企業がいかに効果的に資金を活用しているかを判断する指標として、大事なものが「財務レバレッジ」「ROE(自己資本利益率)」です。今回は財務レバレッジとは何か、計算式や通常の目安、財務レバレッジが高め/低めの企業例、ROEとの関係性などに関して説明していきます。
財務レバレッジとは、自己資本の何倍にあたる資金(総資本)を事業に投じているかを表す数値です。
財務レバレッジは、次の計算式で算出できます。
財務レバレッジ比率=総資本/自己資本
レバレッジ(leverage)とは「テコ」を表す英語です。テコとは、小さな力で大きな荷物を持ち上げられる道具です。学校で習った「テコの原理」を思い出してみましょう。
つまり、財務レバレッジとは、借入などにより他人資本を増加させ、自己資本の何倍かの総資本を事業に投じることで、資金をいかに効率的に活用しているかを見る指標といえます。
総資本において自己資本がどれだけの割合を占めているかを表す数値が「自己資本比率」であり、企業の安全性を見るのに用いられ次の計算式で算出できます。
自己資本比率=自己資本/総資本
先述した、財務レバレッジの計算式と比べると気づきやすいですが、財務レバレッジと自己資本比率は互いに逆数です。
たとえば、財務レバレッジが上がれば自己資本比率は下がります。
総資本が100の場合
・自己資本が50:財務レバレッジは2倍・自己資本比率は50%
・自己資本が25:財務レバレッジは4倍・自己資本比率は25%
財務レバレッジには、どのくらいの値だと適正といえる目安はあるのでしょうか。
業種や企業規模、企業の成長段階によっても異なりますが、優良企業であるには2倍以下が財務レバレッジの目安といわれています。
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財務レバレッジが2倍とは、事業に投じている資本を構成しているのが、自己資本:他人資本=1:1である状態です。この状態を基準にして考えると、たとえば財務レバレッジが3倍の企業は、他人資本が自己資本の2倍を占めるためバランスが悪いといったように、財務レバレッジの倍数に関して考えやすくなります。
また「財務レバレッジ 目安」に関して下記の記事で公認会計士が詳しく解説!
財務レバレッジの目安を考えるうえで、どのような企業で財務レバレッジが高め/低めに出るのか例を挙げておきます。
上記のように、財務レバレッジが高めな状況だからといって一概に危険な状態とはいえません。
たとえば、創業したばかりの新興企業では、総資本が小さい状態でも積極的に借入を行い設備投資をする必要があるため、財務レバレッジの目安である2倍以下を外れるパターンも存在します。
財務レバレッジが低めの企業は、一般的には安定した経営を行っているといえますが、反面、設備投資などの効率的な資金活用ができていない、積極的ではないという見方も存在します。
財務レバレッジと、同じく経営上の大事な指標であるROEとの関係を説明します。
ROE(自己資本利益率)とは、どれだけ自己資本を効率的に活用して利益を生むことができたか、企業の収益性や効率性を見る指標であり、株式投資などの材料として重要視されています。
ROEが高ければ、少ない自己資本で大きな利益を生み出しているといえるため、ROEの数値を高めるのが目標の企業も多いです。
ROEは次の計算式で算出でき、さらにこの計算式は、3つの要素に分割ができます。
ROE=当期純利益/自己資本 =当期純利益/売上高×売上高/総資本×総資本/自己資本 =売上高利益率×総資本回転率×財務レバレッジ
※売上高利益率=当期純利益/売上高、総資本回転率=売上高/総資本、財務レバレッジ=総資本/自己資本、とそれぞれ表せることから
ROE=売上高利益率×総資本回転率×財務レバレッジという計算式で表せるため、ROEの上昇には「売上高利益率」「総資本回転率」「財務レバレッジ」の3つを上昇させればよいといえます。
つまり、財務レバレッジを上げれば、ROEも高くなるのです。
ROEは資金の効率性を表す数値ともいえます。そのため、借入などの負債(他人資本)を増やすことで、いかに効率的に資金に対してレバレッジを効かせているかを示す指標の財務レバレッジとの連動も納得がいきます。
財務レバレッジとは、自己資本に対してどれだけレバレッジを効かせて資金を事業に投じているかを表しており、目安は2倍以下であるのが傾向です。ROEを上昇させる3つの方法には、財務レバレッジを上昇させる方法も含まれます。財務レバレッジとROEの関係性がわかる計算式も覚えておくとよいでしょう。
下記記事では、財務レバレッジの平均についても解説しています!