企業がどれだけ効率よく資金を活用できているかを見る指標のひとつに「財務レバレッジ」があります。今回は、日本における財務レバレッジの平均値データを業種ごとに確認し、財務レバレッジが高い/低い業種とその特徴、財務レバレッジとROEの関係性について解説していきます。
財務レバレッジに関して基本的なことを知りたい方は下記の記事をご覧ください!
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財務レバレッジとは、企業が自己資本の何倍に該当する資金(総資産)をビジネスに投下しているかを測る数値で、「総資産÷自己資本」の計算式により算出できます。
中小企業庁が発表している「中小企業実態基本調査」によると、日本における財務レバレッジの平均値は、平成29年度は業種全体で2.47でした。
以下、平成21〜29年度の日本における、各業種の財務レバレッジ平均値を表にしました。
出典元:統計で見る日本
日本では、過去9年間において財務レバレッジを次第に縮小させてきた傾向があります。これは、有利子負債による調達の縮小や、自社株取得や配当などの株主還元強化などの取り組みが貢献した結果です。
上記のデータにおいて、財務レバレッジの平均値が高い業種は次の順となります。
宿泊・飲食サービス>生活関連サービス・娯楽>小売>不動産・物品賃貸
財務レバレッジの平均値が高くなりがちな業種の例として、設備投資を必要とする業種が挙げられます。
宿泊業や飲食業、娯楽・エンタテイメント業、不動産業やリース業において財務レバレッジの平均値が高いのは、ホテルや土地、娯楽施設などの高額な設備や先行投資が必要だからです。高額な設備を購入・維持するには企業の自己資本だけでは資金繰りが困難なため、借入などの他人資本が増えることで、財務レバレッジの平均値は上昇します。
また、小売業は製造業などより自己資本比率が低い傾向があるため、財務レバレッジの平均値も高めです。
一方、財務レバレッジの平均値が低い業種は次の順となります。
情報通信>学術研究・専門技術サービス業>製造
財務レバレッジの平均値が低くても済む業種の例として、高い場合とは逆に、設備投資をそれほど必要としない業種が挙げられます。
情報通信業のうちIT・システム関連業や学術研究業などは、優れた人材をいかに集められるかが重要であり、高額な設備投資はあまり必要ではないため、財務レバレッジの平均値は低めです。
財務レバレッジが低めの企業は、借入が少ない安定経営をしているともいえます。反面、株主から預かっている資金を効率的に活用できていないという見方もできます。
自己資本をどれだけ効率的に使って利益を上げられているかを見る指標として重要なのがROE(自己資本利益率)です。
ROEと財務レバレッジは連動しているため、ROEを上げるためには財務レバレッジを上げるべきという考え方も存在します。
しかし、金融機関などからの借入には金利が発生するため、レバレッジを効かせて事業拡大を行うなら、金利分をはるかに超過するリターンが見込めるかどうかの見極めが必要です。
つまり、ROEのためにむやみに財務レバレッジを上げようとするのではなく、中長期的に借入コストを上回るだけの利益をあげられるビジネスを作るという基本に立ち返ることが大切といえます。
日本における財務レバレッジの平均値は、平成29年度では全体平均で2.47であり、財務レバレッジが縮小する傾向で推移しています。
中小企業庁のデータでは、高額な設備投資が必要な業種かどうかで、財務レバレッジの平均値の高低が左右されている点を押さえておくとよいでしょう。