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バイアウトとは?4つ手法と各メリット・デメリットについて解説します!

HUPRO 編集部
バイアウトとは?4つ手法と各メリット・デメリットについて解説します!

バイアウトとは 、M&A の手法の一つ。企業の株式を買い取ることで経営権を取得し、買収することを指します。最近では IPO と共に起業における出口戦略として、起業家や投資家の注目を集めている手法なのです。今回はバイアウトについて詳しく解説します。

バイアウトの4つの手法・その意味と目的を解説

バイアウトは、誰が株式を買収するかによって、その手法が4つに分けられます。それぞれのバイアウトについての概要を詳しく説明していきます。
また、バイアウトの手法のなかでも、買収対象企業の経営陣の同意を得ずに実施されるものは敵対的買収(hostile takeover)と呼ばれ、社会からの注目を集めます。

マネジメントバイアウト(MBO)

マネジメントバイアウト(Management Buyout:MBO)とは、現経営陣や経営に関与しているクラスの人が株式を買い取って経営権を取得することです。主な目的としては経営体制の見直しや、上場廃止などが挙げられます。

MBOが行われる目的は、企業の規模によって異なります。
大企業におけるマネジメントバイアウトは、経営権の完全取得や、外国人株主による増配圧力からの回避など上場廃止を目的に行われることが多いです。

株式買取のための費用は多額に上るため、その調達のために「特別目的会社」を設立し金融機関などから資金提供を受けて行うケースが一般的です。

有名な事例としては、2006年に行われたすかいらーく、2007年のサンスター、2009年の吉本興業、2010年の幻冬舎や2011年のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、 2017年の日立工機などがあります。

上場を維持するためのコスト削減、抜本的な経営改革や中長期的な利益を見据えた経営などを目指して行われたものです。

MBOについては、上場企業など大企業が行うものと思われがちですが、中小企業については後継者問題を解決する手段として、会社幹部に経営権を引き継がせる方法として MBO が使われています

MBOについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご一読ください。

エンプロイーバイアウト(EBO)

エンプロイーバイアウト(Employee Buyout:EBO)とは、従業員が企業の株式を取得することで経営権を取得する方法です。経営者が親族や役員などに後継者がおらず、従業員に対して事業承継を行う場合などに活用されています。
従業員側が、株式を取得するだけの資金を用意しなければならないことが課題です。

EBOの事例はなかなかありませんが、かつて福岡の太陽電池メーカーMSKが中国企業サンテックパワーの買収を受け、工場閉鎖による失業を避けるために従業員によって新会社の設立を行った事例があり、「NHKスペシャル」や「ガイアの夜明け」でも取り上げられました。

EBOについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご一読ください。

参考:社員みんなで会社を買った~地方発”EBO”の挑戦~|NHK
参考:第288回 甦れ!俺たちの工場~“モノ作りニッポン”再生物語~|TV TOKYO

エンプロイーバイアウト(EBO)

レバレッジドバイアウト(LBO)

レバレッジドバイアウト(Leveraged Buyout:LBO)は、譲受企業が譲渡対象企業の資産や、これから期待される将来のキャッシュフローを担保として、金融機関などから資金調達を行って買収を行う手法です。

自己資金が少なくても買収を行うことができる反面、金融機関からの借入金は買収された企業の負債となるため、事業を成長させてキャッシュフローから返済していかなければなりません。

つまり買収される企業が、既にギリギリの経営を行っているような場合は、借入金の利子の返済で経営が圧迫され、買収した会社自体が潰れてしまうということがあります。

LBOは、社外の人間が株式の買収を行うという点がMBOやEBOと大きく異なります。LBOは、ある企業が他の企業を買収する際に、買収費用を賄うために多額の借金をして行う買収のことですから、多くの場合、買収される企業の資産は、買収する企業の資産とともにローンの担保として使用されます。

通常、資本コストが株式よりも低い負債を使用することで、買収資金調達の全体的なコストを削減することができます。これは、配当金ではなく利息を支払うことで法人税が軽減されるためです。しかし、借り入れというレバレッジをかけていることには変わりないので、その分だけ投資リスクが高くなります。

