会社の規模が拡大すれば、親会社、子会社、連結子会社などが誕生します。しかし、こういった会社の区別や、これらの会社の関係性、そこから生じるメリットやデメリットを正しく理解している人は、そう多くはありません。今回は、主に連結子会社と子会社の違いについて解説していきます。
子会社とは、子会社の総株主の過半数を親会社が保有しており、経営に関しても親会社の支配の影響を受ける法人のことです。
子会社には、以下の三つの種類があります。
以上の三つを兄弟会社とも言います。
完全子会社がいわゆる子会社であり、親会社が議決権を100%握っています。
連結子会社は親会社が議決権を50%以上握っている会社です。
連結子会社とは、グループ会社などの連結の範囲に含められる子会社のことをいいます。また、親会社に税務状況を合算されるという特徴ももっています。
非連結子会社は親会社による支配が一時的であり法人のことを指します。また、非連結子会社を連結範囲内に含めた場合に利害関係者の判断に誤りが生じる可能性があると考えられているため、連結の範囲に含まれません。また、非連結子会社の資産や売上状況から見た際、重要性が低いと判断された場合も、連結範囲より除かれることがあります。
親会社1社で会社を運営するのではなく、連結子会社や子会社を設立することにはメリットがあります。では、どのようなメリットがあるのでしょうか。
子会社がそれぞれの事業に特化をして経営をしているため、自社の状況に応じた判断を素早く決断することができます。意思決定が迅速であれば、トラブルへの対処にも適切に対応ができますし、子会社が担当している事業の経営に注力することが可能になります。
それぞれの子会社が、それぞれの事業に特化をして事業を行なってくため、どの子会社がどの程度の利益を得たのかが明確になります。反対に損失が出た場合にも同様に、どの子会社がどのような理由でどの程度の損失を出したのかについても明確となります。特に、全国展開をしているような大きな会社が、エリアごとにおいて子会社を設立する場合などに有効な経営手段です。
親会社と子会社では状況が大きく異なる場合があります。それにもかかわらず、同じ人事制度が適用されていれば、作業に支障がでることが考えられます。従業員より評価に対する不満が出ることもあるでしょう。しかし、子会社で独自の人事制度を導入していれば、それぞれの状況に合った人事制度を導入することができ、適切な評価が行われます。
いくつかの子会社で、それぞれ異なった事業を展開していたとしましょう。そして、そのうち1つの子会社で大きな損失が出たとします。親会社や子会社の区別なく、会社を経営していた場合には、損失が出た事業に関わっていなかった部署にまで損失の影響が広がります。しかし、子会社によって事業を分散させていた場合は、リスクも分散させることが可能となります。つまり、会社全体のリスクを最小限に抑えることができるのです。
親会社と子会社を区別することにより、子会社は状況に応じて独自の判断で経営ができ、リスクも分散できると聞けば、メリットにばかり注目されがちです。しかし、連結子会社や子会社を設立するにはデメリットも伴います。
親会社の支配のもと、子会社の経営が行われているとはいえ、親会社と子会社は全く別の法人といえます。そのため、親会社の経営者の目がどうしても行き届きにくくなり、意思疎通も容易ではありません。このようになってしまうと、親会社の経営方針が子会社の従業員にまで浸透させるということは極めて困難になると言わざるを得ません。
先ほどもお伝えした通り、親会社と子会社は別の法人です。そのため、それぞれに管理部門を設置する必要があり、その業務に必要な機材購入費用、人件費などが必要になってきます。親会社1社で経営をしているよりも、管理部門に関するコストは確実に増加するでしょう。
子会社がある程度、自社の裁量によって経営を判断できるようになると、子会社にとって都合の悪い状況が親会社にまで伝わらないという事態が起きやすくなります。このような状況が生まれると、コンプライアンス違反も発見しにくくなり、親会社の経営理念に基づくかたちではない方向で経営が行われてしまう可能性もあります。親会社としては、子会社の経営に対する意思を把握し、尊重しつつ、あくまでも親会社として子会社の経営を監督していくことが求められます。
連結子会社と子会社の違いについて、またこのように区別をして経営を行うことのメリットとデメリットについて解説しました。連結子会社と子会社の区別をつけるのか、どこまで連結子会社や子会社を増やすのかについては、慎重な判断が必要となるでしょう。