分配可能限度額という言葉があります。会社法に規定されている言葉となりますが、配当や自己株式の取得の際に守らなければならない基準です。
今回は、この分配可能限度額はどのように計算されるのか、限度額を超えた場合はどうなるか等を解説します。
分配可能限度額は会社法461条に記載されています。分配可能限度額とは、配当や自己株の取得は会社の純資産における利益剰余金を基礎として計算された金額以上に行ってはいけないというものです。
これは、配当や自己株式の取得を際限なく行ってしまうと会社の財産が無くなってしまい、銀行等の債権者への返済原資が無くなってしまう可能性があるためです。また、配当をしすぎて会社が傾いてしまうと、そのまま倒産に繋がり株式の価値がなくなってしまう可能性があります。これらの理由から、株主に配当をしたり自己株式の取得をしたりできる最高額の分配可能限度額が定められています。
分配可能限度額は以下の通りに計算されます。
まず、正規の決算を組んで、決算日において剰余金がいくらあるかを確定します。そこから、配当をしたい時期が決定したらそこまでの剰余金の増減を計算し、配当をしたい時期の剰余金を確定させます。そこから、自己株式の帳簿残高を差し引いて配当可能限度額を算定します。
文字で書くとややこしいのですが、簡単に言えば利益剰余金やその他資本剰余金以上に配当や自己株式を取得してはいけないということを覚えておけば、よほど大丈夫でしょう。もっと言うと、剰余金ギリギリの会社であれば配当をするほどの余裕はないはずですので、株主から配当をせがまれても断る勇気を持つことが重要となります。ただし、自己株式の取得はうっかりということが考えられる為、こちらについては注意が必要となります。
分配可能限度額を超えた配当は、違法配当と呼ばれ、文字通り違法な配当となります。
健全な会社であり、剰余金が十分にある会社であれば起こらないのですが、少しでも分配可能限度額を超えてしまえば、ついうっかりであったとしても違法配当となってしまいます。
また、中間決算では分配可能と考えられていたにもかかわらず、決算時点では剰余金が無くなっており、配当原資が無くなっている場合にも違法配当とされてしまいます。
中小企業では中間配当をすることはあまりないのですが、上場会社では配当はスケジュールを公表している会社がほとんどですので、意外と起こりうる話となっています。
分配可能限度額を超えた配当は違法配当となります。この時違法配当に関連した人物には責任や義務が生じます。
会社法462条において以下の文言が記載されています。
分配可能限度額を超えた配当は違法となりますが、健全な会社であればよほど引っかかることは少ないでしょう。しかし、配当をするのに十分な剰余金が無いような会社では思わず限度額を超えた配当や自己株式の取得をしてしまう危険があります。
違法配当にならないように、中間配当をすることができる会社であっても配当を抑えつつ、株主へ説明できるように準備をしておくことが大切でしょう。