お休みの日に出勤したら「振替休日」もしくは「代休」が与えられる旨を就業規則に規定している会社は多いでしょう。しかし、この2つは混同されがちですが労務管理上では明確に意味が違うことをご存知ですか?本記事では、振替休日と代休の違いについて解説します。
厚生労働省によると「振替休日」を以下のように定義しています。
出典:厚生労働省HP よくある質問
例えば、業務の都合で本来は休みであった日曜日に出勤する代わりに、翌日の月曜日を休日とするような場合が該当します。
「あらかじめ」休日を振り替えておくというところがポイントです。
①就業規則に振替休日の規程を置くこと
出典 厚生労働省労働基準局監督課:モデル就業規則 平成31年3月版
このように、振替休日の措置を取ることがあることを、就業規則に定めておく必要があります。
② 振替休日は特定すること
③ 振替休日は4週4日の休日が確保される範囲のできるだけ近接した日とすること
業務都合とはいっても、振替休日の取得が数か月後というような状況になってしまうと、必要な休息をとることができません。繁忙期であっても最低でも4週に4日の休日を確保できるように振替休日を取得します。
④ 振替は前日までに通知すること
次に「代休」の概念について説明しましょう。
厚生労働省のHPでは下記のように定義されています。
出典:厚生労働省HP よくある質問
ここでのポイントは「あらかじめ」という言葉がないところです。
振替休日は事前に日を指定して休日と勤務日を入れ替えるのですが、代休は休日に勤務した後に、代わりの休日を申請するという制度になっています。
結果的には同じように見えますが、振替休日と代休では、賃金に違いが生じますので、次の項で見ていきましょう。
振替休日と代休については、労働基準法上において、賃金の支払い方の差があります。
振替休日は「あらかじめ」「前もって」休日を勤務日にして、勤務日を休日に振り替えるか決めます。
そのため、休日出勤扱いとはならず、通常の出勤扱いとなります。もちろん、法定労働時間を超えた場合は時間外手当がありますが、通常の勤務日と変わらない扱いです。
振替休日の場合
休日を通常の勤務日として働いた分の賃金+(残業手当)- 通常の勤務日の賃金=残業手当
つまり、振替休日と勤務した日の賃金は相殺され、もし残業手当が有れば、その分のみ支給されます。
これに対して、代休は休日に出勤してしまった後に休むべき日を決めるものなので、すでに休日出勤してしまった事実があります。そのため、休日出勤手当の対象となり、割増賃金としなくてはなりません。
代休の場合:休日出勤の割増賃金+(残業があればその分)- 通常の勤務日の賃金=休日出勤の割増分+(残業手当)
あとで代休を取った分については、通常の勤務日となりますので、休日出勤の割り増し分と残業があった場合その分が残ります。
なお、この計算については、あくまで同じ月の給与の〆のタイミングに振替休日若しくは代休が取得された場合なので、月をまたいだりすると、計算された月の給与計算が1日分差し引かなくてはならないなど煩雑になります。
そのため、振替休日も代休についても、できる限り同月内に取得させることが望ましいです。
休日出勤した後に、代休を取ることを「振替休日」といっている会社もあるようですが、振替休日とするのであれば、休日出勤前に振替日を決めておかなくてはならないのです。
この二つは混同されがちですが、事後に休みを決めると代休扱いになり、休日出勤した分は割増賃金であるということを人事労務担当者は周知徹底する必要があります。
事前にスケジュールが立たず、振替休日の日程が決められないというような状況であっても同様です。
特に現場管理職はこの認識が混同しがちなので、労働基準法違反にならないように気を配る必要があります。
また、代休になってしまうと、後からスケジュールが分かったうえで申請となるので、未消化の休日がたまってしまい、結果的に必要な休日取得が出来ないということも起こります。
労働基準法上では最低4週に4日の休日を定めています。この基準を下回らないよう休日を取得できるよう早目の対応が必要です。
働き方改革により、会社による労働者に対する労働時間や休日の管理が注目されています。従来のように「休みも来て働く」ことを評価する向きは、そろそろ見直さなければなりません。
特に、振替休日と代休については賃金支払いの差額がありますので、積もれば会社には人件費としてのしかかります。労務管理担当者や現場の監督責任者については、事前にしっかりと計画を立て、できる限り業務を効率化すること、またどうしても休日出勤が必要であれば、計画的に振替休暇の取得を行わせるようにしましょう。やむを得ず代休になってしまった場合も、適切に管理してください。