転職をして中途採用された場合、その年の年末調整はどのようになるのでしょうか。実は、中途採用の場合は、転職先の企業で別途手続きが必要になります。これから転職をする人や、転職をして中途採用した人は参考にしてください。今回は中途採用された場合の年末調整の手続きについて解説していきます。
所得税は年始の1月から年末の12月にかけてかかるものなので、勤務先においては、年間の所得を見積もり概算によって税額を計算して源泉徴収をします。そのため、源泉徴収をしていた所得税と、年末に判明するその人が本当に納税すべき税額が同じとは限らないので、差額が出た場合に調整をする手続きを年末調整というのです。
また、所得税は所得額すべてに対してかかるものではありません。所得額よりさまざまな控除を引いた額に対し、課税される仕組みとなっているのです。そのため、控除すべきもので、勤務先が把握できないものに関しては、本人が年末調整の手続きの際に書類を提出する必要があります。
本人が勤務先に申告する必要のあう控除としては、以下のようなものが挙げられます。
・扶養をしている配偶者がいる場合(配偶者特別控除、配偶者控除)
・16歳以上または23際未満の子どもがいる場合(扶養控除)
・一定の条件を満たしている地震保険や生命保険に加入をし、保険料を支払った場合(地震保険料控除、生命保険料控除)
11月中旬から下旬にかけて勤務先より「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」や「給与所得者の扶養控除等申告書」が配布されます。そして、この書類に必要な事項を記入して提出すれば、これらの控除をもとに所得税額が改めて計算されて、払いすぎていた所得税が払い戻されることになります。これが、年末調整です。
1月から12月までの1年間の途中で中途採用された場合は、年末調整は中途採用された勤務先で行うことになります。つまり、年末調整が行われる時期に所属をしている勤務先で、年末調整の手続きが必要になるということです。所得税は1年間の所得をもとに割り出されるものなので、中途採用前の前職の勤務先の「給与所得の源泉徴収票」が必要となります。前職の勤務先からこの書類を貰わないと、中途採用された勤務先での年末調整ができません。
例えば、2018年12月に前職を退職して2019年1月に前職の12月分の給与が支払われたとしましょう。このような場合、2019年のうちに中途採用されたのであれば、前職の勤務先より2019年の「給与所得の源泉徴収票」が必要になります。2018年のものではないので、注意が必要です。また、2018年に前職を退職し、前職の最後の給与が2018年末までに支給されたとしましょう。これ以降、賞与なども何も受け取っていない場合であれば、2019年に中途採用された勤務先に前職の「給与所得の源泉徴収票」を提出する必要はありません。ただし、2018年の確定申告は自分自身で行わなければならないので、気をつけましょう。
多くの会社では、10月より11月にかけて年末調整の作業をします。そのため、この時期か、もう少し早い時期に「給与所得の源泉徴収票」を前職の勤務先よりもらってきてほしい旨を中途採用者に伝えましょう。
ところが「給与所得の源泉徴収票」を従業員に渡すことは法律によって定められているにも関わらず、前職の勤務先からなかなか送付してもらえないというトラブルが起こることがあります。どうしても前職の勤務先より送付してもらえない場合は「労働基準監督署や税務署に相談をしたい」と伝えるように中途採用者に促してもいいでしょう。もし、それでも送付されないようであれば、所轄(中途採用者の住民票がある市町村)の税務署に相談してもらい、「源泉徴収票不交付の届出書」を提出してもらうようにしてください。
前職の勤務先が中途採用者に「給与所得の源泉徴収票」を交付したのにも関わらず、中途採用者自身が紛失してしまうというケースもあります。このような場合は、中途採用者に対して「前職の勤務先に再発行をしてもらうよう連絡してほしい」という旨を伝えるといいでしょう。ただ、中途採用者が何らかの事情で再発行を依頼することができない場合は、「年調未済」により源泉徴収票を作成して、中途採用者自身で確定申告をしてもらうようにしてください。
中途採用者の年末調整の場合、同じ年に転職をしているようであれば、前職の勤務先の「給与所得の源泉徴収票」が必要になります。中途採用者がすぐに提出をしてくれる場合はいいのですが、そうでない場合は特別な対応が必要です。まずは前職の勤務先に再発行をしてもらうように伝え、どうしても難しい場合は「年調未済」により源泉徴収票を発行して、中途採用者に確定申告してもらうように促しましょう。
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