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無対価株式交換について仕訳方法とあわせて徹底解説!

HUPRO 編集部
無対価株式交換について仕訳方法とあわせて徹底解説!

株式交換を通じて、子会社となるべき会社の元々の株主が親会社となるべき会社に株式を譲渡する際は対価を受け取るのが通例です。対価は親会社の株式が基本ですが、現金等の場合もあります。一方で、株式の対価を無償とする株式交換も認められています。今回はそのような無対価株式交換について解説していきます。

株式交換の概要についてわからないという方は、まずはこちらのご確認ください。
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無対価株式交換とは

先ずは株式交換の定義を見てみましょう。

会社法2条31号 一部改
株式交換とは株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう。

これは子会社となるべき会社の全ての株式を親会社となるべき会社が取得するということです。

通常は、株式交換をする会社(株式交換完全子会社と呼ぶ)の株式を受け取る代わりに、株式会社の発行済株式の全部を取得する会社(株式交換完全親会社と呼ぶ)が株式交換前の株主に対価を支払います。しかし、株式の対価を無償にすることも認められています。このような株式交換を無対価株式交換といいます。

無対価株式交換は、企業グループ内における組織再編の際に活用されます。

株式交換のメリット・デメリット

(1)株式交換のメリット

株式交換は、無対価で、もしくは、対価を株式交換完全親会社の株式として行うことができます。そのため現金が不要である事が大きなメリットです。

株式交換を行うために株式交換完全子会社の全株主から個別に同意を得る必要はありません。株式交換は、原則として、株主総会の特別決議によって行うことが可能です。

(2)無対価株式交換ならではのメリット

無対価株式交換は、対価が無償でない株式交換と比べて手続きが簡単です。株式交換は基本的に株式交換完全親会社の発行済株式総数が増えるなどするため登記が必要です。しかし、無対価株式交換において、登記は必要ありません。また無対価なので、事前開示書類に記載する項目も少なくて済みます。

(3)株式交換のデメリット

株式交換では株式交換完全子会社の一部の事業のみを承継することはできないことが大きなデメリットです。会社の事業の一部を承継したい場合は事業譲渡を利用する必要があります。

株式交換のデメリット

無対価株式交換の適格要件

(1)適格・非適格について

株式交換には適格株式交換と非適格株式交換があります。適格株式交換は非課税となり、非適格株式交換は課税されます。

株式交換では、対価の有無に関係なく、資産の移転が発生します。適格要件を満たしていない場合(要するに、非適格株式交換)は、資産の時価評価が必要であり、そのため譲渡損益が発生します。そして、その譲渡利益に対しては課税されます。

すなわち無対価株式交換であっても譲渡利益が発生する場合は課税されます。

(2)適格要件

無対価株式交換は、以下のa・bの条件を共に満たせば、適格株式交換となります。

a)継続保有に関する要件

要件の一つは、株式交換の前後で完全親子関係が継続する事です。

株式交換前に完全親子関係がない場合は非適格株式交換になります。また、株式交換の後に株式の一部を手放したりして完全親子関係ではなくなった場合も、非適格株式交換となります。

b)株式の保有状態に関する要件

もう一つの要件は、ある人物が一人で株式交換完全子会社および株式交換完全親会社双方の全株式を保有していること、又は、株式交換完全子会社の全株式を(親会社の親会社を含む)親会社が保有していることです。

注1:ある人物が一人で保有していることが要件であるため、ある人物の親族が一部を保有している場合は適格要件を満たしません

注2:俗にいう「子会社の子会社(孫会社)」は、正式には子会社と呼ばれます。b)の、又は、以降の部分は、株式の一部を親会社が、残りを親会社の親会社である別の会社が保有している場合を想定しています。

無対価適格株式交換の税務仕訳

(1)株式交換完全親会社の税務仕訳

株式交換完全親会社は、株式交換をする会社の株主数によって、税務仕訳が変わります。

a )株式交換完全子会社の株主が50人未満の場合

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
株式交換完全子会社株式 XXX 資本金 XXX

金額は株式交換完全子会社の株主における株式交換完全子会社株式の帳簿価格を引き継ぎます。

b) 株式交換完全子会社の株主が50人以上の場合

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
株式交換完全子会社株式 XXX 資本金 XXX

金額は株式交換完全子会社の株式交換前の簿価純資産価額となります。

(2)株式交換完全子会社の株主の税務仕訳

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
株式交換完全親会社株式 XXX 株式交換完全子会社株式 XXX

金額は株式交換完全子会社の株主における株式交換前の株式交換完全子会社株式の帳簿価格を引き継ぎます。

無対価非適格株式交換の税務仕訳

(1)株式交換完全親会社の税務仕訳

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
株式交換完全子会社株式 時価 資本金等の額 借方の金額

(2)株式交換完全子会社の税務仕訳

時価評価資産に該当する資産を時価評価し、評価益が出る場合については課税されます。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
時価評価資産 XXX 評価益 XXX

金額は含み利益の金額です。

又は

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
評価損 XXX 時価評価資産 XXX

金額は含み損失の金額です。

(3)株式交換完全子会社の株主の税務仕訳

株式交換完全子会社の株主の税務上の仕訳は、交換対価が株式のみの場合とそうでない場合に分かれます。

a)交換対価が株式のみの場合

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
株式交換完全親会社株式 XXX 株式交換完全子会社株式 XXX

金額は株式交換完全子会社の株主における株式交換完全子会社株式の株式交換前の帳簿価格を引き継ぎます。

b)交換対価が上記以外の場合

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
交換対価 時価 株式交換完全子会社株式 簿価

上記の差額は譲渡損益となり、譲渡損失の場合は借方に、譲渡利益の場合は貸方に計上されます。譲渡利益が出る場合については課税されます。

無対価株式交換の会計処理

無対価株式交換には、会計処理に関する明文規定が存在しないため、状況によってさまざまな会計処理が考えられます。実務では専門家によくご相談下さい。

この記事を書いたライター

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