企業において新規事業を立ち上げる場合、その組織をどうするべきか?という判断が必要になります。一般的には、新規事業の構想は経営企画室などで行い、事業の立上げが正式に決まると、子会社を作るか、社内に事業部門を立ち上げることになります。
今回は、子会社を設立して新規事業を行う場合のメリットについて解説します。
企業は成長していくと、社内に事業リソースが蓄積されていきます。その蓄積されたリソースを活用して、今までやっていた事業とは全く異なる新規事業を立ち上げたり、既存事業をベースに事業の多角化をすることが一般的です。
事業の多角化の場合には、社内に新しく事業部門を立ち上げることが多いですが、既存事業と全く異なる新規事業を立ち上げる場合には、子会社を設立するケースが多いです。
まずは、子会社とはどのようなものなのか、その定義を正しく理解したいと思います。
子会社と一言で言っても、会社法と法人税法ではその定義が異なります。両方の違いを正しく理解しないと、後ほど説明をする子会社のメリットを享受出来なかったり、想定していなかったデメリットに直面したりします。ですから、まずは、会社法と法人税法それぞれの法律における「子会社の定義」を正しく理解しましょう。
会社法では第2条において、「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社、その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもの」と定義されています。ポイントは議決権の過半数と、実質的な経営判断決定権となります。
法人税制においては原則として完全支配関係にあるかどうか、つまり、「ある会社が他の会社の100%株式を直接的または間接的に保有しているかどうか」が基準となります。この定義において子会社である場合は、グループ法人税制が適用され、事前の申請により連結納税を選択することが出来ます。
では、新規事業を立ち上げる場合に、子会社を設立して行う場合のメリットにはどのようなものがあるかについて、見ていきたいと思います。
子会社を設立して新規事業を始める場合、親会社の支配を受けているとはいえ別会社なので、否が応でも自主性が高まります。この自主性の高まりによって、事業責任者の自主性が高まり、配属された社員のマインドもリセットさせることが出来ます。このことにより、いわゆるベンチャー精神を発揮できる環境が整うことになります。
会社の設立にはそれなりに費用が掛かりますが、税法はそれに見合うだけの優遇措置を設けています。具体的には、その子会社の資本金等の額が1,000万円に満たない場合、消費税法上、一定期間の消費税が免税となります。
しかしながら、設備投資先行型の事業の場合には、設備投資に掛かる支出の消費税の還付を受けることが出来なくなるので、事業計画の段階で先行投資の金額をきちんと見積りして、資本金の額については慎重に検討することが必要になります。
それ以外にも、子会社として親会社とは別に交際費の経費算入限度額があるので、企業グループ全体として、当該交際費相当分節税をすることが出来ます(ただし利益が出ている場合)。
目下、政府も地方公共団体も、創業を熱心にサポートしています。具体的には、様々な補助金や助成金制度を設けて、ベンチャー支援を行っています。これは、個々によって条件が異なりますが、会社として独立しているので、それらの支援を受けられる可能性が高くなります。
これは、特に従来の事業と新規事業が全く異なるサービスである場合に特に効果的なことです。親会社が行っている従来の事業とは全く異なるブランディングが必要な場合には、子会社として独立して、会社名、ロゴ、本社所在地などを完全に分けることで、その新規事業に相応しいブランディングが可能になります。
もちろん、子会社を作って新規事業を行うデメリットもあります。具体的に見ていきたいと思います。
親会社の支配を受けているとはいえ別会社なので、仮にオフィスが違う場所にある場合などには、日頃のコミュニケーションが疎遠になる可能性があります。子会社の経営陣が意識して親会社と意思疎通を図ったとしても、置かれた環境が異なるために結果的に意思疎通が上手く行かなくなることもあります。
このデメリットは、自主性というメリットとのバランスで、上手にコントロールすることが必要になります。
税法上は新規設立会社には各種優遇措置があり、場合によっては補助金や助成金を受取ることが出来ても、オフィスを別に構えた場合、その維持コストは、事業部門として行う場合に比べるとやはりコスト高になることは否定できません。
ですから、新規事業を子会社で行う場合でも、最初の頃は事業部門として立ち上げて、事業立上げの見通しが立ってから子会社にするケースも多いようです。
このように見ていくと、新規事業を立ち上げる場合の子会社の活用は一長一短です。言い換えれば、ケースバイケースということになります。
ですから、経営企画室などに所属して新規事業の企画を担当する業務に従事している場合には、子会社で新規事業を行うことのメリットとデメリットを、時間軸に沿って考えて、柔軟にそのマイルストーンを作成することをお勧めしたいと思います。
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