有名な事例については、ソフトバンクがかつてイギリスの通信会社ボーダフォンを買収した事例が上げられます。

2006年当時、1兆7000億円のうち1兆円を資金調達、ソフトバンクはボーダフォンの日本法人の設備を利用して携帯電話市場に打って出ることに成功しました。今ではソフトバンクといえば携帯電話会社のイメージですから、この買収は成功と言えるでしょう。

また、海外に目を向ければ、2012年に Facebook によるInstagram のバイアウトがありました。その金額は何と10億ドル

2010年にスタートしたばかりの Instagram はこの時点では実は売り上げは0。 しかしその事業内容と、すでに1億に近いユーザーを得ていたことからその可能性が買われたのです。
スタートから2年で10億ドルでバイアウト!
これぞ IT スタートアップのスピード感あるイグジットですね。

LBOについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご一読ください。

マネジメントアンドエンプロイーバイアウト(MEBO)

マネジメントアンドエンプロイーバイアウト(Management and Employee Buyout:MEBO)は、企業の経営陣と従業員が一体となって、金融機関などの支援を受け、企業の所有者から株式などを買収する取引のことです。

事業承継を前提とするケースが一般的で 、MEBOに参加する従業員は買収後の経営にも積極的に参加することになります 。

MBO とEBOを組み合わせたような手法で、経営陣や従業員が自身で会社に出資し資本参画するということで経営に対するモチベーションアップが期待できるのが特徴です 。

事例としては、株式会社日本レーザーの事例があげられます。

独自経営を行い、親会社の影響を排除するために、「JLCホールディングス」という持株会社(特定目的会社)を設立し、MEBOを実施しました。
現在ほぼ60人の社員がおりますが、パート社員と派遣社員を除く、嘱託を含む全社員(50人)が株主です。

参考:日本レーザー 夢と志の経営

バイアウトの手法別メリット・デメリット

では、次に各バイアウトの手法のメリット・デメリットについて解説していきます。

マネジメントバイアウト(MBO)

マネジメントバイアウトは、文字通り、経営者が自らの企業を買収するものであって、いわば所有と経営の一致、あるいは所有と支配の一致を目指したものです。

元来 MBO は、後継者のいない非公開企業のオーナーが、会社の役員などに経営を譲ることにより、後継者問題を解決するためや、企業の非中核的な事業を、その事業を管掌してきた経営陣に譲って、経営の自由度を高め、機動的に経営するために行われる(親会社化からの独立)ために実施される事例が多くありました。

しかし近年では、上場企業の経営陣や創業者一族が、単独、あるいは投資ファンド(主にプライベート・エクイティ・ファンド)、銀行等金融機関と提携して、対象企業を非上場化する事例が増加しています。

《メリット》
現経営陣や同じクラスの人が株式を買い取ることで経営権を獲得するので、他の株主に意見されることなく自由に経営方針を決めることができます。そのため、中長期的な計画を立てたり、経営体制が良くない企業は改めて構築できるタイミングになります。また、中小企業は後継者不足の解決になるため、メリットがあります。

MBOは、上場企業でも非上場企業でも行われます。上場企業でMBOが行われると、その企業は非公開になります。会社が非公開になることで得られる利益には、上場・登録コストの削減、規制や情報開示のオーバーヘッドの削減などがあります。

その他のメリットとしては、会社を所有しているため、経営者の効率が向上し、それに伴い、より懸命に働くインセンティブが高まることが挙げられます。彼らは、長期的に会社に利益をもたらすような決断を下すようになります。つまり、長期的に会社のためになるような意思決定をする可能性が高くなるというメリットがあります

ときには、経営者が株式の過半数を購入できるほど裕福でない場合もあります。そのため、負債やプライベート・エクイティ・ファンドを利用して追加資金を調達しなければならないことも考えられるでしょう。そのため、取引の大部分が負債で賄われ、残りの株式は個人投資家が保有することになります。このような負債の負担によって、会社の経営をよりスリムで効率的にすることが可能となります。

《デメリット》
株式を経営陣のみで買収してしまうと、他社の目が入らなくなり、経営の監視能力が低くなってしまう可能性があります。また、上場廃止となると資金調達が難しくなったり、経営陣の意見に大きく左右されるため、必ずしも経営体制が改善されるとは言い難いです。既存株主にとっては意見を通せなくなるため、反感を買ってしまう恐れもあります。

