AI時代が到来し、社会保険労務士に限らず、世の中のほとんどがAI システムに代替され、病院などでもAIが診察したり手術したりする時代がやってくるでしょう。
今回は、行く末を案じる方も多い「AI時代のなかで社会保険労務士の仕事がこれからどうなっていくのか? 」について解説していきます。
社会保険労務士の仕事は、社会保険労務士のみが行える独占業務の「1号業務」「2号業務」
と、独占業務ではない「3号業務」の大きく3つに分類されます。
社会保険労務士の1号業務の主なものとして以下3つがあります。
①社会保険や労働保険に関する申請書等の作成
②労働基準監督署やハローワークなどへの届出・提出手続代行
③申請書類に係わる調査や処分に対する事務代理
社会保険労務士の2号業務として、就業規則、賃金台帳、労働者名簿などの会社に備えつけなければならない帳簿種類等の作成があります。
社会保険労務士の3号業務として会社の人事・労務管理の相談・指導業務(コンサルティング業務)があります。
前述の社会保険労務士の仕事のうち、独占業務として守られている「1号業務」「2号業務」のAI代替可能性はおよそ80%だと試算されています。
日本の労働人口の 49%がAIによる人工知能やロボットなどで代替可能になると試算されているほどで、AI代替は社会保険労務士に限った話ではありません。
出典:2015年12月公表「野村総研と英オックスフォード大との共同研究」
どのような仕事にも「人」が関係します。「人」が仕事を作り「人」が仕事の成果を享受します。
つまり最低限必要とされる「人対人」のコミュニケーションや、そこから導き出される答えや解決方法を引き出す力が求められることになるのです。
対人関係能力(=ヒューマンスキル)は、AIをもってしてもシステム化できないところであり、このヒューマンスキルを高めることが重要になってくるのです。
ある会社で人事システムにAIを導入したところ社員からの苦情が殺到しました。
大半の苦情は通勤交通費などで個別対応していたところがなされていないとのことでした。
AIは就業規則通りシステム化されていたのですが、個別対応のシステム化まで及ばなかったようなのです。
その会社はAI導入に伴い人事部門の人員削減を行ったことから、苦情処理に対応するマンパワーが確保できずにいたところ、社員の反発心がエスカレートし、外部の労働組合に苦情を相談し、その労働組合が会社前にて拡声器で苦情内容を訴える騒ぎとなってしまい、会社は社会保険労務士に解決依頼をしたのです。
社会保険労務士は対象の社員一人一人から事情を聞くと共に、会社そして労働組合各々と何度も協議を重ね、それぞれが納得・妥協できる解決策を導き出し、事なきを得ました。
人事労務管理のスペシャリストとして知識を有する社会保険労務士が、「人対人」のコミュニケーションをとり、解決方法を引き出した事例であり、この役割はAIに代替することはできないでしょう。
AI代替の動きに伴い、これからは、「1号業務」「2号業務」の書類の代行申請のみでは社会保険労務士としての仕事がない時代になります。
だからこそ、ヒューマンスキルを高めた問題解決型の専門家として特化した業務及びサービスを提供することが重要であり、この種の企業ニーズは後を絶たないと確信しています。
また、AI代替の動きがあるからこそ、人事労務管理の専門家として相談及び指導の業務を行える社会保険労務士への期待値も増えることでしょう。
人事労務管理の仕事を海外企業と安価な業務契約で委託する動きも多くなってきました。
社会保険労務士の仕事というよりも、そもそも根本的な人事労務管理の仕事がなくなってきているのです。
どの会社もコスト削減に励むのは当然のこと、縁の下の力持ちだけど利益を生まない人事労務管理は外部委託して人件費削減しなさいとの指令も何度も耳にしました。
このような時代であるからこそキーパーソンになれる社会保険労務士が必要なのです。
人事労務管理をシンガポールの会社に外部委託している会社が、工場で働く作業員一人当たりの生産台数を増やし効率化を図るため交代制勤務の見直しを行い、トライアルで3組3交代勤務を行いました。
トライアルとはいえ働く作業員にとってはとても重要なことであるのに、人事制度詳細がよくわからないままのスタートに社員の不満が爆発しました。
社内の苦情問合せ窓口はスイス。電話の掛け方もよくわからないし時差があるからつながらない環境に、とうとう作業員はストライキを起こしてしまいました。
そして、会社から社会保険労務士に問題解決の依頼があったのです。
3組3交代勤務とは作業の火を消さないよう昼夜問わず交代勤務するものです。
当たり前ですが夜の勤務は暗いし寒いです。
社会保険労務士はまず、「深夜労働の作業員の夜食は、暖かい食堂を開放し、温かいものを提供する」よう会社に求めました。
次に、深夜労働や本トライアル中の諸手当を整備および文書化し「作業員への諸手当見える化」を行いました。
するとどうでしょう。作業員はストライキを辞め、目を輝かせて働き出しました。
トライアルスタート前に社会保険労務士に相談していれば回避できたストライキだったことは言うまでもありません。
従来のような、書類提出代行のような機械的な仕事だけを行う社会保険労務士では、今後仕事はなくなっていくことでしょう。
社会保険労務士に求められるのは「トラブルを未然に防止する強化な人事労務管理の構築」と「働き方の多様化に応じた人事制度構築」です。
そして何より人工知能のロボットにはない、そして、海外にいる業務委託者には測れない「人としての温かさを考慮できる」という役割を担うことだと考えます。
「社会保険労務士の資格を取得したから安泰だ」なんてことはありません。これも社会保険労務士に限らず全ての資格取得者に言えることです。
資格取得がゴールではありません。社会保険労務士の資格を取得して初めてスタート台に立てるのです。
「活かす」も「殺す」も自分次第、これだけ自由度の高い職業は他にないかもしれません。
そして、仕事はなくなるどころか、コンサルティングから人事制度のデザイン業務までたくさん溢れていることを最後にお伝え申し上げます。
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