難関の国家資格である税理士ですが、その登録人数は8万人弱になっており、業界内での競争は激しくなっています。そこで、新たに別の資格を取り、他の税理士と差別化を図ろうという動きが広まりつつあります。中でも注目されているのが社労士です。今回は、税理士が社労士として登録するメリットについて解説します。
社労士とは、正式名称を「社会保険労務士」といい、社会保険労務士法に基づいた国家資格です。「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」を目的として、業務を行っています。
その業務は、企業における採用から退職までの、「労働・社会保険に関する諸問題」や「年金の相談」に応じるなどその業務の内容は広範囲に渡ります。
1.労働社会保険諸法令に基づく申請書等及び帳簿書類の作成
2.申請書等の提出代行
3.申請等についての事務代理
4.都道府県労働局及び都道府県労働委員会における個別労働関係紛争のあっせん手続の代理
5.都道府県労働局における男女雇用機会均等法、パート労働法及び育児・介護休業法の調停の手続
6.代理
7.個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続における当事者の代理
(紛争価額が120万円を超える事件は弁護士との共同受任が必要)
8.労務管理その他の労働及び社会保険に関する事項についての相談及び指導
このうち、1~3の業務については、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ、報酬を得て、業として行ってはならないこととされています。
なお、4~6の業務については、紛争解決手続代理業務試験に合格し、社会保険労務士名簿にその旨の付記を受けた社会保険労務士(以下「特定社会保険労務士」という。)及び特定社会保険労務士が所属する社会保険労務士法人以外は、他人の求めに応じ、報酬を得て、業として行ってはならないこととされています。
税理士は、税金に関する手続きの専門家であるのに対し、
社労士は、年金や公的的保険、労働法に関する専門家ということで、専門分野がそれぞれ異なります。
しかしその業務内容を見ていただければ分かると思いますが、何の業務も企業経営には欠かせない分野であり多くの法人は、必要に応じて、税理士そして社労士とそれぞれ顧問契約あるいは単発で依頼をしていることが多いのです。
例えば、法人成りにおいては、社会保険の加入や年金制度の届出など、社労士の力を借りる場面が多いと言えます。
また、従業員の給与変更に際しての税金の手続きは税理士事務所へ依頼しますが、それに伴う社会保険料の社労士へとそれぞれ依頼が必要になるのです。
クライアントからしてみると、必要に応じてこの件は税理士、この件は社労士といった対応をしなければならないとすると、それに応じた時間も手間もかかってしまいます。相談する窓口はまとまっていた方が、明らかに使い勝手が良いので依頼しやすくなります。
もちろん税理士側にとっても、税理士だけでなく社労士のダブルライセンスがあることで、両方の仕事を受注できるのですから、そのぶん手数料収入も増え、事務所の経営を安定化させることにつながります。
クライアントにとっては、頼りになる事務所として知り合いの別企業を紹介してもらえたり、保険の加入を促すことができたりなど、プラスアルファの収入も望めるでしょう
税理士自体は定年退職がない仕事なので、資格保有者はここ20年ほど、毎年増加している状況です。令和元年10月末日現在で78,570名が税理士として登録されています。
これから税理士として生き残りを図るためにも、他の資格も合わせて取っておくというのが経営戦略として有効な手段であると言えるのではないでしょうか。
ここまで読んできて、「それなら、税理士があえてダブルライセンスで社労士を取るのではなく、事務所で社労士を雇用して社会保険労務の業務を一緒に行えば良いのでは?」と思われたかもしれませんね。
実は、社労士以外の他士業の事務所(例えば税理士事務所)や、コンサルティング会社等が社労士の業務(社会保険労務士法第2条第1号及び2号に規定された労働・社会保険関係手続業務)を行うことは、社会保険労務士法により原則として禁止されています。
つまり、社労士はあくまで社労士事務所で業務を行う必要があり、ひとつの事務所に税理士と社労士が所属してそれぞれの業務を行うのはコンプライアンス違反なのです。
また、他士業の事務所やコンサルティング会社等の下請けのような形で、社労士が業務を引き受けることもできません。この抜け道の1つが、他士業の資格とのダブルライセンスなのです。
例えば、一人の税理士が社会保険労務士の資格も持ち、税理士として、また、開業社会保険労務士(「勤務登録」や「その他登録」は不可)として税理士会及び社会保険労務士会に登録している場合です。
このパターンのみ、同一事務所でそれぞれ税理士事務所と社会保険労務士事務所を設置して業務を行うことができます。
また、弁護士であれば、無試験で都道府県社会保険労務士会に社会保険労務士として登録することができますので、社会保険労務士の業務を、法令に基づく正当な行為として行うことができます。
そのため、税理士法人などでは、直接雇用するのではなく、社会保険労務士法人・社会保険労務士事務所を併設するなどして、法令違反にならないように対策をしているのです。
社労士になるためには、社会保険労務士試験の合格などにより、都道府県の社会保険労務士弁護名簿に登録をする必要があります。
社労士試験は、合格率が非常に低い難関試験です。
2018年度は6.3%、ここ最近では、最も高い年でも10%を切っており、3%未満の年もありました。
社労士の試験には、学歴や実務経験、あるいは国家資格などで受験要件が定められています。詳しくは以下の社会保険労務士試験のオフィシャルサイトをご確認ください
超がつく難関資格である「税理士」試験に合格しているのであれば、社労士試験もそこまで困難ではないように感じられるかもしれませんが、社労士試験の範囲は税理士試験とは異なりますし、科目合格のシステムがないので、8科目全てを一度に合格を目指さなければいけません。
税理士と社労士は共にニーズが高い資格でありながらも、ダブルライセンスの保有者はまだまだ少なく、両方合格すれば自分の市場価値をかなり高めることができるでしょう。
今後のキャリアアップのために資格を目指すのであれば、一度検討してみてはいかがでしょうか。
なお、これからのキャリアについて、どのようにプランニングしたらよいかお悩みの場合は、今までのキャリアの洗い出しと、今後の方向性について、一度転職エージェントのアドバイザーに相談してみるというのもオススメです。
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