エンプロイーバイアウト(EBO)

エンプロイ―バイアウトとは、企業をその企業で働く従業員が買収する、あるいは従業員に買収させることを言います。従業員による買収はバイアウトの手法としては非常に稀で、通常は非常に小さな会社で行われます。

従業員がオーナーから会社を買い取り、時間をかけて会社のシェアを拡大していき、完全なオーナーとなるのが一般的です。また、必要に迫られて従業員がオーナーシップに関わることもあります。会社の成功に対する責任をオーナーと共有するために、あるいは上級管理職が単独でマネジメント・バイアウトを実行するのに十分な株式を持っていないためにエンプロイ―バイアウトが実行されることもあります。

《メリット》
事業継承をしたいが親族に後継者がいないという場合、後継者候補の従業員に自社株買いをさせることで、実質経営を継承することができます。経営権を持つのが従業員となるため、現経営陣の意向が強く表れず、企業再編を可能にもします

《デメリット》
後継者候補の従業員が株式を購入できるほどの資金をもっていないと、借り入れを行うなど資金調達の必要性がでてきます。金融機関の審査は厳しいものですので、万が一借り入れができなかった場合、事業継承が行えない事態がはっせいしてしまいます。

レバレッジドバイアウト(LBO)

レバレッジドバイアウトとは、梃子の原理を用いた企業買収の方法です。銀行からの借入金か起債による負債かのどちらかによって標的企業を買収する手法で、標的企業の規模が買収者のそれの数倍、ときには数十倍となることもありえます。

《メリット》
金融機関からの借入金は買収された企業の負債となりますので、買収を行う企業は資金をかけずに大きな利益を得られる可能性があります。借入金はキャッシュフローから返済していきますが、利息の返済は損金にできるため、節税効果があります。

《デメリット》
買収される企業の状態が著しく悪かったり、事業関連性がなく効果的なアプローチができなかったりして結果的に買収後の立て直しがうまくいかなかった場合、投資額を回収できず失敗となる可能性があります。また、借り入れの金利が高い傾向にあり、返済の負担があることも懸念点となります。

レバレッジドバイアウトにおいて、ファイナンシャル・スポンサーは、非常に高いレバレッジ(株主資本に対する負債の比率)を用いることでリターンを高めているため、買収資金を調達するためにできるだけ多くの負債を用いるインセンティブを持っています。これにより、多くの場合、企業が「過剰なレバレッジ」をかけられ、負債を返済するのに十分なキャッシュフローが得られず、債務超過に陥ったり、デット・エクイティ・スワップにより株式所有者が事業の支配権を貸し手に奪われたりする事態が実際に発生しています。

イグジット手法としてバイアウトの魅力

企業の創業者が、起業のために投資した資金を回収する、いわゆるイグジット( EXIT)の手法としては、以前はIPOすなわち株式を新規公開して上場するやり方が主流でした。
しかし、IPOには、以下のようなデメリットがあります。

事前の準備にコストがかかる
短くても2~3年の程度の時間がかかってしまう
証券会社と証券取引所の厳しい審査を受ける
自社株に市場でいくらの値がつくのか、上場するまで分からない

また、仮に無事に上場を果たしたとしても、オーナー経営者が自分で保有する株を売りさばくことによる市場に対して与える懸念は大きいため、個人の利益にすることは難しいというのがIPOの特徴です。

上場企業となれば、会計監査を定期的に受ける義務が課されるなど、経営の透明性を確保するために内部管理体制を始めとした経営体制の整備も必要になってきます。

これに対して、バイアウトは、条件が合う売却先が見つかれば数か月以内に売却確定できるという、非常にスピーディーなところがイグジットを目的とする創業者にとって魅力的な手段です。

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まとめ

規模の大小を問わず、様々な場面でバイアウトの手法が活用されています。
中小企業の事業承継が問題になっている日本では、今後多くのバイアウトが行われることになるでしょう。

しかし、企業には、事業だけでなくそこで働く人たちもいます。
重要なのは、バイアウトしたその後に、企業価値をいかにして高めるかというところがポイントです。バイアウトまでではなく、バイアウト後のビジョンを見据えることが大事になるでしょう。

この記事を書いたライター

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