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分配可能限度額とは?限度額を超えた配当は違法!?

公認会計士 大国光大
分配可能限度額とは?限度額を超えた配当は違法!?

分配可能限度額という言葉があります。会社法に規定されている言葉となりますが、配当や自己株式の取得の際に守らなければならない基準です。
今回は、この分配可能限度額はどのように計算されるのか、限度額を超えた場合はどうなるか等を解説します。

分配可能限度額とは?

分配可能限度額は会社法461条に記載されています。分配可能限度額とは、配当や自己株の取得は会社の純資産における利益剰余金を基礎として計算された金額以上に行ってはいけないというものです。

これは、配当や自己株式の取得を際限なく行ってしまうと会社の財産が無くなってしまい、銀行等の債権者への返済原資が無くなってしまう可能性があるためです。また、配当をしすぎて会社が傾いてしまうと、そのまま倒産に繋がり株式の価値がなくなってしまう可能性があります。これらの理由から、株主に配当をしたり自己株式の取得をしたりできる最高額の分配可能限度額が定められています。

分配可能限度額の計算式は?

分配可能限度額は以下の通りに計算されます。

まず、正規の決算を組んで、決算日において剰余金がいくらあるかを確定します。そこから、配当をしたい時期が決定したらそこまでの剰余金の増減を計算し、配当をしたい時期の剰余金を確定させます。そこから、自己株式の帳簿残高を差し引いて配当可能限度額を算定します。

文字で書くとややこしいのですが、簡単に言えば利益剰余金やその他資本剰余金以上に配当や自己株式を取得してはいけないということを覚えておけば、よほど大丈夫でしょう。もっと言うと、剰余金ギリギリの会社であれば配当をするほどの余裕はないはずですので、株主から配当をせがまれても断る勇気を持つことが重要となります。ただし、自己株式の取得はうっかりということが考えられる為、こちらについては注意が必要となります。

分配可能限度額を超えた配当は違法!?

分配可能限度額を超えた配当は、違法配当と呼ばれ、文字通り違法な配当となります。

健全な会社であり、剰余金が十分にある会社であれば起こらないのですが、少しでも分配可能限度額を超えてしまえば、ついうっかりであったとしても違法配当となってしまいます。
また、中間決算では分配可能と考えられていたにもかかわらず、決算時点では剰余金が無くなっており、配当原資が無くなっている場合にも違法配当とされてしまいます。
中小企業では中間配当をすることはあまりないのですが、上場会社では配当はスケジュールを公表している会社がほとんどですので、意外と起こりうる話となっています。

分配可能限度額を超えた配当をすると罪になる?

分配可能限度額を超えた配当は違法配当となります。この時違法配当に関連した人物には責任や義務が生じます
会社法462条において以下の文言が記載されています。

462条
1.株式会社が剰余金の違法配当をした場合には、違法配当を受けた者並びに違法配当に関する職務を行った業務執行者(業務執行取締役や執行役など)及び違法配当が次の各号に掲げるものである場合の当該各号に定める者は、当該株式会社に対し、連帯して、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う。
2.前項の規定にかかわらず、業務執行者及び同項各号に定める者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の義務を負わない。
3.第1項の規定により業務執行者及び同項各号に定める者の負う義務は、免除することができない。ただし、前条第1項各号に掲げる行為の時における分配可能額を限度として当該義務を免除することについて総株主の同意がある場合は、この限りでない。
違法配当が行われた場合に責任を負うのは次の三者となります。
・金銭の交付を受けた株主
・違法配当についての執行をした業務執行者
・株主総会・取締役会で違法配当に関する議案を提案した取締役
株主が受け取った違法配当について、上記の三者が連帯して会社に支払う義務を負います。ただし、業務執行者や取締役については過失がないことが証明できるのであれば責任は免除となります。
ちなみに、株主の全てが同意することでこれらの責任を免除することができますが、あくまでも配当可能限度額を限度とした免除となるので注意が必要です。また、上場会社であれば株主が総同意することは現実的にあり得ない為基本的には責任免除はないものと考えても良いと言えます。

まとめ

分配可能限度額を超えた配当は違法となりますが、健全な会社であればよほど引っかかることは少ないでしょう。しかし、配当をするのに十分な剰余金が無いような会社では思わず限度額を超えた配当や自己株式の取得をしてしまう危険があります。
違法配当にならないように、中間配当をすることができる会社であっても配当を抑えつつ、株主へ説明できるように準備をしておくことが大切でしょう。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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