原価管理とは、利益管理の一環として製品の製造原価を管理することです。主に製造業で用いられてきた「原価」の概念ですが、近年では幅広い業種で活用されるようになり、原価管理のことを「コスト・マネジメント」とも言うようになっています。本記事では原価管理についてその目的や必要性などを解説します。
原価管理については、1962年の大蔵省(当時、今の財務省)の企業会計審議会によってその基準が制定されています。
それによると……
「原価管理とは,原価の標準を設定してこれを指示し,原価の実際の発生額を計算記録し,これを標準と比較して,その差異の原因を分析し,これに関する資料を経営管理者に報告し,原価能率を増進する措置を講ずることをいう。」
出典: 大蔵省 原価計算基準
つまり、まず原価計算を行う。そしてあるべき標準原価との差異を比較し、それに対して対策を行って、原価をなるべく一定に保つという事を差します。
企業の利益は、売上から原価を引いたものから成り立っています。つまり、原価を管理することは、利益に大きな影響を与えるのです。
よく聞く「原価計算」という言葉は、そもそもの製品の原価を計算するための技術であり、原価管理に使われる基準となります。
例えば目の前にあるスマホ1つをとっても、部品などの「材料費」そして製造にかかる人件費である「労務費」、そして外注加工先に払った費用や、製品製作工場の減価償却費や固定資産税などの「経費」など多種多様なお金が掛かっています。
原価がわからないと、そもそも商品をいくらで販売すべきかがわかりません。そのため、原価計算の技術というのは原価を管理する上で不可欠です。
原価管理は、一つの製品をいくらで売ればどのくらいの利益が出るのかということを原価計算によって割り出し、製品の価格に反映させる取り組みのことをいいます。
原価自体は下げることができれば利益がその分上がりますが、商品の品質を下げてしまっては仕方がありません。あくまで品質は守りつつ、原価を下げるというのがポイントです。
逆に原価管理を適切に行えないと、商品価格よりも原価が高額になってしまい、売れば売る程「赤字」になってしまうこともあるので、非常に重要なプロセスなのです。
原価管理は、具体的には以下の3ステップで行われます。
製品企画を行う際に、その製品の原価をまず決めることです。
例えば1000円で販売する商品から500円の利益を得たい場合は、原価を500円でおさえる必要があります。
原価企画で設定した原価に対して、実際の原価を維持・調整します。実際にその商品を作ってみたら700円の原価がかかってしまったとしたら200円の差額が出ます。
500円に原価を抑えるために、原材料の仕入れ先を変更したり、ランクを下げたり、大量購入で値下げしてもらったり、あるいは製造プロセスを変更して人件費を削減したりなど、その努力は様々です。
さらに、当初は決めた原価で収まっていたとしても、原材料費が高騰したり、使っていた機械が故障して修理費が必要になったりなど、製造中も様々な事が起こります。しかし、原価を維持するためにあらゆる方策を講じます。
例えば、お菓子の価格はそのままでも量が減ったりしているのは、原価高騰に伴う苦肉の策です。商品の量をそのままにして価格を上げるよりも、量を減らして価格維持に努めているといえます。しかし、ある意味適切な原価維持ができていない結果でもあるのです。
とはいえ、原価をあまりにも維持することにこだわると、仕入れ元や下請け企業の儲けがなくなってしまい、破たんするケースもあるので、原価管理は非常に難しい側面があるといえます。
さらに、原価を企画した通りに押さえられたら、さらに安く抑えるための改善努力を行います。例えば、他の商品と製造プロセスを一元化してみたり、同じ材料で別の商品を作ってみたりなど、あらゆる観点から原価改善に向けた取り組みを考え、原価を下げるために実施します。原価を下げることで、利益を上げることができるからです。
原材料費や燃料費・為替レートは常に変動し続ける中、原価管理を行わずして利益を確保することは難しい状況にあります。
原価を管理することで、利益が発生する損益分岐点を把握することができ、戦略的な販売計画を立てることができるようになります。
また、原価管理への取り組みのノウハウを貯めることで、これからの新製品を開発するにあたってのコスト計算や適正な価格設定を行うことができるようになります。長年原価管理に取り組んでいる会社では、新しく製造する商品1個あたりの適正原価が経験の蓄積を通じて分かってきます。
逆にいうと、製造している商品の原価の、どの部分に無駄があるかが分かるということです。原価の無駄が分かることで、原価改善に向けた効果的な施策を立案することができるようになります。ひいては利益率の向上につながるといえます。
原価管理を徹底することで損益分岐点や商品原価を把握できるため、その情報を判断材料として長期的な経営計画を立てることができます。長期的かつ現実的な経営計画があることでステークホルダーからの信頼も厚くなるため、経営資金が自然と集まり、成長できる企業体質に変化することができます。
原価は製造会社にのみ関係あるものと考えられがちですが、手がける会社にも原価は存在します。サービスを提供する場合は労務費や諸経費等がかかり、ITシステム等もサービスを提供するための設備費用として計算できます。それらのサービス原価を把握することで、製造会社と同様に「原価企画」「原価維持」「原価改善」に取り組めるため、高収益な企業体質を作ることができるでしょう。
高収益な企業体質を作り上げるために、原価計算を行った上での原価管理はあらゆる業種に必要なプロセスです。
もし、製造業以外で原価についてあまり深く考えていなかったという事であれば、ぜひ一度、自らのサービス原価を計算し、そこから導き出される利益を把握したうえで、価格設定を見直してみてはいかがでしょうか。
当コラム内では、原価管理についての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。
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