近年、中小企業のほとんどが人手不足の状態となっています。これは別に一般企業に限ったことではなく、会計事務所でも同様の状態が続いており、そこで働く税理士や事務員のオーバーワークが問題となっています。
大手の会計事務所でも人手不足から、求人広告の際、給料や待遇面で好条件を提示するなど、事務所維持のため人材確保に努めています。
一方、人件費をかけることができない中小会計事務所は、必要な人材の確保すら難しい状態です。
なぜ、会計事務所では深刻な人手不足となってしまったのでしょうか?
今回は、会計事務所が人手不足になった原因についてお話したいと思います。
多くの企業が副業を認めるようになり、国としても老後資金の確保を国民に望むなど、副業やダブルワーク、独立開業をする人が増えてきました。その結果、確定申告する人は以前より多くなっていると考えられます。
ほとんどの人は確定申告を自分でするのは難しいため、会計事務所に依頼します。しかし、会計事務所側にも受けられるキャパシティーは限られています。
なぜなら、全ての人が同じ時期に確定申告をするためです。
日本の会社は12月決算や3月決算が多いですが、他の月の会社もあります。しかし、個人については、全ての人が12月末で締めて、申告・納税を翌年の2月16日から3月15日までに行わなければなりません。
確定申告が一時期に集中し、その数も多くなっていることが、会計事務所が人手不足に陥る理由となっているのは間違いないでしょう。経験の浅いスタッフには簡単な仕事を任せて、経験がある税理士などに難しい内容の仕事を任せたりするなど、会計事務所内でも作業の効率化が求められています。
日本社会全体が高齢化の問題を抱えていますが、会計事務所においても同じことが言えます。
会計事務所は基本的には税理士資格保有者が主な業務を行っています。この税理士の絶対数自体が減少しています。というのも税理士になるためには難しい税理士試験に合格しなければなりません。逆に言えばなかなか合格できないのです。このことは、税理士業界全体の高齢化へと進んでいきます。
高齢となった税理士は徐々に退職し、そのまま引退していきます。しかし、新たに税理士となる人が少ないため、結果として税理士の数は減っていくことになります。
会計事務所は何も税理士資格保有者だけで運営されているわけではありません。
ほとんどの場合、税理士が所長を務め、数人の税理士の資格保有者と資格をもっていない事務員がいるのが一般的です。会計事務所の仕事は資格がなくてもできる仕事がたくさんあります。
具体的には、日々の取引データの入力や伝票整理、資料作成、会計記帳といった作業を行います。こういった作業や計算は、毎年の確定申告書を作成するための基礎となる大変重要な業務と言えます。
また、税務申告書類や各種資料を分類して、棚や倉庫にきちんと保管する資料整理(ファイリング)も事務員が担う業務となるでしょう。
その他、電話応対や接客、税理士のスケジュール管理など秘書のような業務を行う場合もあります。
このように事務員の作業は多岐にわたり、その必要性があるにもかかわらず、直接、事務所の売上にはつながるわけではありません。従って、固定費を抑えたい小規模会計事務所などは事務員の給料を安くせざるを得ない状態になってしまいます。
当然、事務員を募集しても、給料が安いため、なかなか人材を集めることができず、ここでも人手不足につながります。
前述したように、税理士業界全体が高齢化しており、近年のIT化の波についていけてないのではないかと感じています。中には、ソロバンを使っているお爺ちゃん税理士も未だに見かけます。
そういった会計事務所でも、さすがに会計ソフトは導入しているものの、電子申告を利用せず、紙媒体での申告書の提出を行っている事務所もあります。当然、資料の保存はすべて紙媒体ですので、保管するためのコストもかかっています。
また、顧問先への月次訪問にしても、毎月訪問する必要があるのか疑問に感じます。確かに悩み相談などは顔を突き合わせた方がスムーズにいくというメリットはありますが、クラウド会計やテレビ電話などを利用すれば、毎月訪問しなくてもすむと考えられます。
大手の会計事務所では、業務の効率化をどんどん進めていますが、中小の会計事務所では昔からの非効率なやり方をなかなか変えられず、結果としてコストがかかり、このことが事務員の給料を上げることができない原因の一つとなっていると考えられます。
今回は、会計事務所の人手不足についてお話しましたが、いかがだったでしょうか。
確定申告をする人は今後、ますます増えていくでしょう。一方、それを受け入れる会計事務所は受け入れる準備ができていない状態です。従って、このままでは人手不足に拍車がかかることになります。
そうならないように、会計事務所内での業務の効率化は急務と考えられます。ITを活用してどんどん業務を効率化していかなければなりません。