会社法によって監査役設置会社には監査役をおかなければいけないということが決まっています。では、監査役設置会社とは、どのような会社なのでしょうか。今回は、監査役設置会社について、解説していきます。
会社法と呼ばれている会社に関する法律があります。それによれば、「会計監査設置会社」と「取締役会設置会社」には、監査役の設置をしなければならないと明記されています。そして、このような監査役の設置を定められた会社は、総称して「監査役設置会社」といわれます。
では、「取締役会設置会社」と「監査役設置会社」について、解説していきましょう。実は、取締役会設置会社は、監査役は設置しなければならないのですが、取締役会に関しては任意で決定することが可能です。ただ、取締役会を設置すると、さまざまなメリットが得られるのです。具体的には、株主総会を開催することなく取締役会のみで経営方針を決定できるといったようなことや、社外における信用力が高まるといったことが挙げられます。そしてこの取締役会を設置するには、監査役を1名設置することが義務付けられており、そのため監査役が取締役会設置会社には設置されているのです。
そして「監査役設置会社」ですが、こちらも同様に、会社法においては会計監査人を設置するかどうかにいては、原則として、任意で決定できると定められています。しかし、以下のような条件に当てはまる会社の場合は、最終事業年度に賃借対照表を作成するにあたり、監査役を設置しなければならないとされているのです。条件とは。資本金額が5億円以上ある、または負債額の合計が200億円以上ある「大会社」であることです。
先ほどからお話している監査役とは、どのような立場の人を指すのでしょうか。監査役の役割とは、取締役とは独立した立場をとりながら、株主のために会社や取締役が正しいことを行っているということをチェックしている立場です。
そのため、監査役には多くの権限と責任があります。例えば、会社の帳簿を自由に閲覧することができる「会計調査権限」、株主総会で監査役としての意見を述べることができる「株主総会への意見報告」、取締役の不適切な行為を差し止めできる「違法行為の差し止め請求権」などがあります。しかし、これだけの権限と責任が監査役に与えられているということは、これらの役割をしっかりと果たさなければならない義務も背負っているといえます。
自社を監査役設置会社とするメリットには、以下のようなものがあります。
会社法が施行されるようになり、ひとりであっても会社の設立ができるようになりました。そのため、あえて監査役を設置せず、取締役1名によって会社を設立するケースが増加しています。では、どうしてここまでして監査役を設置するのかというと、監査役を設置しているというだけで、社外から「規模の大きな会社だ」「コンプライアンスが徹底されている会社だ」という好印象を得られるからです。
監査役の役割のなかでもご紹介しました通り、監査役は取締役の業務を監査することが可能です。代表取締役と株主を兼任しているような小さな会社であれば問題ありませんが、代用取締役と株主が別であるような大きな会社で、資本と経営が分離していれば、取締役がきちんと法律や規則に則って業務を遂行しているかどうかを監査する人が必要になります。
監査役設置会社には、ただいまご紹介したようなメリットがありますが、もちろんデメリットも存在します。では、監査役設置会社とするデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
監査役は、取締役の業務が正しく遂行されているかどうかをチェックする立場であり、新しくなにかを生み出すような役割を果たすわけではありません。しかし、それでも監査役に対しては報酬を支払う必要がでてきます。監査役1名であれば、まだ少額と言える報酬ですみます。しかし、監査役会を設置するとなれば、最低でも3名以上に対する報酬の支払いが必要となります。また、監査役を設置することにより、経費も増加することになるでしょう。
取締役の日々の業務を監査するという、とても重要な役割を担う監査役です。どのような人材であってもいいというわけにはいきません。それなりの知識やスキルなど、取締役の業務を理解し、何が正しくて何が違法なのかを見分けることができなければいけないのです。監査役であれば1名以上でいいのですが、監査役を設置する場合には監査役は3名以上、そのなかでの社外監査役は半数以上と定められているため、人材の確保が大きな課題となります。
監査役設置会社とはどういった会社を指すのか、監査役設置会社とする主なメリットやでデメリットを解説しました。自社を監査役設置会社にするかどうか選べる場合は、必ずメリットとデメリットを比較し、さまざまな状況を想定して決定を下すようにしましょう。