となります(この計算は持分割合によって決まります)。

資本剰余金から配当した場合の会計処理は?

では、資本剰余金から配当した場合はどのような会計処理となるのでしょうか。
資本剰余金から配当した場合、配当した企業は次のような会計処理を行います。

借方 金額 貸方 金額
配当金(資本剰余金) ×××× 現金預金 ××××

なお、みなし配当が発生する場合は源泉所得税を認識することとなります。また、資本剰余金を減少させる仕訳が必要となるため、株主資本等変動計算書によって取り崩します。

一方で、資本剰余金の配当を受け取った企業は次のような仕訳をします。

借方 金額 貸方 金額
現金預金 ×××× 投資有価証券 ××××

もしくは

現金預金 ×××× 受取配当金 ××××

配当金を受け取る側の企業が有価証券について売買目的以外で保有している場合は上の仕訳となります。一方で、売買目的有価証券として保有している場合は、受取配当金または売買目的有価証券運用損益として利益計上します。

これは、売買目的であればどのような形であっても配当を受け取ることは利益になる一方で、その他の目的で保有している場合は出資の払い戻しと同じように考えられるため、帳簿価額を減少させる仕訳が必要となります。

資本剰余金の配当とみなし配当の関係

資本剰余金から配当を行った場合に、理解をすることが難解であるのが「みなし配当」でしょう。

通常利益剰余金から配当を受け取った場合、受け取った個人は配当所得として課税をされます。

一方で、資本剰余金から配当を受け取った場合は出資の払い戻しと考えられる部分があるため、みなし配当部分と、株式を譲渡したとして譲渡所得として課税をされます。

配当を受け取っているのだからみなし配当というとなんだか変な響きですが、資本剰余金からの配当は配当として考えられないため、一部をみなし配当として考える、ということになります。みなし配当の計算方法は次の通りです。

株主が受け取った金銭―資本金などの額÷株式総数×株主の保有株式数

具体的な計算方法は単純ではないので通常は企業側が計算をして株主に知らせることとなります。

ちなみに、みなし配当が発生するのはこのように資本剰余金からの配当だけではなく、自己株式を取得した場合や、会社が解散した時の残余財産の分配などの場合が挙げられます。これ以外にも組織再編等で株主が別の会社の株式などを受け取った場合などもみなし配当が計算されます。

まとめ

資本剰余金から配当を受け取った場合や配当をした場合、利益剰余金とは異なる会計処理が必要となります。

特に受け取る側は気にしていないと確定申告を忘れてしまう可能性があるため、利益剰余金と資本剰余金どちらから配当があったかをしっかりと把握しておきましょう。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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