協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の扶養については、平成30年10月より、扶養にする際の基準を満たしているかどうかの証明が必要となっており、厳格に運用されることになりました。毎年度、被扶養者資格の再確認が事業主に送付され、条件に該当しなくなった場合は扶養から外れます。本記事では協会けんぽの扶養にする時の条件と手続きについて解説します。
被扶養者とできる範囲としては、被保険者が主に生計を維持している親族や内縁関係などの家族が該当します。出典:健康保険制度と協会けんぽ
以下の二親等以内の親族であれば、被保険者との同居は必要ありません。例えば単身赴任していたり、進学のために親元を離れている場合、遠方に実家がある場合など、認定基準を満たせば同居していなくても被扶養者とすることができます。
三親等の親族と、内縁関係については、扶養にするためには被保険者との同居が必須です。
・上記1.以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
・内縁関係の配偶者の父母および子(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)
出典:日本年金機構:健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き
被保険者が主に生計を維持していることが第一条件ですが、扶養に入るためにはさらに以下の2つの条件を満たす必要があります。
年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入※180万円未満)かつ
・同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
・別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
※ 年間収入とは、過去における収入のことではなく、被扶養者に該当する時点及び認定された日以降の年間の見込み収入額のことです。
また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます。所得税の計算とは異なりますのでご注意ください。
給与所得等の収入がある場合は、月額108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であることが条件となります。出典:日本年金機構:健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き
よく言われるパートの130万円上限というのは、それを越えると、扶養から外れて自身で健康保険に加入することになるので、結果的に支払額が多くなるため、収入をそれ以下に抑えて働こうとすることからおこるものです。
また、60歳以上または障がい者の場合は、年金が月に15万円以上ある場合は180万円を超えるので対象にならず、75歳以上の後期高齢者医療制度の被保険者になっている場合も対象外になります。
かつては、別居して仕送りしている親や祖父母を扶養扱いにすることが、節約手段として行われていたこともありましたが、後述する通り、現在ではこの条件を満たすかどうかを証明する書類の提出が必要となっており、さらに毎年適用条件の確認が行われます。協会けんぽの扶養に入れるというのは、ハードルがかなり高くなっていると思って良いでしょう。
配偶者、直系尊属、子、孫、兄弟姉妹以外の3親等内の親族は、同居だけでなく同一世帯でなければなりません。住まいが同じで同居していても、生計が別となっている世帯の場合は対象から外れます。
なぜ被扶養者の基準を厳格に設けているかというと、被扶養者は保険料の負担がないからです。自分で国民健康保険や協会けんぽなどに加入すると、もちろん保険料負担がかかりますが、扶養に入ることができれば無料で健康保険を利用できます。
被保険者の扶養に新たに人を追加・削除する際の手続きには[健康保険被扶養者(異動)届]の提出が必要です。
さらに、以下の通り被保険者と続柄と、収入などにかかる証明書を提出する必要があります。マイナンバーがある場合は番号をもとに行政側で収入が確認できるので、省略できる場合もあります。 出典:日本年金機構:健康保険被扶養者認定事務の変更にかかるお願い
以前は申告のみで扶養に入れることができたのですが、現在はこのように厳しくなっており、手続きに必要な書類や手間も相当負担になっているのが現状です。必要書類を揃えるのに時間がかかってしまって無保険の状態にならないよう、手続き早目に行ってください。
報道されている通り、健康保険についての運営状況は年々厳しくなる一方です。そのため、扶養対象についても厳格な審査が行われるようになっています。
今回は「協会けんぽ」について扶養基準と手続きを解説しましたが、健康保険組合や国民健康保険などはまた基準が異なります。扶養に入れたい方がいる場合は、それぞれの健康保険の内容で確認してください。
当コラム内では、社会保険の手続についての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。
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